写真機発明の時代に実際にあった“遺体の撮影”…喪失と再生描く『初仕事』監督が発想の原点語る

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(C)2020「初仕事」

若きカメラマンと依頼主の父親。奇妙な交流でつづられる、喪失と再生の物語を描く『初仕事』が公開。初日舞台挨拶に小山駿助監督、出演者の澤田栄一、橋口勇輝、武田知久、白石花子が登壇した。

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「現在の日本で実際に行ったらどうなるのかと興味を持ったことが出発に」

写真館のアシスタントである山下は、赤ん坊の遺体の撮影を人伝に依頼され、良い経験になるかもしれないと依頼を受ける。赤ん坊の父親であり依頼主でもある安斎は、はじめは若い山下に戸惑うも、正直で実直な山下に心を許し、撮影が始まった。

遺体の状態を考えると時間がないという状況も、山下の使命感に拍車をかけ、美化すべきでないという倫理観は、目の前の状況に吹き飛ばされる。一方、安斎も次第に自身を突き動かしていたのが未練だったのではと気づき、山下を止めようとするが…。

本作は、2020年、無名の新人監督の作品が第33回東京国際映画祭でプレミア上映され、同年の第21回「TAMA NEW WAVE コンペティション」にてグランプリと男優賞に輝いた作品。

写真機が発明された時代、遺体を写すという行為が世界各地で発生した——。本作の企画は、監督・主演を務めた小山駿助が上記の歴史的事実に触れたことからスタート。現代の日本で、現実的に私たちの世代がそのような切実な必要性を持つとしたら、それは、どのような人物か。また、そのような絶望に打ちひしがれている人間に相対した場合、私たちにはどのようなことが可能なのか。この特異な題材に正面から取り組まれた物語は、各映画祭での上映時、幅広い年代に支持された。

出演は、日本映画として46年ぶりのカンヌ国際映画祭短編部門出品作となった『ふたつのウーテル』(11年)主演の澤田栄一。短編映画『viewers:1』(21年)にて話題となったブルドッキングヘッドロックの橋口勇輝、文学座の武田知久、劇団晴天の白石花子と、若手の精鋭が脇を固める。

舞台挨拶では、小山監督が8年がかりの製作を振り返り、「製作から公開まで、忙しく走りました。一緒に走ってくれたみなさんに感謝したいです」としみじみと嬉しそうな表情で感謝を述べ、「現在の日本で実際に行ったらどうなるのかなという興味を持ったことが出発になりました」と本作について語った。

さらに最後には、「大切な方を亡くした方が1日も早く平常時に戻れる力になれる映画になっていれば良いなと思います」と観客へメッセージを送った。

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