『君が世界のはじまり』中田青渚インタビュー

初々しさ弾ける! 熱くほろ苦い青春映画に出演の注目若手

#中田青渚#君が世界のはじまり

中田青渚
年を重ねて、作品を重ねるにつれて、緊張するようになってきました
『君が世界のはじまり』 2020年7月31日より全国公開中 (C)2020『君が世界のはじまり』製作委員会

2016年に短編小説「えん」で第40回すばる文学賞佳作を受賞。さらに映画『おいしい家族』で映画監督としても活躍するふくだももこ。彼女の原点である2本の短編小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を再構築した映画『君が世界のはじまり』が公開される。出演は松本穂香、中田青渚、片山友希、金子大地、甲斐翔真、小室ぺいらネクストブレーク必至の若手俳優たち。高校生による父親殺人事件が起きた大阪の街を舞台に、孤独に押しつぶされそうな高校生たちの思いが交錯する青春映画となる。今回は、松本穂香演じる主人公・縁の親友・琴子を演じた中田青渚に話を聞いた。

──中田さんが演じる琴子は、自由奔放でまっすぐな性格の女の子ですが、この役を演じると決まった時はいかがでしたか?

中田:琴子は自分でも本当に好きなキャラクター。もしわたしがこの映画の世界にいたら、わたしも憧れちゃうと思います。だから琴子の役をいただいた時はすごくうれしかったですけど、自分が憧れるようなキャラクターを自分で演じるということで、緊張も大きかったです。

──どこか激しいイメージがある琴子と違い、実際にお会いした中田さんはおっとりとした感じがあって。雰囲気が違いますね。

中田:性格は明るいほうだとは思うんですが、琴子のように激しくはないです(笑)。感情の起伏が激しいタイプではなくて、どちらかというと縁に近いタイプかなと自分では思います。

──そういう意味で女優さんはすごいですね。自分とは違う振り幅の役柄になりきるというのは楽しいんじゃないでしょうか?

中田:そうですね。すごく楽しいです。

──ふくだももこ監督は、20代と若い監督ですが、現場はどのような雰囲気だったのでしょうか?

中田:ふくだ監督は本当にこの作品が大好きで。キャラクターみんなに対する愛がすごくて本当に愛情深い監督だなと思っていました。なんとなく監督って、離れたところから冷静に見ているというイメージがあったんですけど、ふくだ監督のキャラクターは人を引きつけるというか。本当に分け隔てなく、平等に接してくださる方で。本当に一緒に作っているという感じでした。しかも年齢が近いということもあって、わたしたちが思っていることも言いやすくて。とても雰囲気の良い現場だったなと思います。

──役作りにおいて、縁役の松本穂香さんと監督と3人で話し合ったそうですね。

中田:本読みをしてから撮影に入るまでちょっと期間があったので、松本さんと監督と3人で、縁と琴子の関係性について話しました。縁はなぜ琴子にとって特別な存在で、琴子にとってなぜ縁は特別なんだろう、みたいな話を。縁と琴子はどちらかというと正反対の性格なんですけど、親友としての関係性が築けているのは何でなのかなと。それはきっと琴子が、周りから憧れられる存在で、なんとなくちゃんとした普通の人と見られることがない中で、縁はちゃんと琴子をひとりの人として見てくれるからだろうなと。それで関係性がきれいに成り立っているんだなと思いました。

──ふくだ監督からのアドバイスで印象に残っていることはありますか?

中田:琴子を演じる上で、喜怒哀楽をパッパパッパと変えてほしいとずっと言われていて。それは難しかったですね。さっきまで笑っていたのに、今は怒っていたりとか。感情の切り替えが激しいというか。そういうのは監督に言われて、琴子ってそういう子なんだと思ったのが印象に残っています。

──役作りで準備をしたことはありました?

中田:(岩井俊二監督の映画)『花とアリス』を見なおしました。あの作品も、ふたりの高校生の空気感があって。その関係性が大切な映画だなと思ったので、一回観たことはあるんですけど、もう一度見ておきたいなと思いました。この映画を観て、縁と琴子の、お互いが大切なんだという思いをちゃんと心の隅に置かないとなと思いました。

──女の子の撮り方も、女性の監督ならではの描き方だったように思います。

中田:女性の監督ということで、なんとなく共感できる部分はいろいろあったと思います。変にキラキラしすぎていないというか。うまくいかない、こじれた感じなんかもきれいに映画になっているなと思いました。

──出来上がった映画を見て、どう思いました?
『君が世界のはじまり』

中田:わたしは(小室ぺい演じる同級生の)業平くんに片思いをしている役だったので、業平くんと縁がふたりでいるシーンを見て、いい雰囲気だなと思う反面、ちょっと悲しくもなりました(笑)。

──映画の舞台は、大阪の端っこのとある街ということで、高校生たちの閉塞感に満ちた映画だったなと思います。

中田:そうですね。わたしも、もともと兵庫県の山の方の出身なので、なんとなく閉塞感というか、生きづらさを感じていましたし、なんとなく都会がいいなとか、何かをしたいなとか、そういう欲望がありました。そういう思いって高校生ならではだなと思います。大人になったら自分でどこへでも行けてしまうから。そういうものがこの映画には詰まっているなと思いました。

──共感することも多かったのでは?

中田:わたしはちゃんと青春らしい青春を送ってこなかったので、共感というよりかはうらやましいなと思いました。自分の意志をぶつけあったり、誰かにずっと思いをはせていたり、一生懸命になったりと。そういうのがすごくうらやましかったです。

──中田さんは2014年の「第5回Sho-comiプリンセスオーディション2014」でグランプリを獲得したことが、この道に入ったきっかけとなりましたが、その時から女優さんになりたいと思っていたんですか?

中田:事務所に入った時は全然、女優さんになりたいとは思っていなかったんですが、レッスンを受けていくうちに楽しいなと思うようになって。そこから女優さんになりたいなと思うようになりました。

──最近はキャリアをどんどん積み重ねていって。どんどん役柄も大きくなっていますね。

中田:時がたつにつれて緊張するようになってきたなと思います。最初の頃は何も知らなかったので、いい意味で何も考えていなかったというか。自分自身だけでいけたのも、年を重ねて、作品を重ねるにつれて、考えることもすごく増えてきて、緊張するようになってきました。

──この作品も緊張しましたか?

中田:この作品が一番緊張しました。琴子って一歩間違えると、嫌なキャラクターになりかねない。だからそうならないように演じなきゃと思ったら、本当に緊張しました。

──5月に上映予定だった映画『街の上で』の公開が来年に延期されるなど、コロナ禍の影響は大きかったと思います。自粛期間を経て、女優としての思いに変化はありましたか?

中田:コロナ禍の中で、撮影していた仕事が1回止まってしまって。家にいることが多くなって、いろんなことを考えたんですが、やっぱりこの仕事が好きだなと改めて感じました。今は何が起きるかわからないなというか、こういう状況になって一つの役や、一つの作品に対してもっと、今まで以上に大切に真剣に向き合っていきたいなと思うようになりました。

(text:壬生智裕/photo:今井裕治)

中田青渚
中田青渚

中田青渚
なかた・せいな
2000年生まれ、兵庫県出身。2014年に「第5回Sho-comiプリンセスオーディション2014」グランプリを受賞し、デビューを掴む。ドラマ「中学聖日記」(18年)のほか、映画『写真甲子園0.5秒の夏』(17年)、『見えない目撃者』(19)、『もみの家』(20年)などに出演。公開待機作に今泉力哉監督作『街の上で』(2021年公開予定)がある。