16年興収ランキングはアニメ映画がズラリ! 116億円『SW』には「物足りない」の声も

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『君の名は。』
(C)2016「君の名は。」製作委員会
『君の名は。』
(C)2016「君の名は。」製作委員会

2016年の年間興行成績をまとめたところ、興行ランキング1位は興収205億円(12月11日時点)の『君の名は。』。タイトルから連想される王道の「すれ違いラブストーリー」と、ロックバンド・RADWINPSが手がけた音楽と映像の見事なシンクロが化学反応を起こした。

【興行トレンド】『君の名は。』大ヒットの理由を徹底分析!

監督の新海誠はポストジブリと目される注目の若手クリエイターだったが、知名度は低い。そこで配給元の東宝は4月の『名探偵コナン 純黒の悪夢』でまず予告編を流し、大ヒット作『シン・ゴジラ』でも予告編を上映したことで関心度が高まった。公開前の8月にはサントリー天然水のタイアップCMやローソンとキャンペーンを実施。また4万人規模の試写会を行い、観客がSNSで感動を拡散したことでメガヒットにつながった。

2位は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(116億円)。実写映画の100億円突破は10年公開『アリス・イン・ワンダーランド』以来、6年ぶり。数字自体はメガヒットだが、「やや物足りない」と感じる映画関係者もいる。というのも、公開前はNHKや民放各局をはじめ、数多くのメディアが盛んに取り上げたので、映画関係者の期待も高かった。ディズニーでは公開直後に「興行収入200億円超えに期待が膨らむ」とリリースを出しているので、このあたりが目標値だったのかもしれない。

3位は『シン・ゴジラ』。宣伝では「観客にもゴジラを初めて見る驚きを感じてほしい」という庵野秀明総監督の強いこだわりから、情報を隠す戦略を取った。公開後のネットでの口コミの広がりに賭けたわけだが、ずばり的中した。宣伝では改めてゴジラの認知度を上げることに注力。「ゴジラ対エヴァンゲリオン」ビジュアルを使用したクリアファイルを特典とする劇場前売券を発売したり、公式LINEスタンプを作成した。さらにセブンイレブンやパルコ、スターフライヤーなど大手企業のほか、地方企業とも数多くタイアップを実施した。 

4位は『ズートピア』。ディズニーアニメーションはファミリー客が中心だが、今作は若者まで客層が広がり、大ヒットとなった。「夢を信じてあきらめなければ、きっと叶う」というテーマが若者の共感を呼んだ。スタジオジブリの鈴木敏夫氏が「動物たちが主人公なので子ども向けかと思ったら、大間違い」と語ったのを筆頭に、著名人らによる「予想外に深い人間ドラマ」というコメントを活用した宣伝も奏功した。

トップ10中、アニメ映画が7本。ディズニー&ピクサーは相変わらず強く、『ペット』の大ヒットでユニバーサル&イルミネーション・ブランドも定着したといえそう。『名探偵コナン 純黒の悪夢』は興収63億円。前作『業火の向日葵』(44.8億円)を大幅に上回りシリーズ最高を更新。また『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』は、06年に声優陣が変わった新シリーズで最高の記録。「アニメ映画強し」の象徴的存在だ。

アニメシリーズの中で唯一元気がないのが『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z』。「ポケモンGO」の押し上げ効果はなく、前作を下回りシリーズ最低記録を更新した。またスタジオジブリが初めて海外の監督をプロデュースすることが話題の『レッドタートル』は興行的に全く振るわなかった。セリフがなくアート系映画のような作家性の強い作風は、ジブリの特徴である娯楽性に乏しく、観客は関心を示さなかった。(文:相良智弘/フリーライター)

[2106年 公開作ランキング]
1位『君の名は。』205億円
2位『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』116億円
3位『シン・ゴジラ』81億円
4位『ズートピア』76億円
5位『ファインディング・ドリー』68億円
6位『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』63億円
7位『妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン』55億円
8位『ONE PIECE FILM GOLD』51億円
9位『信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)』46億円
10位『ペット』42億円
11位『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』41億円
12位『オデッセイ』35億円
13位『暗殺教室〜卒業編〜』34億円
14位『orange-オレンジ-』33億円
15位『007スペクター』29億円
16位『アリス・イン・ワンダーランド/時空の旅』27億円
17位『インデペンデンス・デイ/リサージェンス』26億円
18位『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』26億円
19位『聲の形』23億円
19位『デスノート Light up the NEW world』23億円

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。