『モダンライフ・イズ・ラビッシュ 〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜』ジョシュ・ホワイト インタビュー

歌手・モデルとしても活躍する若手有望株を直撃

#ジョシュ・ホワイトハウス

その人と一緒にいることができれば幸せと思える関係が理想

音楽をきっかけに出会った男女の恋の始まりから別れまでを描いた『モダンライフ・イズ・ラビッシュ 〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜』が、11月9日より公開される。

主演は英国人俳優のジョシュ・ホワイト。インディーズバンドでリードボーカルを務めるほか、Mr.Burberryのモデルに起用されるなど、今後が期待される有望株だ。プロモーションのために来日したホワイトに、映画の見どころなどを聞いた。

──初来日だそうですが、日本の印象は?

ホワイト:着いてまだ2日で、取材ばかりでなかなか外に出られないんだけど、六本木を散歩しました。今夜は渋谷をちょっと見れたらいいなと思ってます。

──本作に出演した経緯は?

『モダンライフ・イズ・ラビッシュ 〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜』
(C)Modern Life Pictures Limited 2016

ホワイト:エージェントから「この脚本を読んでみて」と電話があり、読んだら気に入ったのでオーディションに行きました。最終的にオーディションは2回あったんだけど、結果的に「決まったよ」とエージェントから連絡があったんだ。

──脚本のどんな部分が気に入ったんですか?

ホワイト:(恋人たちが別れる場面から始まり、過去に遡っていくという)時系列順ではない時間が前後する構成が面白いし、ユーモアもあり、お涙頂戴過ぎず、でもロマンティックなところが気に入りました。ミュージシャン役で映画の中で歌えるという部分にも惹かれました。

──主人公リアムの、デジタル化に傾く音楽業界に批判的な姿勢、アナログな生き方にも共感したそうですね。

『モダンライフ・イズ・ラビッシュ 〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜』
(C)Modern Life Pictures Limited 2016

ホワイト:リアムのフラストレーションはすごくわかります。デジタル化が進んでCDが作られなくなっていくことは僕も悲しいし、自分の手で直接触れることができるものがほしいと思うんです。僕もライヴをやるとCDをそこで売るし、CDのジャケットも自分で作りたいと思います。まあ、CDは傷がついて聴けなくなったりして面倒くさいというナタリー(リアムの恋人)の気持ちもわかりますけど(笑)。僕自身、カセットテープを集めたり、カセットに録音もするし、16歳のときに初めて作ったデモテープもまだ残ってるんだ。だからリアムの気持ちはよくわかるんです。

──1990年生まれですから、物心がついた頃にはある程度、デジタル化が始まっていたのでは?

ホワイト:1990年生まれだけど、確かに周りの子どもたちとはちょっと違ったかもしれませんね(笑)。でも、小さいときはまだカセットテープが主流だったし、そこからの移行期を間近で経験しています。ボタンを押したら録音ができるカセットって簡単だし、昔はカセットプレイヤーを2つ用意して、自分でギターを弾いて録音し、片方のテープからからもう片方のテープに録音するのを繰り返して、トラックを重ねてひとりでバンドのような曲作りをするというのをやってました。13歳くらいの頃かな?

──役作りでは、曲やセリフをオーディオブックにして、それを聴くことで役になり切っていったそうですが、現場に入って監督やナタリー役のフレイア・メーバーとはどんなやりとりがあり、関係性を作っていったんでしょうか?

ホワイト:撮影に入る前、「2人で遊びに行ってきなよ」って、監督とプロデューサーにお金とライブチケットを渡されました。それで彼女と2人でボウリングに行ったり、ライブに行って、自然と絆が深まりました。すぐにウマが合って、仲良くなったので、その関係をスクリーンに投影させるのはそんなに難しいことじゃなかった。彼女は女優としても素晴らしいですし、やりやすかったですね。

──恋人たちの10年という時間の流れを見せるという点で、難しかったところは?

ホワイト:10年の時間を行ったり来たりしながら演じるというのは、とても難しい挑戦でした。ただ、監督が演技の前にいまはストーリーのどこにいて、どんな気持ちかというのを説明してくれていたし、もちろん脚本にもそれはきちんと書かれていたので、なんとかやることができました。

──リアムとナタリーは音楽の趣味がきっかけで付き合い始めて、音楽に対する価値観がその関係に強い影響を与えることになりますが、あなた自身、恋人と交際する上で重視する価値観、ここが一緒でないとうまくいかないと感じる部分は?

ホワイト:好きな女の子ができた時、音楽の趣味が合うかというのは僕にとってはそこまで重要な項目じゃないかな。そこにこだわり過ぎるのも変だと思うし、リアムとナタリーはそこだけでなく他の部分も合っていたからこそ、互いに愛し合い、パートナーとしていい付き合いができてきたんだと思います。僕が好きになった子が、もし僕が嫌いなタイプの音楽を好きだったとしても全然かまわないです。ただ、たまに「ちょっと音楽消してくれ」って言うかもしれないけど(笑)。

──あなたが考える、理想的な恋人との関係性は?

ホワイト:たとえ長い間離れていたとしても、その人と一緒にいたいと思える関係、その人と一緒にいることができれば幸せと思える関係が理想です。

──音楽活動、モデル、俳優と三足のわらじで活動されていますが、それぞれの活動は互いに影響し合っていますか?

ジョシュ・ホワイトハウス

ホワイト:最初にミュージシャンとして活動を始めて、そこで表現すること、人々を楽しませること、そしてもちろん、メッセージを伝えるということを覚えました。それはアートの基本だと思う。音楽が俳優業に影響を与えている部分はもちろんあって、たとえば長いセリフを覚えるとき、そのまま覚えるのは大変だけど、そのセリフを言うときのムードに合わせた曲を作って、音楽にセリフを乗せて覚えたりしています。逆に俳優業が音楽活動に影響を与えている部分もあって、長いモノローグのセリフを曲にして覚えている内に、そのモノローグのような曲を作りたいって思うようになり、一般的なリフがあって、ブリッジがあって…というような組み立てではない形で曲を作ったりもしたよ。モデル業に関しては、俳優業に影響を受ける部分が大きくて、最初のうちはモデルとしてポーズをして……という感じでやっていたけど、俳優を始めて、モデルというのはカメラの前で役になり切ることなんだと理解することができました。

──映画の中のバンド「ヘッドクリーナー」がSNSなどを通じてバズっていくさまが描かれますが、あなた自身、本作への主演やスティーヴ・マックイーン監督の短編作への出演、ミスター・バーバリーのモデルを務めたことで、知名度を上げています。こうした現象をご自身はどう受け止めていますか? 「バズった」という実感はありますか?

ホワイト:うーん、そうですね……(笑)、たしかにここ最近で“フォロワー”が増えたのは事実です。ただ正直、僕は有名になりたいわけでもなくて、道で急に呼び止められたり、友人といるバーで人が集まってきたりするのは好きじゃない。でも、アーティストとしては、売れなきゃ貧しいままだし、どんなに曲を書いても誰も聴いてくれなければ意味がないこともわかってます。そのバランスが難しいというのを感じています。自分が出演する映画や作った曲をみんなに知ってほしいし、みんなから求められたい気持ちはあるし、そうやって自分が生活していければとは思っているけど、とはいえ“スーパースター”になりたくはないんです。ただ、自分は既にそういう流れに乗ってしまったので、これから先どうなるのかはわからないし、自分でもどうなるものか見てみようという気持ちで、(「不思議の国のアリス」のように)ウサギの穴に落ちてどうなるのかわからないような感じかな(笑)。

ジョシュ・ホワイトハウス
ジョシュ・ホワイトハウス
Josh Whitehouse

1990年2月27日生まれ、イギリス出身。映画『エッジ・オブ・スピード』(16年)に出演するなど俳優として活動する一方、インディーズバンド“MORE LIKE TREES”でリードボーカルを務める。また、バーバリーの新作フレグランス「ミスター・バーバリー」のキャンペーンモデルにも起用された。現在は80年代のカルトミュージカル映画のリメイク『ヴァレー・ガール』を撮影中。