『マリリン 7日間の恋』ミシェル・ウィリアムズ インタビュー

オスカーノミネートの演技派女優がマリリン・モンローの魅力を語った

#ミシェル・ウィリアムズ

私の目に映るマリリンは、木々のなかを軽やかに歩く1人の女の子だった

セックスシンボルとして世界中を魅了しながらも、1962年に36歳でこの世を去ったマリリン・モンロー。彼女が30歳のときに主演した映画『王子と踊り子』で、第3助監督をつとめていたコリン・クラーク(当時23歳)との間に芽生えた淡い恋を描いたラブロマンスが『マリリン 7日間の恋』だ。

この映画でモンロー役を演じたのは『ブロークバック・マウンテン』でアカデミー賞助演女優賞、『ブルーバレンタイン』で同賞主演女優賞にノミネートされたミシェル・ウィリアムズ。本作の演技でも同賞主演女優賞にノミネートされた演技派女優のウィリアムズに、役作りからモンローの魅力までを語ってもらった。

──まずは、初めて脚本を読んだときの感想を教えてください。

ウィリアムズ:コリン・クラークという人物や原作について何の知識もなかったのですが、脚本を読んでたちまち物語に引き込まれました。テンポや話の流れもよかったし、登場人物の内面をしっかりと描いている点も素晴らしかった。マリリンという人物が生き生きと描かれていたので、役にすんなりと入り込むことができました。

──マリリン・モンローを演じてみて、いかがでしたか?

ウィリアムズ:子どもの頃、寝室の壁にマリリンの写真を飾っていたんです。白いドレスを着たマリリンが、軽やかな足取りで木に向かって歩いている姿をとらえた写真でした。私は伝説的な女優とかセックス・シンボルとしてマリリンを見ていたわけではなく、彼女に対して女の子同士の親近感みたいなものを感じていました。私の目に映るマリリンは、木々のなかを軽やかに歩く1人の女の子だったんです。
 私はそのイメージを手がかりに、役作りを始めました。マリリンに対する私個人のイメージが役作りのスタート地点になったんです。マリリンについて自分なりのイメージを持っている人はあまりにも多いと思うので、リサーチの過程で人の意見に惑わされるのは止めようと心に決め、マリリンの人物像を自分なりに解釈して、どう演じるか自分で決めることにしたんです。
 私は私なりにマリリンを演じましたが、それをどう思うかは見る人次第でしょうね。作品が完成して、いろいろな意見が耳に入るようになったので、実を言うと少し不安になっています。今まで意識しなかったけれど、多くの人がこの映画に期待していますからね。

マリリン・モンローという人物は、彼女自身が作りあげたキャラクターだった
──モンローについては、どんな印象をお持ちでしょうか?

ウィリアムズ:役作りを始めた当初、私は一般的に知られているマリリンの人物像が彼女の本当の姿ではないということを理解していませんでした。でも、彼女に関する資料を読んだり写真や映像を山ほど見たりしているうちに、人々が抱いているマリリンのイメージは彼女自身が長い時間をかけて作りあげた虚像だということに気づいたんです。マリリンは演技教師のアドバイスを取り入れたり鏡を見て研究したりして、彼女ならではの魅力を強調する方法を考えたのだろうと。マリリン・モンローという人物は、彼女自身が作りあげたキャラクターだったんです。

──モンローは、男性にとってセックスシンボルというイメージが強い一方、女性ファンも多いのが特徴です。なぜ彼女は性別を超えて愛されるのだと思いますか?

ウィリアムズ:マリリンはたった1枚の写真でいろんなことを表現できる女性で、だからこそ人を惹きつける、不朽の魅力があるのだと思います。それと、彼女のどの写真が好きなのかは、男性と女性とで分かれると思います。幼少の頃、私の寝室に飾られていたマリリンの写真は、胸元の開いたドレスを着てセクシーな眼差しを向けているマリリン像ではなく、裸足で芝生の上を駆けまわっている写真でしたから。

ミシェル・ウィリアムズ

──演じる上で心がけたことはありますか?

ウィリアムズ:マリリンのリサーチを始めるまでは、あれこれ推測せず、なるべく先入観を持たないようにつとめました。その後、彼女の映画を見たり、関係する本やエッセイを読んだり、写真を見たりして、次第に考えをまとめていったんです。
 リサーチのなかで一番大きな発見だったのは、先ほどもお話をしたように、マリリン・モンローというのは本人が演じていたキャラクターであったこと。表のマリリンは、彼女自身が丹念に研究して作り上げたキャラクターだったので、演じるにあたって、私は歩き方や吐息交じりの声など、典型的なマリリンっぽさを全編を通して出すようなことはしませんでした。実際、彼女を良く知る人の証言によると、普段は歩き方も声も普通だったそうで、スイッチのようにオン・オフすることができたそうですよ。とても頭のいい女性で、素晴らしい女優だったと思うわ。そこは見落とされがちね。
 映画のなかの彼女はとても軽やかに見えるから、あれが素だと思われてしまう。でも、実際は10年にも及ぶ訓練のたまものだし、そこに彼女の知性が伺えるのだと思います。

とてつもない苦労を背負っていたのに、悲劇のかけらも全くない
───スターとしてでなく、女優としてのマリリンにはどんな印象をお持ちでしょうか?

ウィリアムズ:素晴らしい女優という印象ね。コメディを演じるときは軽やかで、彼女の人気シーンやコメディの演技を見ていると、悲劇のかけらも全くないの。とてつもない苦労を背負っていたのに、そういう影の部分を脇に退けておけたからこそ、演技ですごい輝きと解放感を放つことができたんだと思う。なかなかまねできることではないわ。
 『お熱いのがお好き』でもそうだし、『王子と踊り子』だって、撮影中の苦労話やローレンス・オリヴィエとの折り合いが良くなかったのはご存じのとおり。でも、それが一切演技には出てこず、まばゆいばかりのパフォーマンスを披露している。仕事にそういう影を一切落とさなかったことに尊敬するわ。

来日記者会見にて。花束ゲストとして登壇した西山茉希(左)とミシェル・ウィリアムズ(右)

──ジル・テイラーの手がけるコスチュームは、もちろんマリリンのイメージを元にしていると思いますが、役を演じるにあたって役立ちましたか?

ウィリアムズ:役立ったと思うわ。1人で練習するにあたって、タイトスカートを履いて、ローカットのブラウスを着て、ウエストにベルトを巻いて、ハイヒールを履いて、腰をくねらせながら部屋のなかを歩いてみたの。普段はいつでも走ったり逃げたりすることができるような格好が多いので、フラットシューズを履いていたりするのだけど、普段とは大分違う格好だったので訓練になったわ。
 マリリンのファッションの好きなところは、そのシンプルさ。彼女自身の美しさが宝石そのものだったので、ケバケバしい格好はしなかった。身にまとうものはカジュアルで、カプリパンツに黒のタートルネック、シンプルでシックなドレスなんかだった。派手な装飾が妨げにならず、彼女の素の美しさがにじみ出てくる。気品がないとできないことだと思うわ。

──最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

ウィリアムズ:日本のみなさんは、いつも素敵な手紙をくれるんです。本当に、(ほかのどの国よりも)きれいな手紙で。ぜひ、映画も見に来てくださいね。

ミシェル・ウィリアムズ
ミシェル・ウィリアムズ
Michelle Ingrid Williams

1980年、アメリカ生まれ。大ヒットテレビシリーズ『ドーソンズ・クリーク』(98〜03年)で一躍人気者に。『ランド・オブ・プレンティ』(04年)でインディペンデント・スピリット賞助演女優賞にノミネートされ、続く『ブロークバック・マウンテン』(05年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネート。『ブルーバレンタイン』(10年)で同賞主演女優賞にノミネートされたほか、『マリリン 7日間の恋』でも再度アカデミー賞主演女優賞にノミネートされている。私生活では『ブロークバック・マウンテン』で共演した故ヒース・レジャーとの間に長女をもうけている。

ミシェル・ウィリアムズ
マリリン 7日間の恋
2012年3月24日より角川シネマ有楽町ほかにて全国公開
[監督]サイモン・カーティス
[脚本]エイドリアン・ホッジス
[撮影]ベン・スミスハード
[原作]コリン・クラーク
[出演]ミッシェル・ウィリアムズ、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン、ジュリア・オーモンド、ドミニク・クーパー、ダグレイ・スコット、エマ・ワトソン
[DATA]2011年/アメリカ・イギリス/角川映画/100分
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