汚してしまった地球を元に戻すことは我々の義務──仏人監督が語る自然との共存

ジャン=ポール・ジョー監督
ジャン=ポール・ジョー監督
ジャン=ポール・ジョー監督
セヴァン・スズキ/『セヴァンの地球のなおし方』より

1992年にリオデジャネイロで行われた環境サミットで、1人の少女が素晴らしいスピーチを行った。12歳の彼女は地球を汚し続ける大人たちに向って「オゾン層に開いた穴をどうやって塞ぐのか、絶滅した動物をどうやって生き返らせるのか、どうやって森を蘇らせるのか──どうやってなおすのかわからないものを壊し続けるのは、もうやめてください」と訴えたのだ。

それから18年後、知性溢れる女性へと成長した彼女──環境運動家でもあるセヴァン・スズキをナビゲーターにしたドキュメンタリー『セヴァンの地球のなおし方』が、6月25日より公開される。

監督は、『未来の食卓』で食の安全を問いかけたジャン=ポール・ジョー。未来の子どもたちの生活を守るため、今、私たちがすべきことを訴え続けてきたジョー監督に、映画について、そして自然と人間との共存について聞いた。

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[動画]『セヴァンの地球のなおし方』予告編

──この映画を作ろうと思ったきっかけについて教えてください。
監督:第1作目の『未来の食卓』を作っていたとき、「今後はこういったテーマで作品を作っていきたい。これをシリーズの第1弾にしたい」と思っていました。そして第2作目をつくろうと考えていたときに、リオデジャネイロでのセヴァン・スズキのスピーチを知り、飾らない語り口、シンプルな主張に感動しました。その後、彼女とコンタクトを取るようになり、彼女が最初の子どもを身ごもっていると聞かされたときに、彼女こそ第2作のガイド役を果たすべき人物だと確信したんです。

──劇中では人間と自然との共存のためにすべきことが語られていきます。それは(監督の母国である)フランスや日本のように豊かな国では受け入れられる主張だと思いますが、貧しさにあえぐ国にも同じことを強いるのは難しいのではないでしょうか。
監督:確かに貧しい国の人々に「生活を変えなさい」と強いることはできません。私は、まず変わるべきは、地球を汚してしまった先進国の人間たちだと考えます。変化することは豊かな国の役目で、我々こそが変わらなければいけないと思うんです。

──映画を見て「変わらなければならない」と思う人は多いと思います。一方で、問題はあまりに山積みなので無力感を感じる人もいると思います。
監督:日本には1億人以上の人口がいますよね。その10分の1の人々が何かを始めれば、大きな影響力を持つはずです。ムーブメントを起こすのは1人ひとりの行動からなのです。
我々に求められているのは、地球を救うなどという大それたことではありません。地球は人間がいなくなっても存在し続けるでしょう。今考えなければいけないのは、人間を救うため、生態系を救うためには何をしなければいけないのかということなのです。

──『未来の食卓』も本作もとても素晴らしい作品ですが、こういう真面目な作品の資金集めや興行は大変だとも聞きます。製作にあたっての苦労や工夫を教えてください。
監督:確かに資金面での苦労はありました。『未来の食卓』のときは製作費がほとんど集まらなかったので、妻と私とで持っている製作会社が資金を調達し、融資も取り入れて作りました。ただ、幸いにもヒットしたので、そのお金で本作が作れました。
 私の願いはただ1つ。自転車操業ではありますが、次回作を作れるだけのお金をもたらしてくれる映画を作り続けたいということです。

──最後に、読者へのメッセージをお願いします。
監督:子どもの頃「借りたものは、そのままの形で元の場所に返しなさい」とよく先生に言われました。私たちは、次世代の子どもたちに地球を借りている立場です。けれども、今、このまま返したら、子どもたちにはひどい状態の地球しか返せません。私たちの義務は、今の汚れた地球を元の美しい姿に戻してから、子どもたちに返すことだと思うのです。

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『セヴァンの地球のなおし方』作品紹介
『未来の食卓』作品紹介
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