よだかれん
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トランスバッシングした大ベテランに震える声で抗議!

【日本映画界の問題点を探る/番外編/新宿を世界のエンタメ中心地に! 3】ここ数年、LGBTQという言葉が普及しており、その流れは少しずつではあるが政治の世界にも影響を与えつつある。そんななか、日本初のトランスジェンダー区長になるべく奮闘しているのがよだかれん。当選すれば、大きな話題と共に、政界に一石を投じる存在となることは間違いない。ミュージカル俳優やショーパブダンサーというエンターテイナーのキャリアを経て、現在は行政書士の仕事と両立させながら選挙活動を続けているよだに話を聞いた。

【 日本映画界の問題点を探る/番外編/新宿を世界のエンタメ中心地に! 3】自称女優では病気の母の保証人にもなれない〜

「私が参院選で受かっていれば、日本初めてのトランスジェンダーの国会議員となったのでインパクトはあったかもしれませんが、いま地方自治体レベルではLGBTQ当事者の立候補や当選は増えているので、首都圏ではあまり騒がれなくなってきた印象です。ただ、地方に行くとまだまだ『あなたのような人でも選挙に出られるの?』と言われることも。そういったこともあって、演説をする際には自分がトランスジェンダーであること、そしてLGBTQは人口の3~9%ほど存在し、みなさんの良き隣人でもあることを伝えるようにしています。それだけでも全国各地の当事者たちからは喜びの声をいただいているので、思っている以上にいい影響を与えられているのではないかと実感しているところです」

一方でトランスバッシングなどもあるというが、どんな困難にもめげないよだの姿は、すでに行政書士の世界にはある変化をもたらしている。

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「私が行政書士として開業したのが2013年ですが、当時は行政書士でLGBTQを公言している人がいなかったので、『すごいのが来た』と騒ぎにはなったみたいです(笑)。名刺交換をするたびに、手続きをすれば法的に性別や名前を変えられる話をするので毎回驚かれましたが、そうやって徐々にみなさんのなかに理解が広がっていくのを感じました」

そんななか、行政書士試験が行われる前に開かれた試験監督のための説明会で、よだの行動が大きな反響を巻き起こすこととなる。

「質疑応答のときに、年配の方が『過去に試験監督をした際、見た目と性別が違うヤツがたので、そいつを試験後に残してやったんですよ。でも、チェックしたら申請通りだったので、そのまま帰しましたが、今年もそういう人がいるかもしれませんね。あははは!』と言ったんです。そのときに『これはとんでもないな』と。ここで私が黙っていたら仲間のためによくないと思って、『私も男性から女性に生まれ変わって行政書士になりました。同じような人はいくらでもいるので、二度とそういうことはしないでください。不正ではありません』と発言しました。ド新人の私が大ベテランのおじさんに向かって震えながら伝えた言葉ではありましたが、10年近く経った今でも色々な方から、『あのときのことが忘れられない。みんなも同じことを思っていたよ』と。行政書士の方々にとって、一つの教訓にしていただけたと思いますし、そのあとから当事者の行政書士が出てきたり、LGBTQの案件に特化した行政書士が出てきたりしたので、少なくとも影響は与えられたのかなと自負しています」

行政書士として亡くなった方の相続手続きや外国の方の在留資格に関する業務に携わってるよだ。彼女がエンタメ業界に身を置いていたのは2017年までだが、自身の経験と現在の状況を比較して感じていることがあると話す。

「2010年代はLGBTQのことを知ってはいても、実際にどう対応すべきかがあまりわかっていない時代だったのかなと。女性として出演していた舞台なのに男性の大部屋に名前が書かれていて、そのことを訴えてもプロデューサーは何が問題なのかわかっていないということもありました。あとは、どうしてもイロモノ扱いというか、笑いの要素が欲しいときに呼ばれていたことが多かった気がします。ただ、最近は笑い者にできない存在だとわかると、扱いがわからなくて露出そのものが減ってしまうこともあるので、そこはまだまだ難しいなと感じているところです」

とはいえ、よだ自身は「政治家としては、トランスジェンダーであることはラッキーなこと」だと笑う。

「まずは、ものすごくたくさんの方から興味を持っていただけるのは大きいですね。実際、演説をしていてもチラシを受け取ってくださる方の数は通常よりも多いと聞いています。私にとって、トランスジェンダーは“武器”。それを大いに発揮して、新宿から日本大変革の一翼を担いたいです。高校時代の先生が『人生に無駄なことなんて何もない』と言ってくれたことがありましたが、俳優やダンサーとして得た表現力は議会で質問する際や演説を行うときなど、人前で話をする場面で生かされているので、いままで歩んできたことのすべてが繋がっているんだなと。そのうえで、政治家は私の天職だと感じています。たとえ失敗しても、何度でもチャレンジしてやり直せる社会にしたいです」【4 パリ、ロンドン、NYに負けないエンタメの街になれる可能性を秘めた新宿を、もっと面白い街に!】(11月5日掲載予定)に続く。(text:志村昌美/photo:小川拓洋)

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