『旅立ちの島唄〜十五の春〜』三吉彩花&大竹しのぶ&小林薫インタビュー

美しい風景と島唄のハーモニーに酔いしれた3人が撮影を振り返る

#三吉彩花#大竹しのぶ#小林薫

三線は触るのも初めてだったので、弾きながら歌うのがとても難しかった(三吉)

沖縄本島から東へ360キロに位置する南大東島。この島には高校がなく、15歳の春、多くの子どもたちは家族と別れ、さまざまな思いを心に秘めて島を旅立つ。人生の岐路に立たされた一人の少女の視点を通し、島で生きることや家族との絆を描いた『旅立ちの島唄 〜十五の春〜』。

南大東島に実在する少女民謡グループ「ボロジノ娘」が奏でる美しい島唄も魅力の本作で、映画初主演を果たした三吉彩花、娘を見守る寡黙な父親を演じた小林薫、娘と離れ沖縄本島で暮らす母親に扮した大竹しのぶに、撮影の思い出や見どころを聞いた。

三吉彩花

──美しい自然や「ボロジノ娘」が奏でる島唄など見どころが多い映画ですね。

三吉:この作品に参加する前にも、アイドルとして歌をやらせていただいていたのですが、三線と島唄は初めてでした。まったくジャンルは違いましたが、歌によって感動したり元気をもらったりする人がいるというのは同じだと思ったので頑張りました。やっぱり歌っていいなって感じました。

小林:4月に沖縄で行なわれたプレミア上映会に行ってきたのですが、そこでボロジノ娘たちが(南大東島の島唄の)「おじゃりやれ」を歌い、そのあとシークレットゲストでBEGINが主題歌の「春にゴンドラ」を、さらに「島人ぬ宝(しまんちゅぬたから)」をみんなで歌ったんだよね。僕ら役者は2時間ぐらいの作品を作ってやっと感動してもらえたりすることがあるけれど、歌は1曲聴くだけで、いろいろなものが伝わってくる。BEGINの人柄も素晴らしくて、僕は『良い人になろう』って思いました(笑)。

──初めて経験する三線や島唄はいかがでしたか?

三吉:撮影に入る2ヵ月前ぐらいから練習を始めたのですが、触るのも初めてだったので大変でした。特に三線を弾きながら歌うのがとても難しくて……。でも私が歌う「アバヨーイ」は、作品のなかでとても大事なシーンなので、自分が納得いくまで練習をしようと思って臨みました。あまり余裕がなくて大変でしたが、自分のやれることはやったので、悔いはないです。

吉田康弘監督の人柄に触れて作品に入っていこうって踏み切れました(小林)
──それぞれ立場の違う複雑な家族を演じましたが、台本を読まれて、どのように作品へ入っていこうと思ったのでしょうか?
小林薫

小林:個人的には家族の情愛みたいな作品は苦手で、自分のなかでちょっと引いてしまう部分があるんです。でもスタッフをはじめ作品に関わる人みんなが、吉田(康弘)監督のために集まってきた。若い監督なのですが、彼の人柄に触れて、この作品に入っていこうって踏み切れましたね。監督と話をするなかで、家族の情愛を前面に出すのではなく、上手い具合の引き算が大事だねという話も出来ました。

大竹:「また吉田監督と仕事が出来るんだ!」というのが作品へ向かう一番の気持ちでした。監督デビュー作品の『キトキト!』もご一緒させていただいたのですが、(小林)薫さんが言うように、みんながヨッシー(吉田監督)の作るワンカットに全力投球していて、一緒に映画を作る喜びがあったんです。私が演じた母親は子どもと離れて暮らすという選択をしていて、その部分は「なぜなんだろう?」っていう疑問はあったのですが、吉田監督を信頼していれば大丈夫だと思ったし、話をしながら作り上げていくうちに、上手くいったなという実感はありました。

三吉:この脚本をいただいたとき、ちょうど私も15歳で、親元を離れた直後の撮影だったので、いろいろな部分で共感できるなっていう気持ちでした。

大竹しのぶ

──15歳で大きな決断を下さないといけない宿命を背負った少女が主人公ですが、大竹さんや小林さんの10代での決断の思い出は?

大竹:私は16〜17歳のころ芸能界デビューしたから、そのことがターニングポイントといえばそうなりますかね。でも当時は、周りが動いてくれて、自分では何も考えていなくて……。知らない間に楽しい汽車に乗っていて、気がついたら「お芝居ってこんなに楽しいんだ!」ってね(笑)。でも芸能界のお仕事をしながらも、普通の感覚は持っていなくてはいけないんだという気持ちがあって、高校だけは卒業したいという思いは強かったですね。そのことが私にとっては決断だったかもしれません。

小林:僕は10代後半は何も考えてないでボーッとしてたり、ちょっとした悪さもしたりして(笑)。そんななかで、芝居をやりたいって気持ちが出てきて養成所みたいなところに入ったんです。そこでのいろいろな出会いが、今につながっているという部分はありますね。

撮影期間は短かったのですが、娘の旅立ちのシーンは印象に残っています(大竹)
──印象に残っているシーンや演じていて伝えたい思いなどがあったら教えてください。

大竹:娘と離れて暮らしている設定だったので、他の人よりも撮影期間は短かったのですが、娘の旅立ちのシーンは印象に残っています。セリフはなかったのですが、娘の旅立ちを大事に祝いたいという気持ちと、そばにいられなくてゴメンねという思いなど、(三吉演じる)優奈の15年間をしっかり表現できたらいいなと思って臨みました。

小林:僕はいろいろなシーンを通じて「男ってすごい寂しい生き物だな」って感じました。特に娘にとって母親は、どんなに離れていても、会えばすぐにスキンシップが出来るし距離が縮まるけど、父親はずっと一緒にいても、どうしてもぎこちないし、距離を感じてしまう。なんとも言えない寂しさが男親にはありますね。

三吉:好きなシーンはたくさんあるのですが、高校受験の面接のシーンは印象に残っています。初めて優奈が自分の思っていることを人に打ち明ける重要な場面でもありますし、自分と重ね合わせて気持ちがシンクロした部分もありました。
 私自身も進路を決めるとき、埼玉から東京へ出てきた経験があり、親と離れて暮らすことになったんです。でもその時は距離が近いから、また帰ってくればいいぐらいに軽い感じの別れだったのですが、面接のシーンを演じているうちに「お父さんは寂しいって思っていたのかな?」とか私は一人っ子なので「娘が自分の所から離れていくのってどんな気分なのかな? 心配が多いのかな?」とかいろいろ考えたりしました。そういった部分は作品のテーマなのかなって思います。

──絶海の孤島での撮影は非常に刺激的だったようで「開放感がいっぱいで、本当に良いところでした。是非また行って、今度は釣りをしたいです」と目を輝かせて当時を振り返った三吉。「ボロジノ娘の『アバヨーイ』は家族への感謝の曲、BEGINさんの主題歌『春にゴンドラ』は“行って来いよ”と島を離れる子どもたちを送る曲。自然と島唄の融合を楽しんでください」と見どころをアピールした──

(text&photo=磯部正和)

三吉彩花
三吉彩花
みよし・あやか

1996年6月18日生まれ、埼玉県出身。2010年よりアイドルグループ「さくら学院」のメンバーとして活動を始めたのち、「Seventeen」の専属モデルとして絶大な人気を獲得。同誌を卒業後は、「25ans」や「ELLE Japan」などでモデルをつとめる。女優としても映画やドラマ、CMで注目を集め、『グッモーエビアン!』(12年)では 第67回毎日映画コンクールと第35回ヨコハマ映画祭で新人賞を受賞した。主な出演作は、『告白』(10年)や『旅立ちの島唄〜十五の春〜』(13年)など。『ダンスウィズミー』(19年)では500人の応募者の中からヒロインに抜擢され、主演をつとめた。

大竹しのぶ
大竹しのぶ
おおたけ・しのぶ

1957年7月17日生まれ。東京都出身。75年に映画『青春の門〜筑豊編』で女優デビューすると、同年に放送されたNHK連続テレビ小説「水色の時」でヒロイン知子を好演する。その後も数々のテレビドラマ、映画に出演し、演技派女優としての地位を確立。映画『事件』、『聖職の碑』(共に78年)、『鉄道員(ぽっぽや)』(99年)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞受賞をはじめ、11年の紫綬褒章受章など数々の受賞歴を誇る日本を代表する名女優である。

小林薫
小林薫
こばやし・かおる

1951年9月4日生まれ。京都府出身。71年から80年まで唐十郎が主催する状況劇場に在籍。退団後、映画や舞台、ドラマを中心に活躍し、映画『恋文』、『それから』(共に85年)、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(07年)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞するなど、存在感ある演技で人々を魅了している。現在公開中の『舟を編む』のほか、8月13日公開の『夏の終り』、14年6月公開の『春を背負って』など出演作が控えている。

小林薫
旅立ちの島唄〜十五の春〜
2013年5月18日よりシネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開(4月27日より沖縄県桜坂劇場にて先行公開)
[監督・脚本]吉田康弘
[出演]三吉彩花、大竹しのぶ、小林薫、早織、立石涼子、山本舞子、照喜名星那、上原宗司、手島 隆寛、小久保寿人、日向丈、松浦祐也、若葉竜也、ひーぷー、普久原明
[DATA]2012年/日本/ビターズ・エンド/114分

(C) 2012「旅立ちの島唄〜十五の春〜」製作委員会