今度は一転公開へ。デキの悪いおバカ映画『ザ・インタビュー』巡り国家レベルで一触即発!の笑えない異常事態

『The Interview』サイトより
『The Interview』サイトより

18日に、25日からの全米公開中止を発表して以来、コメディ映画『The Interview(原題)』が連日ニュース欄を賑わせ続けている。

●オバマ大統領は「ソニーは過ちを犯した」と断罪

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正恩第一書記の暗殺計画を題材にした同作は今年6月の予告編公開時から北朝鮮側の怒りを買っていたが、11月24日(現地時間)に配給元のソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(SPE)が大規模なサイバー攻撃を受け、リークした大量の機密情報や未公開作を含めた同社配給映画数本がネット上に公開される事態が発生。スターの個人情報やスタジオの重役同士がやり取りしたメールの内容なども次々公開され、北朝鮮の関与の可能性が浮上した。北朝鮮側は関与を否定したが、サイバー攻撃の実行犯を名乗るハッカー集団「GOP」が『The Interview』の上映を予定する劇場を脅迫、ソニーは映画の公開中止を決定した。

相次ぐ抗議で、イルカ漁を描いた問題作『ザ・コーヴ』東京メイン館が上映中止に!

安全上の理由から劇場側がキャンセルすれば、上映する場がなくなるのだから公開中止はやむを得ないともいえる。実際、物議を醸す作品の上映ボイコット騒ぎはこれまで何度も起き、それでも作品を上映した映画館で観客を巻き込んだ事件が起きた例もある。1988年、パリ市内の映画館でマーティン・スコセッシ監督の『最後の誘惑』を上映中に火炎瓶が投げ込まれ、観客が重軽傷を負った。こうした最悪の事態を避けたいと思うのは当然ではあるが、オバマ大統領は「ソニーは過ちを犯した」と断罪。北朝鮮政府の関与を断定し、「他国の独裁者がサイバー攻撃を介して企業の配給や製品を妨害し、結果として我々が自ら検閲を始める前例ができてしまうとするなら問題だ」と語り、対抗措置をとる姿勢を見せた。

オバマ大統領の支持者として知られるジョージ・クルーニーは『The Interview』劇場公開を求める署名運動を始め、ショーン・ペンもSPEの判断を非難している。

●主演のセス・ローゲンとジェームズ・フランコは雲隠れ

ただし、『The Interview』という映画自体、試写を見たジャーナリストや各国のSPE関係者からの評判は芳しくない出来だったという。確かに、社会的地位が何であれ実在する人物を名指しして暗殺を計画するという内容では、いくらコメディといっても、まるでクラスメートの葬式ごっこをするいじめのようで、センスがいいとは思えない。だが、表現の自由を守ることはまた別の問題。普通に公開されていたら、ラジー賞(最低映画のためのアカデミー賞というべき賞)総なめ確実だった作品をめぐって、一触即発の状態が現時点でも続いている。

同作主演のセス・ローゲンとジェームズ・フランコは公開中止決定後は公の場からは姿をくらまし、他作品でプロモーション活動中のスターたちも取材時にこの話題はNGと指定してくる場合も多いという。

●『オースティン・パワーズ』Dr.イーブルがめった斬り!

一方、コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」は20日(現地時間)の放送で、マイク・マイヤーズが『オースティン・パワーズ』シリーズで演じたDr.イーブルとして登場、「おバカ映画をめぐって争うなんて、ハゲの男2人が櫛を取り合ってケンカしているようなものだ」と切り捨て、「平和の守護者(GOP=Guardian of Peace)」と名乗るハッカー集団についても、「君らの誰かが『GOPはどうだ?』って言ったんだね。でも、GOPはもうある。しかもとっくの昔から悪の組織だ」とアメリカ共和党の俗称“GOP(Grand Old Party)”にかけた危ないジョークで揶揄した。

なお、一度はいかなる形でも作品は公開しないとしていたSPE側だが、21日(現地時間)には同社のオンライン配信サービス「クラックル」で作品の無料公開の予定が明らかに、さらに23日にはアメリカの一部映画館で『The Interview』を予定通り25日に公開すると発表した。SPEがオンライン配信を決定した後、テキサス州、ジョージア州などを中心に独立系映画館200館以上から上映希望が殺到したという。同日、ホワイトハウスの報道官は「大統領はソニーの決断を称賛している」とコメント。上映館の安全については、FBIがSPEと全面的な協力態勢をとっているという。

また、21日から22日かけて北朝鮮のインターネットが10時間近くダウンする事態が発生するなど、まだまだ終結する様子はなく、事態は動き続けている。

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