少女を棄てた少女、社会からこぼれ落ちた子の過酷を描いた衝撃作

#わたしの知らない子どもたち#二階堂ふみ#小八重葵美#竹野内豊#西川美和

(C)2026 K2 Pictures

二階堂ふみ×新人・小八重葵美が共演、“戦後の子どもたち”に迫る

新人・小八重葵美(こやえ・あみ)と、世界をまたにかけて活躍する二階堂ふみをW主演に迎え、西川美和が原案・脚本・監督を務めるオリジナル映画『わたしの知らない子どもたち』が、2026年10月16日に全国公開されることが決定。あわせて、ティザービジュアルと特報映像も解禁された。

・現実は厳しいからこそ染みる人の温かさ、西川美和監督が描くすばらしき世界

西川美和監督が前作『すばらしき世界』(21年)の制作過程で出会ったのは、戦後日本に実在した“知られざる子どもたち”の存在だった。

同作の原案「身分帳」に登場する主人公は、母に捨てられ、戦後の混乱期を孤児として生き抜きながら、進駐軍相手の靴磨きや新聞売りで糊口をしのぎ、やがて裏社会へと取り込まれていく男。広島県広島市出身の西川監督にとって、「戦争」や「平和」は幼少期から身近なテーマだった一方、キャリア初期には、その重さから距離を置きたい思いもあったという。

しかし、『すばらしき世界』で向き合った、戦後を生きた子どもたちの過酷な現実は、監督の心を大きく揺さぶった。「子どもたちを取り巻いた戦後の裏社会の物語を、いつかもう一度作り直したい」——その抗いがたい衝動から、本作の企画は始動した。

これまで西川監督は、カンヌ国際映画祭「監督週間」に正式出品された『ゆれる』(06年)、モントリオール世界映画祭「ワールド・コンペティション部門」出品作『ディア・ドクター』(09年)、さらにトロント国際映画祭でワールドプレミアを迎え、シカゴ国際映画祭で「観客賞」と「ベストパフォーマンス賞(役所広司)」の2冠、シアトル国際映画祭で「女性監督作品観客賞」を受賞した『すばらしき世界』など、輝かしいキャリアを築いてきた。

その作品群では、一貫して人間の業や複雑な心理を鋭く描き続け、多面的な魅力を持つ“男性主人公”を映し出してきた。しかし本作では、小八重葵美と二階堂ふみを主演に迎え、“女性主人公”の視点から新たな物語を紡ぎ出す。世界が注目する映像作家が挑む新境地は、西川美和という才能のさらなる進化を予感させる。

また、本作のタイトルにある“わたし”とは、原案者である西川監督自身であり、同時に二階堂演じる教師・曽根の視点でもあり、そしてこの物語に触れる私たち一人ひとりを指している。

当時、街には進駐軍相手の慰安施設や路上売春が広がり、低年齢の少女たちまでもが性的搾取の危機に晒されていた。その現実から逃れるため、自らの性別を隠し、“少年として生きる”ことを選んだ少女がいた。

本作は、“生まれながらのアウトロー”ではなく、どこにでもいたはずの一人の少女が、戦争によって変わっていく物語。主人公・琴子は、音楽家の父のもとで、普通の暮らしをしていた少女。しかし戦争と敗戦によってすべてを失い、「生きるために、自分自身を手放す」という選択を迫られる。

そして、曽根は、かつて教師として軍国主義教育に加担していた側だったが、敗戦とともに、信じていたものも立場もすべてを失っていく。生徒を棄て、自らの生き方さえも手放しながら、それでもなお、今日という1日を生き延びていく。過去に背負ったものと、抗うことのできない現実のあいだで揺れながら、加害でも被害でも割り切れない、その両方を抱えたまま、生きるしかない過酷な運命を辿っていく。

琴子は、少女を隠し“少年”としてどこへ向かうのか。曽根は、再び人として立ち上がれるのか。

『わたしの知らない子どもたち』

(C)2026 K2 Pictures

主人公・琴子役に抜擢されたのは、約500人が参加したオーディションを勝ち抜いた、当時11歳・小学5年生の小八重葵美。本作が本格的な映画初主演となる。

一方、女性教師・曽根役を務めるのは、二階堂ふみ。第78回カンヌ国際映画祭で、『遠い山なみの光』(25年/石川慶監督)が「ある視点」部門に正式出品され、国際的な注目を集めたほか、近年は世界的ヒット作『SHOGUN 将軍』にも出演。エミー賞をはじめ数々の賞レースで高い評価を受け、世界配信作品の中核キャストとして存在感を放つなど、国内外で高い評価を築いてきた。

さらに、数々の主演作で日本映画界を牽引してきた竹野内豊、音楽・映像の両分野で活躍し若い世代から支持を集める櫻井海音、国内映画祭でも高く評価される実力派若手・花瀬琴音らが脇を固める。

また、本作では子どもたちの描写に徹底したリアリティを追求。戦争の記憶に触れる機会が少ないキャストたちに向けて、歴史や当時の暮らしに関する勉強会を計3回実施した。単なる演技指導にとどまらず、その時代の価値観や感情への理解を深めた上で撮影に臨んでいる。

本作には、国内外で数々の受賞歴を誇るトップクリエイターたちが集結している。その顔ぶれが、本作のクオリティを裏付けている。

音楽を手がけるのは、原摩利彦。『国宝』(25年)で数々の音楽賞を受賞し、坂本龍一からも音響設計や空間構築を高く評価された実力派作曲家だ。クラシック、現代音楽、環境音を横断するその表現は、単なる劇伴の域を超え、“もうひとりの語り手”として物語を支える音楽として国内外から注目を集めている。

本作では音楽収録をイタリア・ローマで実施。原は「イタリアの指揮者や奏者が真剣に映画や音楽に向き合ってくださる驚きと演奏を通しての気づきがあった」と手応えを口にした。同席した西川美和監督も、「音楽的な歴史の厚みを感じる演奏」と絶賛。日本とイタリア、国境を越えた共同作業が生み出した化学反応にも注目だ。

さらに原は、本作で映画初出演も果たしており、音楽家役として重要なシーンにカメオ出演している。

映像面でも、世界が認めたトップチームが参加。1945年の街並みを再現するVFXを担当したのは、『ゴジラ-1.0』(23年)で第96回アカデミー賞・視覚効果賞を受賞した白組チーム。ハリウッド大作を抑えての快挙で、日本のVFX技術を世界に示した彼らが、本作では戦後直後の日本をリアルに再構築する。

瓦礫が積み上がる街並み、焼け跡に漂う空気、人々がひしめく雑踏——。単なる背景描写ではなく、“時代そのもの”が登場人物のように立ち上がる映像表現が実現されている。

さらに、本作には長年にわたり西川美和監督作品を支えてきたスタッフ陣も再集結。撮影を担当するのは、『許されざる者』(13年)で日本アカデミー賞・最優秀撮影賞を受賞し、『すばらしき世界』でも毎日映画コンクールをはじめ各映画賞で高く評価された笠松則通。美術は三ツ松けいこが務め、徹底した時代考証に基づく空間設計と、生活の痕跡に至るまで丁寧に作り込まれた美術を手がける。

また、衣裳デザインには『キル・ビル』(03年)にも参加し、国内外で豊富なキャリアを持つ小川久美子、ヘアメイクデザインには、カンヌ国際映画祭でも高い評価を受けた『万引き家族』(18年)『ある男』(22年)『蜜蜂と遠雷』(19年)などで人物造形を手がけてきた酒井夢月が参加。録音は、『国宝』で日本アカデミー賞・最優秀録音賞を受賞し、繊細な音響設計で知られる白取貢が担当する。

国内外で評価を重ねてきた精鋭スタッフたちが、長年の信頼関係のもと再び集結。日本映画界の第一線で活躍するクリエイターたちが、これまで語られてこなかった“戦後”の物語に挑む。

ティザービジュアルの撮影を担当したのは、アジアを中心に注目を集める写真家レスリー・チャン。ウォン・カーウァイ作品に影響を受けた色彩感覚と、人物の内面を切り取る繊細な視線で知られる彼が、本作で初めて映画ポスター撮影を手がけ、“語られない感情”を一枚の写真に封じ込めた。

そこに映し出されるのは、「少女」を捨て、「少年」として生きる決意をした琴子の強い眼差しと、生徒を見捨て、何かを失ってしまった曽根の空虚な姿。2人の感情が静かに、そして繊細に切り取られている。

コピーには、「12歳。私は『少女』を棄てました」「私は生徒を棄てました」という、それぞれが背負う現実を示す言葉が添えられ、2人が辿る過酷な選択と、その重みを浮かび上がらせる。デザインを担当したのは吉良進太郎で、作品の核心を鋭くすくい取ったビジュアルに仕上がっている。

特報映像では、戦後の混乱の中で「少女」を捨て、「少年」として生きることを選んだ琴子と、かつて見捨てた生徒を探し続ける女性教師・曽根の姿が交錯する。VFXによってリアルに再現された1945年の焼け跡の街、行き交う人々、そして言葉にならないまま積み重なっていく時間——。

「12歳の彼女は、『少女』を棄てた」。その一文が突きつけるのは、「もし自分がその時代を生きていたら、何を選んだのか」という問いだ。今を生きる私たちへ、静かに、しかし強く投げかける。

■小八重葵美(茅野琴子役)

この映画の主演が決まったと聞いたときは、とても驚きました。すぐには信じられなくて「夢なんじゃないか」と思いました。でも、時間がたつにつれ、「自分に主演が務まるのかな」と不安になることもありました。作品の中心として、たくさんの人に影響を与える立場だと実感したからです。だからこそ、一つ一つのお芝居にしっかり向き合い、より良い作品にしたいと思いました。この作品に関われることに感謝しながら、精一杯頑張ろうと強く思いました! 西川美和監督と一緒に映画制作に取り組む中で、楽しい気持ちや新しいことに挑戦できる嬉しさをたくさん感じました。スタッフさんや共演者さん、家族にたくさん支えてもらい、相談に乗ってもらえたおかげで心が軽くなって、お芝居や人と接することがどんどん楽しくなりました。

この作品は戦争や戦後がテーマで、関わる中で当時の人々の苦しみや悲しみについて深く考えるようになりました。資料館や原爆ドームを見学した時、平和が当たり前ではないということを実感しました。今も世界のどこかで戦争が起きていて、戦争を軽い気持ちで見てはいけないと思いました。私は、戦争を経験していないからこそ、「もし家族がこうなったらどう思うんだろう」と色々なことを深く考えて、琴子という役を大切に演じました。

この経験を通して、これからも歴史を学び続け、自分にできることを考えていきたいです。

■二階堂ふみ(曽根文美子役)

西川監督とは、脚本執筆中にお話を伺ったことが最初の出会いで、完成した脚本を読んだとき、戦後という価値観が一変した時代を“子どもの視点”から描く、その新しい語り口に強く心を動かされました。子どもたちが戦後にあったさまざまな過酷な現実を頭で理解するのではなく、そのまま受け止めながら生きていく姿が描かれていて、胸が締めつけられる思いがしました。撮影現場では西川監督と丁寧に対話を重ねながら、登場人物が抱える矛盾や葛藤、そして“被害者でもあり加害者でもある”という人間の複雑さに向き合い続けました。

琴子を演じた小八重さんは、初めて会ったときからまっすぐな眼差しが印象的で、その純粋さに何度もハッとさせられました。撮影を重ねるごとに表情や佇まいが変化していく姿から、役と真摯に向き合い、その時代を生きていることが強く伝わってきて、心を大きく揺さぶられました。

本作は、戦争を過去の出来事としてではなく、いま私たちが向き合うべき問題として感じさせてくれる作品です。子どもにも大人にも、それぞれの立場でこの物語を受け止めていただけたら嬉しいです。

■竹野内豊(琴子の父:茅野孝一役)

西川監督の演出はとても細やかで、時間をかけて丁寧に作品づくりに向き合われている印象を受けました。もっと長く撮影していたいと思うほど素晴らしい現場でしたので、わずかな撮影時間でしたが、心地よい空気に支えられながらシーンに向き合うことができました。脚本は読み進めるほどに胸が締めつけられるような思いになりました。幼い⼦どもたちが、限られた選択肢の中で必死に⽣き抜こうとする姿に、言いようのない切なさが押し寄せ、また⼤⼈たちも⾃分のことで精⼀杯の人もいれば、救いの手を差し伸べる人もいて、誰もが明日生きていられるかわからない日々の中、どの道を選ぶことが正解なのかは、どんなに考えても答えがみつかりません。

西川監督が長い時間をかけて紡いだ物語は、限りなくノンフィクションに近い映像として、多くの人々の心に深く刺さる映画になるのではないかと思います。琴⼦を演じた⼩⼋重さんは、難しい役に真摯に向き合いながらも少しずつ変化していく姿がとても印象的で、これからの成⻑を楽しみに感じております。

本作は、戦時下の側面において当時の民間人がどのような思いで懸命に生きていたのか、教科書では知ることのできない現実をリアルに伝えてくれるものだと思います。これからは今まで以上に一人一人の意識や力が未来へと影響する時代が来ると思いますので、一人でも多くの人々にご覧いただけたら幸いです。

■櫻井海音(琴子の兄:茅野律朗役)

台本を読ませていただいた際に、今この時代だからこそ意義のある作品だと強く感じました。そんな作品に参加させていただいたこと、強く幸せを感じています。争いの絶えない世の中で自分自身ができることは何なのか、きっと答えはないし、半径数メートルの世界でしか自分はまだ生きられていないです。ただこの作品を通して、少しでもそういった社会を考えたり、気にしたり、日常に溢れるニュースが人ごとではないと感じるようになりました。そんなことが見てくださった方々にも伝わればいいなと思っています。今回初めて西川美和監督とご一緒させていただきましたが、西川監督の持つ作品への愛情と熱量を常に感じていました。バイオリンの練習に来てくださり、現場でも丁寧にシーンを説明していただき、役者として非常に大きな経験になりました。是非多くの方に見ていただきたいです。

■音楽・原摩利彦

『わたしの知らない子どもたち』の音楽を書き始めて、2年以上が経ちます。これほど長くひとつの映画音楽を書き続けたことはありません。西川美和監督より映画の構想を伺ってすぐに、あるモチーフを思いつきました。まだ脚本も届いていない頃に書いたそのモチーフが、この映画のメインテーマになりました。監督の強い思いに心を動かされたのだと思います。その後、主人公・琴子の心の奥底にあるものはどういうものだろうかと考えながら、作曲を進めていきましたが、非常に難しく、険しく長い道のりでした。最終的には、琴子のあの目に導かれて、今まで書いたことのない音楽ができたと思っています。この映画で描かれている子どもたちと同じような経験をする子どもたちがこの先いないように。今そういう状況にいる世界中の子どもたちが守られ、やりたいことに挑戦できる自由が与えられますように。この映画が多くの人たちのもとへ届くことを願っています。

■原案・脚本・監督:西川美和

2020年のコロナ禍から企画し始めましたが、その頃は、これほど戦争が近い時代になるとは予想していませんでした。この映画で描かれる物語は、日本の観客にとってすでに遠すぎる世界ではないかとも思っていたのに、いつの間にかこわいほど身近な物語になってしまったのは、複雑な気分です。日本の戦後と、そこに生きた子ども。それを実写映画で描くのは、とても重たいことです。戦争の惨禍を知らない私がそんな題材をあつかうことに絶えずためらいもありました。いっぽうで、どうせやるならなるべく新しいトーンで、かならず今を生きる人に届く語り口にしよう、これから大人になる人たちにも見てもらえるものにしようと、ものを調べ、長い時間をかけて脚本を書いてきました。なんとも大掛かりなこの映画にK2ピクチャーズがお金を出すと言ったときは、私の方がびっくりしましたが、その後、すばらしい目の輝きを放つ小八重葵美ちゃんと出会え、「この映画を必ずたくさんの人に見てもらいましょう」と言ってくれた二階堂ふみさんと出会え、そして私が心から尊敬するスタッフが集まって、渾身の力をふりしぼってくれました。竹野内豊さんは静かな愛情で葵美ちゃんを応援してくれ、音楽的な才能にあふれた櫻井海音さんも長い準備を経て最良の結果を画に焼きつけてくれました。極めつけは原摩利彦さんが——あの『国宝』を経て抜け殻かと思いきや、今作でも新たな試みとともに心を鷲掴みにされるような音楽を作ってくれて、信じられないことに、あとちょっとで本当に完成しそうです。自分の作品だということを時々忘れてしまうほど、きらめきに満ちた作品になっています。みなさん、10月の公開をぜひお待ちください。

■プロデューサー:小出大樹

西川監督から、この映画を提案いただいたとき、正直、ビビりました。戦後を舞台にした今作においては、巨大生物は上陸しませんし、タイムスリップを伴う恋愛もありません。子どもたちを中心とした市井のひとびとが丁寧に描かれていますが、漫画の原作をもたないオリジナルストーリーです。どんな作品になるのか、話を聞いただけでは即座には想像しきれませんでしたし、作り切るのが本当に大変だろうと感じました。しかしながら、脚本を読ませていただくと、再び、ビビることになりました。西川監督が書かれた物語に惹き込まれたからです。そもそも、西川美和監督の作品が、僕は好きです。これまでの多くの作品で男性のキャラクターを主役に据え、ときに情けなく不器用で、同時に愛おしい姿を描いてきた西川監督が、今作では女の子をメインキャラクターにすえ、彼女が男の子だと偽り戦後の日本を生きていく、そして、彼女は少女から少しづつ女性になっていく姿が、大人たちとの出会いの中で描かれていました。西川監督の描きたい物語を映画という形にして、多くのひとに届けたいと思いました。西川組をこれまで支えてきたスタッフやキャストの方々をはじめ、主演の小八重葵美さんと、二階堂ふみさんといった素敵な俳優の方々との出会い、巨大生物の映画を制作されてきた白組さんを筆頭とするVFXチームとの出会い、原摩利彦さんやイタリアの音楽チームとの出会い、という、今作で描かれる物語さながらの、多くの方々との運命的な出会いに恵まれて、今作は制作されており、完成までもう少しです。劇場に足を運んでいただき、この作品を楽しんでいただければと思います。

『わたしの知らない子どもたち』は2026年10月16日より全国公開。