【この俳優に注目】後編/悲劇を乗り越え、不惑で花開いた遅咲きの逸材

#この俳優に注目

『オールド・ボーイ』のジョシュ・ブローリン
6月28日より全国公開
(C) 2013 OB PRODUCTIONS,INC.ALL RIGHTS RESERVED.
『オールド・ボーイ』のジョシュ・ブローリン
6月28日より全国公開
(C) 2013 OB PRODUCTIONS,INC.ALL RIGHTS RESERVED.

巨匠との再タッグが示す俳優としての真価
ジョシュ・ブローリン

役を離れたインタビューではとても気さくで、質問に対しての答えは丁寧、話も興味深い。リー監督のトレードマークであるドリー・ショット(移動撮影)は今回も登場するが、これはわざわざ頼み込んで撮ってもらったシーンだと嬉しそうに話す映像がネット上で公開されている。『グーニーズ』の思い出も楽しそうに語り、いろいろな作品や監督の名前が出てくる話しぶりから、本当に映画が好きなことが伝わってくる。

【この俳優に注目】ジョシュ・ブローリン 前編/数々の悲劇を乗り越え、不惑で花開いた遅咲きの逸材

コーエン兄弟とはその後『トゥルー・グリット』で、ストーン監督とは『ウォール・ストリート』でも再び組み、ウディ・アレン監督作にも『メリンダとメリンダ』『恋のロンドン狂騒曲』の2本に出演。同じ監督から再び声がかかることは俳優にとって最高の名誉の1つであり、数多(あまた)の名匠、巨匠に望まれる事実が彼の俳優としての真価を語っている。

そんな彼の唯一といってもいい欠点はアルコール依存の問題。08年、『ブッシュ』の撮影で滞在していたルイジアナ州のバーで乱闘騒ぎを起こして逮捕され、昨年元旦に公共の場で羽目を外しすぎて逮捕、11月にもパブの外での喧嘩など、泥酔状態での暴力沙汰や失態で何度も問題を起こしている。その結果、ダイアン・レインとも昨年離婚、彼は禁酒を誓ってリハビリ施設に入所した。

Nobody’s perfect(完ぺきな人間などいない)を体現するような人だ。10代の頃、ヘロインに手を出し、その頃の仲間が19人も命を落としたという事実、27歳の誕生日当日に母親が交通事故死した悲劇。そうした過去を積み重ねてきた彼が、内に悪魔を抱えているのは間違いない。それをさらけ出し、演技という表現を通して芸術にする。立派な人間ではないかもしれない。だが、人を感動させることと品行方正であることは何の関係もない。傷ついた魂の不完全な弱さに人々は共鳴し、かけがえのない美しさを見出すのだ。(文:冨永由紀/映画ライター)

【関連記事】
【あの人は今】自らの闘病生活に基づくコメディで主演復帰した80年代のトップスター
【この俳優に注目】ブレイク間違いなし!第2のレオナルド・ディカプリオの今後が楽しみ
【この俳優に注目】マイケル・ファスベンダー/名監督作への出演が続々! 声・顔・姿の三拍子揃った旬な俳優
【この俳優に注目】ブラッド・ピット/プロデューサーとしても才能を発揮! 気骨溢れるイクメン俳優