赤楚は照れ笑い、香取がクランクアップ後に追いかけた秘話も
『連続ドラマW 東野圭吾「虚ろな十字架」』(WOWOW/全4話)の完成報告会が8月31日に開催主人公・中原道正を演じる香取慎吾、“加害者家族”として道正と対峙するキーパーソン・仁科史也役の赤楚衛二、史也の妻・仁科花恵役の蓮佛美沙子、道正の元妻・浜岡小夜子役の鈴木杏、そして数々の大作を手掛けてきた日本映画界の名匠・瀬々敬久監督が登壇した。
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・香取慎吾×赤楚衛二、被害者遺族と加害者家族として対峙 “本当の償い”を問う物語
本作は、先日逝去した国民的作家・東野圭吾が2014年に発表し、累計発行部数約76万部を誇るベストセラー小説を原作とする社会派サスペンス。「少年法」の矛盾に鋭く切り込んだ「さまよう刃」から10年を経て、東野が「死刑制度」という普遍的な社会テーマに真正面から挑んだ作品だ。
WOWOWと東野のタッグは、2004年の『ドラマW 宿命』から数えて本作で10作目。2026年6~7月に行われた撮影の直前まで、東野とスタッフが一丸となって脚本を練り上げ、作品を完成させた。

完成報告会の冒頭では、2026年7月末に本作の原作者・東野が逝去したことに触れ、キャスト陣から思いが語られた。WOWOWでは、2004年の『ドラマW 宿命』から本作まで、東野作品10作を映像化。今回の中原役のキャスティングに際し、東野は「香取さんが中原を演じることで、かつて中原が持っていた“陽”の部分が垣間見えるといいと思う。ぜひ演じてもらったらいいと思います」と期待を寄せていたという。それを受け、香取は「そのお話を聞いて、とてもうれしく思いました。いつの日か先生にお会いできるのかなと思っていたので、とても残念ですが、先生が喜んでくれるような作品になるよう自分も頑張りました」と語った。
そして、学生時代に多くの東野作品に触れていたという赤楚は、「まさか自分が東野先生の作品に出演させていただけるとは、当時の自分からしたら信じられないくらいうれしいこと。お会いできることはかないませんでしたが、作品に携われるのは感謝しかないです」と語った。
東野作品への参加は今回が初めてという蓮佛は「制作陣といろいろなやり取りをされたと聞いていたので、先生の想いが作品ににじんでいたらいいなと思います」、同じく初参加となる鈴木も「今回、演じてみて改めて先生の作品の持つ奥行きやメッセージに感動しました」と、それぞれ思いを寄せた。

その後、完成報告会は本作についてのトークセッションへ。衝撃的な出来事を機に人生が変わってしまった主人公・中原を演じた香取は、「台本を読んだときに、重くのしかかるものがありました」と語り、「現場でも、その重さにやられないように背筋を伸ばして立ちむかっていかなければいけなかったので、演じるうえでは、日々そのつらさに踏ん張っていた感じです。演じた中原もどんなにつらくても生きなければならない。そこが撮影現場での僕とリンクしていたように思います」と振り返った。
一方、赤楚演じる史也は、義理の父が殺人犯となったことで“加害者家族”として苦悩していく役どころ。「史也は、とにかく真面目。それゆえに“加害者家族”という責任をすべて背負ってしまうキャラクター。罪の意識がべたっとこびりついている感じがありました」と説明しつつ、「義理の父親が殺人を犯してしまったという申し訳なさをちゃんと持ちながら、周りとちゃんと対峙していかなきゃいけない。立っているのが苦しい撮影でした」と回想した。
今作が初共演となる香取と赤楚。真逆の立場で対峙する関係性とあって、赤楚は「香取さんに『初めまして』と挨拶したときに『あ、今回は被害者遺族と加害者家族という役どころの線引きがちゃんとあるんだな』と感じました」と語った。
香取は「そんな状況でも、初対面のときは『かっこいい!』と思いました。赤楚くんは、かっこいい子です」と笑顔を見せ、赤楚は思わず照れ笑い。

共演シーンは深刻な場面が多く、現場ではあまり話ができなかったというが、赤楚のクランクアップの日にはハグをしあったという2人。香取は、その後もう少し赤楚と話そうと後を追ったものの、すでに車が走り去るところだったというエピソードも披露。「赤楚くんを追いかける前に、トイレに行っちゃったんですよね。車を見送りながら『トイレ、行かなければよかった!』と思ったんですよ(笑)」と茫然とする様子をコミカルに再現し、周囲を笑わせた。
そんな2人の芝居について、瀬々監督が「香取くんは、現場の雰囲気を感じながら役を作り上げていく瞬発力がすごい。(石原)裕次郎さんや勝新太郎さんのような、受けの芝居がスターだなと感じました。赤楚くんは、本人がそこにいるようなたたずまいなのに、ある一瞬に沸点があって、虚構度が一気に上がるのが印象的でした」と語る一幕もあった。
また、中原の元妻を演じた鈴木は、香取と子役時代以来の共演。香取が「何十年ぶりの共演だけど、あのころの思い出があったから、今回の夫婦につながるものがあった」と語ると、鈴木も大きくうなずきつつ、「隣に慎吾さんがいらっしゃると小さいときの自分に戻ったようになる。すごく頼もしかったです」と笑顔を見せた。
物語は、鈴木演じる小夜子が殺されたことで大きく動き出す。瀬々監督によると、小夜子は“裏主人公”のような役柄だという。鈴木は「予期せぬところで、人格も人生も変わってしまった人。台本を読んだときにダークヒーロー的な印象を持ちました。これしか生きる道がないんだという切迫感を持って演じていたように思います」とコメントした。

そして、ピエール瀧演じる父が身勝手な理由で小夜子を殺害し、加害者家族として追い詰められていく花恵を演じた蓮佛も、「ほぼつらい場面ばかりでしたけど、想像していたよりも負荷が少なかったなと。赤楚くん演じる史也の存在がすごく大きかったんですよね。常に心のどこかで史也のことを核として持っていたからこそ、花恵として立つことができました」と、その胸の内を明かした。
また、現場では赤楚の天然っぷりにも助けられたという。「『空気清浄機を間違えて2台買ってしまって、キャンセルできなくて。どうしたらいいと思います?』と、突然聞かれたりして。作品とのギャップがすごくて、それに癒されました」と蓮佛が明かすと、香取からも「かわいいなぁ」という声がかかり、赤楚は「恥ずかしすぎる…」と一言。
赤楚との和やかなひとときがあったからこそ、役に飲み込まれすぎずに「芝居に集中できた」と語った蓮佛。特に印象的だったシーンとして赤楚が「お父さんとの3人のシーン」を挙げると、蓮佛も「分かる。すごい緊迫感でしたよね」と大きくうなずいた。「ピエール瀧さんの作り込みがすごくて。きつかったですね」と語る赤楚に、蓮佛も「職人でした。かっこよかったです。仲のいい親子役を演じてみたくなりました」と振り返った。
その後、現場での瀬々監督について、「よく動きまわっている」という香取をはじめ、キャスト陣からさまざまなエピソードが飛び出した。「モニターがない時代からやっているから、なるべく現場の空気を吸いたいとうろうろしているんですよ。もうクセですね」と瀬々監督は苦笑い。座組の雰囲気が垣間見られる一幕となった。

また、タイトルの「十字架」にちなみ、現在プライベートで重圧に感じている「やりたいのにやれていない」ことについての質問も。「いろんな思いを背負って監督をやっていること。自分の職業が“十字架”」だという瀬々監督に続き、鈴木は「今、長野に住んでいるんですが、雨続きなこともあって大幅にスケジュールがずれてしまって。薪割りが終わっていないこと。窓から見える丸太の山が重圧になっています」と、蓮佛も「早寝早起き。お休みの日、朝活したいなと思っても寝ちゃう」と回答した。
そして、「30代になって体のことを気にするようになった」という赤楚が挙げたのは「料理」。前日もカレーを作ったそうだが、「作っただけでお腹いっぱいになっちゃって。食べずに冷凍したんですけど、それをいつ食べるんだろうって」とコメントした。
香取も「2階分くらいだったら、エレベーターではなく階段を使うこと。どうしてもやれないんですよね」と、健康にまつわる「十字架」を告白。「スタッフと一緒のときはエレベーターを使うほうがいいかなと思ったりするんですけど、草なぎ剛くんは一人で階段をぴょんぴょん上がっていく。どっちがいいのかなと思ったりします(笑)」と、香取らしく笑いを交えて語った。
報告会の最後には、それぞれが本作の見どころを語った。瀬々監督は「答えがなかなか見つからないテーマに挑戦した作品。人間ドラマの一方で、ミステリーとしても成立するよう作ったつもりです」とコメント。

鈴木は「完成した2話までを見ましたが、回を追うごとに印象が変わっていく感じがありました。答えが明確に出し切れないものを扱っているドラマです。今の時代は、善悪を早く決めたがるような風潮がありますが、それって、あやういことだよねと撮影をしながら感じました。分からないからこそ考え続けることが大事なのかなと。それぞれの受け止め方で感じていただけたらうれしいです」と語った。
蓮佛は「何をもってして償ったと言えるのか。10人いたら10通りの答えがあるでしょうし、もしかしたら答えなんてないのでは、と思ってしまうようなテーマに真っ向からむきあった作品です。フィクションではありますが、自分だったらどうするかなと、自分と対話しながら、そして一緒に見た人と『どう思った?』と会話したくなるようなドラマになっています」とコメント。
赤楚は「被害者遺族と加害者家族の問題、罪とどう向き合っていくのか。そして、死刑制度について。僕たち自身もお芝居をして苦しくなるシーンがたくさんありました。心身けずって作り上げたと言うと重たく聞こえるかもしれませんが、ミステリーとしても面白い作品です。あっという間に見ていただけるものになっています」とアピールした。
香取は「ニュースでは10秒で終わる事件も、その先に人生が壊されてしまう人がたくさんいて。事件を乗り越えて前を向いて生きている人もいて。ニュースを見ているだけではわからないような深い部分がたくさん詰まった作品です。見ているときに息をするのを忘れないようにしてください。僕も見ていて息をするのを忘れてしまったんですけど、それくらい物語に入ってしまうと思います」と語った。
そして、香取が改めて「一人でも多くの方に見ていただけたらうれしいです」とメッセージを送り、完成報告会を締めくくった。
『連続ドラマW 東野圭吾「虚ろな十字架」』は、2026年9月6日22時よりWOWOWにて放送・配信(全4話)。
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