9月12日、テニスの全米オープンで2度目の優勝を果たした大坂なおみ選手。22歳の彼女の快挙はテニスのコート上だけではなく、コートの外でも成し遂げられていた。
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大坂選手は8月31日の初戦に、黒地に白い文字で「BREONNA TAYLOR(ブリオナ・テイラー)」と書かれたマスクを付けてコート入りした。26歳の救急救命士のテイラーさんは今年3月、自宅アパートで別人と人違いされて警察に射殺された。
試合後のインタビューで、今後も他の名前の入ったマスクを付けるかと問われた大坂選手は「実は7枚持っています。実際は7枚のマスクでは(犠牲者の)名前の数に足りないのが残念です。できれば決勝戦まで進んで、皆さんにマスクを全部見てもらいたいです」と語り、その目標を9月12日に達成した。
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— Nike Japan (@nikejapan) September 12, 2020
世界に中継される全米オープンという場で毎試合、マスクを付けることで不当に殺害された黒人たちの名前(Breonna Taylor, Elijah McClain, Ahmaud Arbery, Trayvon Martin, George Floyd, Philando Castile, Tamir Rice)の名前を発信し続けた彼女は、8月下旬にW & Sオープン準決勝出場の辞退を発表した。
ウィスコンシン州で警官が黒人男性を背後から複数回銃撃した事件を受けてのもので、大坂選手はSNSに「私はアスリートである前に、黒人女性です。黒人女性として、私のテニスを観戦してもらうよりもずっと大事なことがあると感じています」と投稿、「私がプレイしないことで大きなことが起きるとは思っていませんが、白人が大半を占めるスポーツ(注:テニス)の中で対話を始めることができれば、正しい方向への第一歩になると考えます」と綴った。
彼女の決断には「スポーツに政治を持ち込むべきではない」や「世界をより良くしようとしている」など様々な意見が寄せられたが、W&Sオープンは全試合を中止するという形で大坂選手に賛同した。
今年5月、「もうシャイでいるのはやめます。本当に時間の無駄。今までにたくさんのアイディアを共有できたかも知れないし、いろいろな人と話ができたかもしれない」と宣言した大坂選手は今の自分について「意識を広めるための器のようだ感じています」と話している。
12日の全米オープン決勝戦後のインタビューで、7枚のマスクを通して伝えたかったメッセージは何か?という質問に大坂選手は「あなたが受け取ったメッセージは何か?というのがより重要な質問です。大事なのは、人々に話し合いを促すことです」と答えた。
試合後に行われた記者会見と写真撮影では、今年1月にヘリコプター墜落事故で亡くなったバスケットボール選手、コービー・ブライアント氏のジャージを着て登場した。SNSにジャージ姿でコートで優勝カップを手にした写真に「このジャージを毎日、試合後に来ていました。本当に力を与えてくれたと思います。永遠に」と添えて投稿した大坂選手は、記者会見で「彼が『こういう風になるだろう』と考えてくれていたような人物に私はなりたいんです。彼は私が立派になるだろうと考えてくれていた。だから将来、立派な人になりたいと願っています」と語った。
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今年7月、「Esquire」に寄せたエッセイで彼女は「私は娘であり、妹であり、友人であり、恋人です。私はアジア人であり、黒人であり、女性です。他の人たちと同じ、普通の22歳です。たまたまテニスが得意なだけ。私は自分をそのまま受け入れました。“大坂なおみ”として」と綴った。
様々なプレッシャーと戦いながら、メッセージを伝え続ける大坂選手の勇気にはSNSなどを介してセレブリティたちも賛同を示している。バラク・オバマ元大統領夫人で、著述家としても活躍するミシェル・オバマ氏は14日(現地時間)、「あなたのことをとても誇りに思います」と大坂選手に向けてツイートした。
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