【元ネタ比較】前編/原作持ち味そのままに人間の暗部をクールに描く『ウシジマくん2』

『闇金ウシジマくん Part2』
(C) 2014真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん2」製作委員会
『闇金ウシジマくん Part2』
(C) 2014真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん2」製作委員会

ヒーローでもなんでもない丑嶋の“魅力”とは?

ヒット作の続編『闇金ウシジマくん Part2』が公開となる。簡単に説明をすると、原作は「スマグラー」も映画化された真鍋昌平の原作で、2004年に「ビッグコミックスピリッツ」で連載開始され、累計800万部以上突破の人気コミックだ。あまりにも社会の闇に切り込んだアブナい内容にドラマ化や映画化は不可能と言われていたが、2010年10月に深夜ながらも毎日放送の制作によりテレビドラマ化された。放送を尻込みする局が多かったのかわずか9局の放送だったが、口コミで人気を広げ、2012年にはヒロインに大島優子を迎えて映画版第1作『闇金ウシジマくん』が公開。それがスマッシュヒットを放ち、2014年1月にテレビドラマ新シリーズが放送され、続いてこの劇場版第2弾の公開となる。ドラマ版シーズン2と映画版第2弾を続けて見せることを念頭に置いて製作された。

『闇金ウシジマくん』山田孝之インタビュー

そもそも、本作は“ウシジマくん”が金を利用してさらなる悪人を退治するような痛快な作品でもなければ、Vシネ路線の任侠アクションでもない。“10日で5割”という超暴利な闇金〈カウカウファイナンス〉を経営する丑嶋(うしじま)を主人公に、他ではお金を借りられなくなった堕ちた債務者たちの人間模様を情け容赦なく描くダークな作品だ。超暴利な闇金業者の丑嶋が清廉潔白な人間に見えるほど、債務者たちは汚れて腐った人間のクズばかりで、あぶり出される社会の闇、人間の心の闇のおざましさに、見れば見るほど暗くていや〜な気分になる。

それでも、ウシジマくんの世界を見たくなってしまう魅力がある。原作者がリサーチに基づいて描いた「最近はこんな闇商売があるのか〜!」と唸らせるリアルな闇情報に対する怖いもの見たさも少しはある。そんななか、たまに垣間見られる細くてうっすらとした一条の光や、登場人物がまともな感覚を取り戻したかと思えるシーンに小さな救いを感じることもあるからだろう。

しかし、何よりも主人公・丑嶋のキャラクターそのものに惹かれるところが大きい。ダークヒーローと言いたいところだが、丑嶋はヒーローでもなんでもない。まごうかたなき、違法の闇金業者で、人を陥れることはあっても、自分の利益にならない限り人を救い出すことはない。しかしながら、冷徹で肝が据わっており、頭の回転が異様に早く、身体能力も高い。そして、自分の信念を持ち、意外にも真っ当な人間性を忘れずにいる姿が清々しいのだ。…中編へ続く(文:入江奈々/ライター)

【元ネタ比較】『闇金ウシジマくん Part2』中編
【元ネタ比較】『闇金ウシジマくん Part2』後編

『闇金ウシジマくん Part2』は5月16日より全国公開される。

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