ずるい男と一途な男の恋模様を繊細に官能的に表現した芳醇な作品

#大倉忠義#成田凌#映画#窮鼠はチーズの夢を見る#行定勲#週末シネマ

窮鼠はチーズの夢を見る
『窮鼠はチーズの夢を見る』
(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
窮鼠はチーズの夢を見る
大倉忠義
成田凌

ラブストーリーはたくさんあるが、恋愛というものが本当に見える作品は意外と少ない。水城せとなの原作コミックを行定勲が監督した『窮鼠はチーズの夢を見る』は、恋という現象、恋する人の機微を伝える作品だ。

・成田凌が大倉忠義との狂おしいほどの関係を語る

学生時代から「自分を好きになってくれる女性」とばかり付き合い、今は結婚している恭一はある日、大学の後輩で興信所に勤める今ヶ瀬と7年ぶりに再会する。今ヶ瀬から突然「ずっと好きだった」と告白された恭一は驚きと戸惑いを隠せないまま、自らの保身のために今ヶ瀬のペースに巻き込まれていく。紆余曲折を経て一緒に暮らし始めた2人だが、その関係は相思相愛とは言えないものだった。やがて恭一の昔の恋人や勤務先の社員といった女性たちが介在し、2人の関係は揺れていく。

恭一を演じるのは『大奥』(10年)や主演映画『100回泣くこと』(13年)などで俳優としても活躍する関ジャニ∞の大倉忠義。今年すでに『弥生、三月 君を愛した30年』『糸』など出演作が公開された成田凌が今ヶ瀬を演じる。美しい2人は絵になるが、ただ綺麗なだけではない内面の複雑さ、理性や理屈では制御できない恭一と今ヶ瀬の言動を、臆することなく表現している。愛に転じる前の、情熱がメインの“恋”だけを見ている感覚だ。体温が伝わってくるような艶かしい官能の演出は行定監督ならではの手腕を感じる。

愛されるだけのずるい男と、そんな相手を恋慕い続ける一途な男。恋をする時、誰かを愛したいのか、誰かに愛されたいのか、誰かの邪魔をしたいだけなのか。同性であろうと異性であろうと、恋を知る人なら、我が身に置き換えられるキャラクターが必ずいる。どの立場から恋に向き合うか。立ち位置を変えると見え方も変化する、味わいある恋愛映画だ。(文:冨永由紀/映画ライター)

『窮鼠はチーズの夢を見る』は、9月11日より、TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国ロードショー

INTERVIEW