内山拓也監督『しびれ』、台湾で満席の大反響 日本映画の存在感を世界へ示す

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『しびれ』
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内山監督特集開催、観客がパンフ持参でサイン求める

内山拓也監督の最新作『しびれ』が、第28回台北映画祭(台北電影節)の「内山拓也監督特集」で上映された。上映後のQ&Aでは、内山監督が登壇し、自身の体験を投影した本作の創作背景やキャスティング秘話、故郷・新潟への思い、さらには台湾映画から受けた影響や今後の展望まで、たっぷりと語った。

・北村匠海「愛は世界共通だと思う」 ベルリンで語った“愛の映画”『しびれ』への誇りと覚悟

本作は、『佐々木、イン、マイマイン』(20年)『若き見知らぬ者たち』(24年)などで、現実に抗いながらも何かをつかもうとする若者たちの青春を描いてきた内山拓也監督が、故郷・新潟を舞台に、自身の体験を投影して描く自伝的作品。居場所とアイデンティティを模索する孤独な少年が、息をのむような大きな愛に出会うまでの20年間を描く渾身の一作だ。

6月28日、誠品電影院(Eslite Art House)にて本作が上映された。内山監督作品が台湾のスクリーンで上映されるのは今回が初めてとあって、会場は満席の盛況ぶり。上映後にはQ&Aも行われ、監督自ら本作の創作過程について語った。

『しびれ』

本作は、冬の新潟を舞台に、幼少期の記憶から言葉を発することができなくなった少年・大地が歩む20年の軌跡を描く作品。内山監督はもともとファッションを学んでいたが、人生の行き詰まりを経験し、その時の感情を記録するために脚本を書き始めたことが映画制作のきっかけになったという。

半自伝的な要素を持つことについては、「デビュー作ではないものの、『しびれ』は自分の最も率直な感情から生まれた作品と言えます。そのため故郷である新潟での撮影を選びました」と説明。一方で、自身の人生をそのまま映画化したわけではないことも強調し、「それぞれの場面に自分の感情や実際に目にした風景を織り込み、新潟という土地を一度解体し、再構築していきました。本作にとっては、大地だけではなく、新潟という土地ももうひとりの主人公。雄大な風景が大地を飲み込むように存在し、時間とともに絶えず表情を変えていくさまを映したいと思いました」と、作品づくりを通して新潟に対して芽生えた思いを振り返った。

大地の20年にわたる人生を描くため、本作では北村匠海、榎本司、加藤庵次、穐本陽月の4人が年代ごとに大地を演じている。キャスティングについて監督は、「外見が似ていることは重視せず、むしろ眼差しや内面からにじみ出る感情を基準に選びました」と述懐。その結果、スクリーンでは4人の俳優に不思議な共通性が生まれたという。

青年期の大地を演じた北村については、俳優業だけでなくアーティスト活動など幅広い経験を積んできたことが、同世代の俳優とは異なる深い眼差しにつながっており、自身が思い描く主人公像に最も近かったとコメント。

一方、大地の母・亜樹を演じた宮沢りえについては、「亜樹という役を宮沢りえさんに託したいと思っていたところ、宮沢さんが『佐々木、イン、マイマイン』を好きでいてくれて、監督の作品だったらなんでも出演したいと思っていてくれたことがきっかけで、本作への出演が実現しました」と明かした。

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圧倒的な存在感を放ち、ときには間違った選択を繰り返しながらも懸命に生きる亜樹という人物については、「亜樹はとても無邪気で、魅力的なところがある」と表現した上で、「日本を代表する名女優である宮沢さん自身にも、亜樹と同じような純粋さがあるんです」と語った。

今回、初めて台湾を訪れた内山監督は、映画を独学で学ぶ過程で、エドワード・ヤン監督をはじめとする台湾映画を通して台湾という場所を知ったことが、台湾への関心の始まりだったと吐露。この日は、同監督の『牯嶺街少年殺人事件』(91年)のロケ地の一つである台北植物園も訪れたという。

さらに、「いつか台湾で映画を撮れる機会があれば嬉しい。今回の旅は観光であると同時に、ロケハンでもあります」と語り、今後の作品づくりへの意欲ものぞかせた。

最後に、「まだ監督した作品も多くないのに、本当に今、自分の回顧特集をやっていいのだろうか、という気持ちで台湾に来ました」と照れ笑いを浮かべながらコメント。映画祭期間中は『ヴァニタス』(16年)『佐々木、イン、マイマイン』『若き見知らぬ者たち』も上映され、いずれも上映・Q&Aともに大盛況のうちに終了した。

Q&A終了後には監督のサインを求める長蛇の列ができ、日本公開時に購入した過去作品の劇場パンフレットを持参する観客の姿も見られるなど、監督への注目度の高さをうかがわせる特集上映となった。

『しびれ』は2026年9月25日公開。