実写版「ハガレン」、最新VFX力は松雪泰子の肌修正に注がれた?

#ハガレン#元ネタ比較

『鋼の錬金術師』
(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会
『鋼の錬金術師』
(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会
『鋼の錬金術師』
(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会
『鋼の錬金術師』
(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会
『鋼の錬金術師』
(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017 映画「鋼の錬金術師」製作委員会

…中編「金髪の山田涼介に期待高まるも、ふたを開けてみると…」より続く

【元ネタ比較】『鋼の錬金術師』後編
え? これって遊園地のアトラクション映像!?

荒川弘原作による大ヒットコミック、「鋼の錬金術師」が実写映画化された。

チビと言われてキレるエドに扮する山田涼介は、筋肉質な体格もハマっていて期待通り。アルも、鎧姿の彼が実写で動いてるだけでファンとしては嬉しくなる。

彼らの幼なじみのウィンリィを演じる本田翼はポスターを見て期待できないと思っていたが、髪を金髪にしてもおらず、どうやっても本田翼にしか見えなかった。

この物語は、実は軍隊がメインとなっている。錬金術のようなパワーは軍事に利用されるのが世の常のようで、舞台となるアメストリスは軍事国家であり国家錬金術師は軍の傘下にある。エドも、国家の狗と揶揄されようとも情報を集めるために史上最年少で国家錬金術師の資格を得て、軍に所属している。

その上で重要なキャラクターである焰の錬金術師でもあるマスタング大佐はディーン・フジオカが演じているのだが、彼は軟派な感じがするというか、軍人に見えない。『進撃の巨人』のときは賛否あったが、長谷川博己は軍人がサマになっていたぶんマシだったなぁと思う。ディーン・フジオカに限らず登場人物たちはみな、軍服デザインがカッコ良すぎるのかコスプレ感が否めない。

だが、それよりも違和感あるのはやっぱり世界観だ。イタリアでロケしたという町並みは確かにヨーロッパ風だが、CG処理を施したのかやけにキレイでまるでディズニーシーのよう。

町人も、用意されたこぎれいな“貧しい町人たちの衣装”に身を包んだ和製ヨーロッパ風姿で、ディズニーシーのキャストかミュージカル役者のよう。リアリティのない“作りました感”が半端ないのだ。

……と言いながらも、役者のコスプレも、ヨーロッパ風町並みも、まあいいよ。がんばってくれたよ。しかし、予想外だったのは実はこれらのことではないのだ。最も唖然とさせられたのは、見せどころである肝心要のVFXシーンなのだ!

なんというか、一言で言うと古い感じがする。錬金術で現れるクリーチャーのデザインなどはカッコいいし、おそらく技術的には最新のものなんだろうと思う。しかし、センスだよ、センス! 見せ方のセンスが、ずばり言ってダサいのだ。エルリック兄弟が母親を錬成しようとする竜巻のようなシーンにしても、エドが錬成陣を使わずに槍を錬成するシーンにしても、原作に忠実にしようとしたのかもしれないが、なんだかダサい。

このVFXがかっこいいとすべての不満が帳消しになるが、VFXがダサいためにすべてが台無しだ。監督は『ピンポン』で名を挙げた曽利文彦。考えてみたら『ピンポン』は2002年の作品だし、彼は2011年に『あしたのジョー』なんていうトンデモ映画も撮っていた。曽利文彦監督だからVFXは心配していなかったのだが。

ついでに言うと悪役の“ラスト”に扮する松雪泰子は肌のキメがない顔がCGのようで、別の意味で怖かった。最新VFXは彼女に一番注がれたのかもしれない。

総合すると、どこかダサくて“作りもの感”が出過ぎていて、テーマパークのアトラクション映像のような本作。『スター・ウォーズ』を見に行ったら、ディズニーランドのスターツアーズの映像を2時間見せられた気分だった。あれが悪いとは言わないが、やっぱり映画とは別物だし、こちらは映画を見るテンションで臨んでいるのだからして、勘弁してほしいと思ってしまうのも致しかたない。(文:小野田礼/ライター)

『鋼の錬金術師』は公開中。