決してひとりでは見ないでください…トム・ヨークが恐怖を倍加させる。1月も注目作が続々!

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『サスペリア』
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【映画を聴く】1月の注目作

2018年は音楽映画&音楽が印象的に使われた映画がとても充実した年になったが、2019年1月の公開作を見ると、その“余熱”はまだまだ続いているようだ。その見どころ&聴きどころをいくつか紹介したい。

●『ホイットニー〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜』(1月4日)
まずは『ホイットニー〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜』。2012年に48歳で亡くなったホイットニー・ヒューストンの生涯に迫ったドキュメンタリーで、昨年末公開の『私は、マリア・カラス』に続く大物ディーヴァ系の注目作だ。監督のケヴィン・マクドナルドは『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』が手がけたドキュメンタリーの名手。センセーショナルで破滅的な人生を歩んだかのように思える80〜90年代最大の歌姫の生涯をニュートラルな視点で見つめ、真実の姿を描き出している。『ボヘミアン・ラプソディ』同様、リアルタイムを知らない若い世代にも先入観なしに見てほしい仕上がりだ。

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●『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』(1月5日)
名優マイケル・ケインをナビゲーターに、60年代ロンドンの活況を振り返るドキュメンタリー。自身の役者としてのキャリアと、スウィンギングシティ・ロンドンで当時起こっていたムーヴメントを重ね合わせた、映画史的・音楽史的に資料性の高い作品になっている。ケインは本作でプロデューサーも務め、ポール・マッカートニーやローリング・ストーンズ、ロジャー・ダルトリー、ツィギー、マリアンヌ・フェイスフル、サンディ・ショウなど、彼だからこそ集められたであろう豪華なコメンテーター陣が画面に彩りを加える。

●『喜望峰の風にのせて』(1月11日)
1968年、世界一周に挑戦したイギリス人アマチュアセイラーの実話を描く、コリン・ファース主演のドラマ。『ボーダーライン』『メッセージ』などの映画音楽で注目されながら昨年2月に亡くなってしまった音楽家、ヨハン・ヨハンソンの遺作として、音楽的にも期待値の高い作品だ。ポスト・クラシカルと呼ばれるミニマルな作風を映画音楽においても展開してきた彼だが、本作の音楽はこれまでよりもドラマティックかつ感傷的。彼が生前に音楽を手がけながら日本未公開の映画は、残すところルーニー・マーラとホアキン・フェニックスが出演する『メアリー・マグダレン(マグダラのマリア)』のみとなった。こちらも公開を楽しみにしたい。

●『ゴールデン・スランバー』(1月12日)

堺雅人主演で2010年に映画化された伊坂幸太郎の人気小説が、韓国で再映画化。主演はカン・ドンウォンで、舞台や設定も韓国に移されている。ソウルの観光名所である光化門広場で初のロケが行なわれたことでも話題だ。タイトルはビートルズのバラードの小品に由来し、日本版では斉藤和義によるエモーショナルなカヴァーが使われていたが、今回の韓国版では韓国人アーティストによるさまざまなヴァージョンの「ゴールデン・スランバー」ほか、2014年に亡くなった韓国音楽界のカリスマ、シン・ヘチョルの楽曲なども物語に深く関わる楽曲として使われている。

●『夜明け』(1月18日)
広瀬奈々子監督のデビュー作。柳楽優弥演じる謎の青年と、小林薫演じる木工所経営者の奇妙な関係を描いたドラマで、YOUNG DAISや鈴木常吉らが脇を固める。“是枝裕和監督の愛弟子”と呼ばれる広瀬監督らしく、音楽にも独特なこだわりが感じられ、本作では知る人ぞ知るアメリカのシンガー・ソングライター、タラ・ジェイン・オニールを起用。二階堂和美とのデュオアルバムをリリースし、日本ツアーも積極的に行なうなど、日本への理解が深い彼女ならではの個性が活かされた劇伴に仕上がっている。

●『サスペリア』(1月25日)
1977年のイタリアのホラー映画をルカ・グァダニーノ監督がリメイク。「決してひとりでは見ないでください」のキャッチコピー通り、見る者を少しずつ追い詰める恐怖描写が敷き詰められた衝撃作だ。レディオヘッドのトム・ヨークが、単独でサウンドトラックを担当。時にデフォルメ感すら漂うホラー映画然とした音づくりで映像の恐怖を倍加するが、彼のソロアルバムとしても十分に聴き応えのある内容となっている。

1月だけを見ても、その充実度がわかるラインナップ。今年も“聴くべき映画”をたくさんピックアップして紹介していきますので、よろしくお願いします。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)