イーストウッドが描いてきたのは“人生の崖っぷち”にいる男たち! それでも彼らは前に進む

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主人公の栄光を挫折を見事に描き出す、冒頭5分の本編映像

半世紀以上にわたり一線で活躍を続ける名優にして、『許されざる者』(92年)『ミリオンダラー・ベイビー』(04年)で監督として2度のアカデミー賞に輝く巨匠クリント・イーストウッド。監督デビューから50年、監督40作目となるアニバーサリー作品『クライ・マッチョ』が現在公開中だ。今回、本作品よりイーストウッド史上初となる冒頭5分の本編映像が公開された。

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イーストウッドはいつも崖っぷちにいる。「最後の西部劇」と銘打って製作された『アウトロー』(76年)は、愛する妻と息子を奪われすべてを失った農夫が復讐に立ち上がる。約10年後の『ペイルライダー』(85年)では、イーストウッドはメキシコの金採掘城をめぐる利権闘争で虐げられた“崖っぷち”の人々の前に神父姿で現れた。

『センチメンタル・アドベンチャー』(82年)では、再起を賭けてオーディションを目指すカントリーシンガーを演じた。初のオスカー受賞作『許されざる者』(92年)が全米公開されたのは1992年。年老いた元悪党マーニーには子どもがふたり。このままでは幼い子どもたちの将来はない。人生崖っぷちの男の前に若きガンマンが現れて「娼婦を傷つけた男」に懸賞金がかかっていると囁いた。

2度目のオスカー受賞作『ミリオンダラー・ベイビー』(04年)では、逸材を育てながらも他のジムに移籍されてしまったボクシングジムを経営するトレーナーを演じた。ある日、教会に通う彼の前に、人生の“崖っぷち”から這い上がろうとする女性ボクサーが現れる。

老い先を見定めることの出来ない退役軍人が、モン族の少年と出会うことで生きる意味を見出した『グラン・トリノ』(08年)。農園も自宅も抵当に入り、疎遠となった家族からも見放された“崖っぷち”の男はメキシコの麻薬カルテルの『運び屋』(18年)を引き受ける。実話の映画化作品『リチャード・ジュエル』(19年)では、爆破物を発見して英雄とされた警備員が、メディアによってテロの容疑者とされ崖っぷちに追いつめられた。

このように、イーストウッドはいつも人生の“崖っぷち”にいる人物を描いてきた。現在公開中の『クライ・マッチョ』でイーストウッドが演じているのは、落馬事故で人生が暗転した元ロデオスターのマイク・マイロだ。

今回公開された『クライ・マッチョ』の本編冒頭映像は、朝日を浴びながらテキサスの広大な白然を走る1台のピックアップトラックの描写で始まる。牧場に到着したマイクが車から降りる。1979年、いつものように仕事場に到着した彼を、雇用主のハワードが待ち受けている。腕時計を確認し、遅刻だと文句をつける。「昔は競争相手がお前を狙ったよ。2歳馬レースで5度も優勝。“今度こそマイクを失う”と毎回おびえたぜ。“引き抜かれる”って。遥か昔の話だよ」と一気呵成にまくし立てる。

ハワードの勢いは止まらない。「そうとも。馬での事故の前だ。薬漬けになる前。酒におぼれる前。今、うちの厩舎には二流の馬しかいない。調教師も同じだ。もうお前を失っても構わん。何の価値もない。新しい血が必要だ」「荷物の整理だ。済んだら出ていけ」とクビを宣告する。「あんたは昔からケチでヤワな根性なしだったな。だが、今さら言っても直りゃしねえだろう」とマイクはもはや未練はないとばかりにその場を後にする。

場面はマイクの家に変わる。庭で夕刻のひとときを過ごすマイクをとらえたカメラは、ロデオの受賞メダルや写真が飾られた部屋の中へと移動する。そして“テキサスのロデオスター落馬で負傷”の記事へとフォーカスされ、彼の人生を一変させた落馬事故、人生転落の瞬間をモノクロの映像で見事に映し出す。マイクの過去と半生が伝わるこの映像は僅か1分、イーストウッドの手腕が冴える見事な描写となっている。

1年後、マイクの前に現れた元雇用主が「メキシコにいる息子を連れ戻して欲しい。金も用意した」と依頼する。ハワードへの恩義を返すためにマイクはメキシコへと向かうことを決意する。少年ラフォとアメリカ国境を目指すふたりの旅路には、どのような結末が待ち受けるのか? 映像の続きは、ぜひ劇場でご確認頂きたい。

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