改めて「4Kって、なに?」。大画面でも鮮明・高精細な映像を楽しめるのはなぜ?

#超簡単!いまさら人に聞けない映像用語辞典

プロジェクターとスクリーンの組み合わせによる大画面鑑賞
プロジェクターとスクリーンの組み合わせによる大画面鑑賞

「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映画の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。

●今回のお題「4K(第1回)」

一昨年の暮れに、日本の家屋における薄型テレビの平均画面サイズ=インチ数(画面対角線の長さ)が、40インチである発表された。これは6畳以上の部屋(リビングのスペースを含む)にターゲットを絞った数値結果である。昨年末の統計は出ていないが、4Kテレビの普及によって平均インチ数は上がっていることは間違いない。

前回、画面の高さ(H)の2倍(2H)から2.4倍(2H)までの視聴距離で映画鑑賞すれば、より豊かな臨場感を得られると記した。では40インチ・テレビをその距離で視聴するとどうなるであろう。40インチの画面サイズは横幅88.6cm、縦幅(高さ)49.8cmであり、2.4H視聴ではおよそ1m20cm、2H視聴ではおよそ1mの距離となる。

ここで思い浮かべてもらいたい。リビングにおいて40インチ・テレビを、上記のように視聴している人がいるであろうか? いやいや、あり得ない。55インチにアップサイズしたとしても、1m66cm(2.4H)に1m36cm(2H)。これもあり得ない。そこで登場するのがプロジェクターによる鑑賞。100インチ前後のスクリーンとの組み合わせによる大画面鑑賞であり、テレビとの併用をされる方が多いのはそのためだ(写真参照)。

ちなみに100インチ鑑賞であれば、視聴位置は2.4H≒3m、2H≒2.5mとなる(画面サイズ横221.4cm、縦124.5cm)。実は6畳間で100インチ鑑賞は可能。40/50インチ・クラスのテレビはゆったりと、100インチ・スクリーンを下しての鑑賞は臨場感たっぷりでという、ハイブリットな楽しみを味わうことができるのである。

大画面、離れて観れば小画面。プロジェクター導入が不可能な方でも、テレビの導入においては可能な限り大きいサイズをチョイスするのが理想といえよう。1.5Hという超近視聴を可能にした4Kテレビが、よりサイズアップした仕様で製造されている理由のひとつはそこにある。現行のフルハイビジョン2K解像度で映像を近視聴すれば、とうぜん映像の粗さが目立つ。そこで4Kの登場となる。

では改めて──4Kって、なに? 意外と明快に即答できる人が少ない質問だ。ごくごく簡単に説明するとこういうこと。まずKとは、kmやkgの「キロ」を略したもの。すなわち4Kとは、画面横方向=水平方向の総画素数がおよそ4000になる映像を指す。

では、画素ってなに? 映像を表示するために、縦と横に並んでいる小さな点のこと。一般的に4Kと略式表記しているが、実は4K・2Kというのが正解。4Kは横≒4000画素、縦≒2000画素、つまり総画素数800万画素の解像度を持った映像である。対して2Kは2K・1K、総画素数200万画素の映像である。

2Kの4倍の画素数を持った、高精細な4K映像。逆にいえば、画素の大きさは2Kに比べて4分の1になっているということであり、画面サイズを大きくしても画素が粗くならず、大画面でも鮮明・高精細な映像となるわけだ。「テレビ導入では可能な限り大きいサイズを」と前述したが、視野角/視聴距離による臨場感の向上にとっても4K解像度は欠かせないのである。これまで連載コラムで話してきた、ハイビジョン画面サイズ内(16:9=1.78:1)に収まるスタンダードサイズ(1.37:1ほか)やシネスコサイズ(2.35:1ほか)映像のハンデも、4Kならば解消できる。

現状でネイティヴ4K映像を楽しむためには、4K試験放送に頼るしかない。今後予定される4K映像展開は次回に譲ることにするが、そんななかでちょっと気になるのが、4Kを冠にしたブルーレイの存在だ。ソニー・ピクチャーズが一昨年からプレゼンテーションする「Mastered in 4K」(マスタード・イン・4K)仕様のブルーレイ・ラインナップである。

これはマスターに4K解像度の高画質映像を使用し、オリジナルの広色域情報を保持しながら高い映像ビットレートで収録したブルーレイである。解像度は2Kフルハイビジョンとなるが、4Kテレビやプロジェクターで視聴することにより、オリジナルの4Kマスターに近い高品位な画質で楽しめる。

2Kテレビで再生する環境であっても、高い映像レートによって一般仕様のブルーレイよりも高品位な再生となるのが嬉しい。3月発売のブラッド・ピット主演『フューリー』とデンゼル・ワシントン主演『イコライザー』が最新作となり、フィルム撮影作品ならではの緊迫映像を魅せる前者、デジタルシネマカメラ撮影作品ならではの鮮鋭感で迫る後者はいずれもお薦めである。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)

次回のテーマ「4K(第2回)」は3月6日に掲載予定です。

堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。

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