生アフレコって何だ!?『キンプリ』が仕掛けて大流行!

#KING OF PRISM#映画作りの舞台裏

キャラクター全員が服を着ていないイラストが描かれた『KING OF PRISM by PrettyRhythm』前売り券
キャラクター全員が服を着ていないイラストが描かれた『KING OF PRISM by PrettyRhythm』前売り券
キャラクター全員が服を着ていないイラストが描かれた『KING OF PRISM by PrettyRhythm』前売り券
西浩子(にし・ひろこ)
9月2日生まれ。大阪府出身。2012年エイベックス・ピクチャーズに入社。2013年よりTVアニメシリーズ『プリティーリズム・レインボーライブ』の制作にアシスタントとして参加。その後、『プリパラ』(2014年〜)、2016年『KING OF PRISM by PrettyRhythm』の制作を務める。
『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』
(C)T−ARTS / syn Sophia / エイベックス・ピクチャーズ / タツノコプロ / キングオブプリズム PH 製作委員会

…前編「『上映中は静かに』はもう古い!? 映画館の常識を覆す“応援上映” って?」より続く

【映画作りの舞台裏】『キンプリ』西浩子Pに聞く/中編
観客発信のコール&レスポンスはこうして生まれた!

通常の映画上映とは違い、声援、コスプレ、ペンライトの使用などが許可された参加型の新しい上映形態である応援上映。その楽しさが口コミで広がり、スマッシュヒットを放った通称『キンプリ』こと『KING OF PRISM by PrettyRhythm』。TVアニメ『プリティーリズム』シリーズのスピンオフとなる劇場版だ。前作の予想以上のヒットを受けて劇場版新作『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』が公開される。作品とともに応援上映の魅力を西浩子プロデューサーに語ってもらった。

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『キンプリ』シリーズを見て目を奪われるのは、まず第一にぶっ飛んだ演出だ。プリズムショーというフィギュアスケートをベースにしたライブシーンではハートが無数に飛び散ったり、キャラクターが裸で何体も跳んだり、トリップしそうな摩訶不思議な映像が繰り広げられる。西プロデューサーは「他でスゴいと言われているものを見ても、いや、『キンプリ』も、もともとの『プリティーリズム』シリーズももっとスゴいことしてるよ!と思っていました」と笑う。

さらに、ただ面白おかしいだけでなく、TVアニメシリーズ『プリティーリズム』のスピンオフである『キンプリ』は、シリーズで描かれてきた逆境を乗り越える辛さや、仲間との葛藤といった人生の陰の部分も掬い取ることを継承している。「人生の教訓もこめられたドラマとしての見どころもしっかりとあるんです」と西プロデューサーは自信をのぞかせる。

しかし、多くの人に作品の良さを理解してもらうためには、第一に作品の存在を知ってもらわないと始まらない。そこで、西プロデューサーが出した策はとにかくインパクトを与えること。なんと、第1作目の『KING OF PRISM by PrettyRhythm』で、キャラクター全員が服を着ていないイラストが描かれた前売り券を発売したのだ。

「作品が知られていないから、単にカッコいいイラストでは話題になんてならない。このチケットのイラストがSNS等で拡散されて、一人歩きするほど話題になってほしいという思いで実施しました。もう、失うものは何もないので(笑)」。微笑んで語る西プロデューサーの狙い通り、当時ネットでは話題騒然となった。

『キンプリ』の話題は全裸だけじゃない。やはり、その名を広く知らしめたのは応援上映の楽しさだ。ただ、応援上映という上映形態は『キンプリ』以前にも数年前から行われていた。実際に西プロデューサー自身も、他の作品の声出し可能な上映イベントに客として参加したこともあり、『劇場版プリティーリズム プリズムショー☆ベストテン』(2014年3月公開)では既に応援上映を取り入れていた。ではなぜ、それまでの作品と違い『キンプリ』の応援上映はこんなにも観客を魅了したのだろうか?  その疑問を解く鍵は、本当の意味で観客が参加することができる演出に隠されていた。キャラクターのセリフに対して観客が合いの手を入れられるように、微妙な“間”があけられているのだ。

西プロデューサーによると、「菱田正和監督が以前に手がけた『劇場版 プリパラ』のときに、キャラクターの『みなさん、いきますよー?』というセリフのあとに作為的に“間”を作ったんです。すると、観客が「はーい!」と応えてくださいました。それで、「これはイケる」と思われたそうです。『キンプリ』では観客が声かけをできる“間”を随所に入れていらっしゃいました。いきなり『キンプリ』で応援上映が成功したわけじゃなく、今まで積み重ねてきた経験の賜物です。でも、生アフレコは『キンプリ』独自のものですけどね」。

そう、『キンプリ』ではキャラクターと観客が掛け合いする究極の形、生アフレコというシーンが登場する。男の子のキャラクターが女の子とデートをしていると思われるシーンがあり、影になって顔がはっきりと見えない女の子の登場人物のセリフだけ音声はなく、テロップでセリフの字幕が入るというシーンだ。観客は女の子に自分を投影して、キャラクターとセリフのやりとりが生でできるのだ。夢があふれるシーンが実現するうえ、これなら応援上映でどう合いの手を入れればいいのか戸惑ってしまう観客も、字幕を読めばいいだけなので声を出しやすい。この生アフレコは菱田監督が生み出したものだそうだ。

「コンテの段階でテロップが入っていて、菱田監督に『これ、なんですか?』って聞いたら、『プリズム☆アフレコだよ。流行るよ、コレ!』って言われたんですよ、ドヤ顔で(笑)」と、西プロデューサーは振り返る。「結果、作品の前半で入る生アフレコシーンで観客は声を出して、それをきっかけにどんどん声出しするようになっていきました。菱田監督にしてやられたな!と思いましたね」。

欧米ではポップコーン片手に歓声をあげる映画鑑賞スタイルがあるが、シャイな日本人に映画を観て自由に声を出して応援しましょうといっても、はじめはなかなか難しい。でも、決まったセリフならやりやすいというもの。応援上映が盛り上がりを見せたのは、この生アフレコのおかげだと言っても過言ではないかもしれない。

応援上映が面白い展開になりそうだなと西プロデューサーが感じたのは、早くも公開初日の夕方に行われた初回の応援上映だったというから驚きだ。朝の通常上映の回を見たファンは生アフレコシーンなどをはじめ、応援上映でのコールを楽しみにしていて、満を持して挑んだのだ。しかも、生アフレコや“間”を取って声出しできるように用意したシーンはもちろん、それ以外の制作側が予想していなかったシーンまで声がかかった。西プロデューサーが印象的だったのは、キャラクターが主人公に「苦手な食べ物はなんだい?」と尋ねるシーン。主人公は「セロリですけど」と答えるのだが、ひとりの男性客が「ピーマン!」と叫び、場内に笑いが起こる一幕があった。『キンプリ』を象徴するコール&レスポンスが生まれた瞬間だ。「あの男性客の方には感謝ですね!そこから、あのシーンでは自分の苦手な食べ物を言うのが流行ったし、自然発生のものが生まれるきっかけとなりました。その後からもどんどん続いてお客さんが広めていってくれて、応援上映が盛り上がっていったのはお客さんのおかげです」と観客に感謝を示す。

他にもコールだけでなく、主人公が自転車に乗るシーンではペダルを漕ぐようにペンライトをくるくると回したり、教会のシーンではペンライトをクロスさせて十字架を表したり、アクションまで生まれて、これまたスタッフは想定外のことだった。また、男性客というのもこちらとしては意外な気がしたが、『プリティーリズム』シリーズから応援してくれている男性ファンもいて観客の男女比は2:8ぐらいだそうだ。(文:入江奈々/ライター)

後編「修羅場ウチワで大盛り上がり!『キンプリ』は、グッズを買ってから鑑賞するのがオススメ」に続く…

『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』は6月10日より全国公開される。