高橋文哉「目でも耳でも心でも楽しめる作品」 人生を見つめ直す『クスノキの番人』の余韻
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天海祐希らと語られた“受け取って、次へ渡す”物語の力
東野圭吾原作作品として初のアニメーション映画となる『クスノキの番人』が、2026年1月30日に公開される。これに先駆け、完成披露試写会舞台挨拶が開催され、主演の高橋文哉をはじめ、天海祐希、齋藤飛鳥、宮世琉弥、大沢たかおら豪華俳優陣と、伊藤智彦監督が登壇した。
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理不尽な解雇の末に逮捕された青年・玲斗。人生を諦めて生きてきた彼が、見知らぬ伯母・千舟から命じられたのは、月郷神社に佇む「クスノキの番人」になること──ここから、彼の運命が大きく動き出すこととなる。
作品を楽しみに待つ観客の温かな空気が会場を包むなか、舞台上の白幕が振り落とされると、人々の祈りが集まるかのようにキラキラと煌めく大きなクスノキがそびええ立ち、豪華声優陣と監督が一挙に登場した。
あらゆる名作を世に届けてきた東野圭吾原作が、初のアニメーション映画となった『クスノキの番人』。本作の監督を務めた伊藤が、改めて映画化しようと思ったきっかけや本作との出会いについて問われると、「原作が出たのは2020年で、その直後に読んで『やりましょう』となりました。東野先生の小説でもファンタジー度数が高いので、実写よりもアニメでやった方が良いと思ってやらせて頂きました」と、作品を手がけた経緯を振り返った。
さらに、「なるべく派手な画と、キャラクターを活き活きと描く、日常の景色も楽しく描く、最後のクライマックスは盛り上がるような、アニメならではの表現を使った構成を心掛けました」と、映像表現へのこだわりを明かす。
また、玲斗を演じる高橋は、出演が決まったときの気持ちについて「東野先生の初アニメーション作品にすごく惹かれた自分もいれば、凄くドキドキした自分もいて。そんな中で選んで頂いたことが嬉しいなと率直に感じたのと、この作品をやらせていただいて、終わった後に自分は何を感じるんだろうって…そこを大切にしたいなと思いました」と、期待と緊張が入り混じった当時の心境を語った。
続けて、「原作を読ませて頂いて東野先生が描く小説の文字1つ1つに、情景描写がすごく丁寧で魅力的に描かれていて、1人1人のキャラクターを愛させる能力が文にあるというか。それぞれのキャラクターに感情移入できるからこそ、こう、どんどん読み進めていける。やはりそこは東野先生が作り上げる小説の大きな魅力なのだなと思いました。そんな作品がアニメーション映画になると、どういうものになるんだろうとワクワクしていました」と、東野作品ならではの深い魅力について熱く語った。

本作への出演にあたり、伊藤監督から手紙をもらったという天海は、「本当に情景が自分の中でふわっと広がるような東野先生の文章で、この中の千舟さんという方を真摯に演じられたらいいなと思っていました。私も原作から“何か”を頂いたので、それがちゃんと見てくださった皆さんに伝わるといいなという思いで声を入れました」と、募る思いを語った。
また、大沢は「本当に素晴らしい台本で、すごく心に染みる。心に手を当ててみると、それぞれのキャラクターに共感できるような素晴らしい原作だったなと思いました」と、物語が自然と胸に迫ってくる本作の魅力を語った。

佐治優美役の齋藤飛鳥、大場壮貴役の宮世琉弥は、今回オーディションを経て、声優キャストに抜擢された。齋藤はオーディション当時を振り返り、「声優をやったことがなかったのでオーディションは初めてでしたし、東野作品初のアニメということでオーディションに参加するだけでも記念になるかなという気持ちでした。当日は監督に指示を頂いて、特に手ごたえもなく…優しくもなく…(一同笑い)」と振り返る。

すると伊藤監督は「それが良かったんですよね。『いたいた!』と思って僕は心のなかでガッツポーズをしていました」と、実は絶賛の演技だったことを明かした。
これを受け、齋藤は「本当に手応えがなかったもので…人生の思い出だなと思っていたら急にお知らせをいただいたので、すごく嬉しかったです」と、ほっとした表情を見せた。
宮世もまた、「僕も手ごたえゼロで、絶対にオーディション終わったらマネージャーさんと電話するっていうルーティンがあるんですよ。今回のオーディションだけは『僕、絶対落ちたんで』と言ってしまったぐらい自信がなくて。でもこうしてオーディション受かりましたっていう連絡が来て、驚きました」と当時を回想。キャスト陣自身の手応えとは裏腹に、伊藤監督が抱くキャラクター像にぴったりと重なる演技だったことから、実力派の声優陣がオーディションで選ばれたようだ。
アフレコ時に印象に残っている出来事について問われると、高橋は「天海さんとのシーンで、伊藤監督が『面と向かってこのシーンはやってみましょう』となって、天海さんのお顔をみてアフレコをしていたのをよく覚えています。大きいスタッフさんがいて、取っ組み合いをしながらカメラを回して、その表情づくりも作画に活かしたんだよ、という話もして頂きました。普段のお芝居に近い状態でやらせて頂けたのもありがたくて、作画として僕が作り出す表情を少しでも玲斗に吹き込めたのがすごく嬉しかったです」と、貴重な制作秘話を語った。
さらに、アフレコ現場には原作者・東野圭吾が訪れる機会もあったそうで、高橋は「ブースの中でお話をする時間があった時に、天海さん発信でどういう風にこうキャラクターを作られているのかという話を目の前で東野先生にして頂いて。だからこんなにも見ていて情を動かされるんだなと感じたのは、すごく覚えてますね」と、東野作品ならではの魅力に気づいた瞬間を振り返った。
天海もまた、「東野先生の原作で1作、出演させて頂いたことがあるのですが、演じるにもこう流れがあって。なぜこんなに共感というか、感情が理解できるんだろうと思って質問させて頂いたら、川には感情にも流れがあると。それを食い止めたり、せき止めたりしないように、脇道に逸れないようにしているって仰っていて、そういうことなんだと」と、東野との会話を通じて、すべての人の心に沁みる東野作品の奥深い魅力を熱弁した。
本編を鑑賞した高橋は、「圧倒されましたね、本当に。アフレコの時は絵が動いてなかったりとか、まだ色が入ってない段階でも見てて感動してましたが、完成形を見た時に、色でも楽しめるし、映像美ももちろん、音楽も合って。だから僕は見てすごく感じたのが、“目でも耳でも心でも楽しめる作品”はこういう作品なんだなっていうのを感じました。監督が仰ったように、ファンタジー要素もありながらも、どこかにこんなものがあるのかなと思わされるリアリティと作品の表現に圧倒されながら、あっという間に終わりました」と、感無量の様子を見せた。

また、天海は「びっくりするくらい泣いてしまって。うまく言えないんですけど、きっと誰の心の中にもクスノキがあるんだろうなと…何かを受け取って誰かに伝えられたらいいなと思いました」と、今にも涙しそうな思いを語った。
本作のタイトル『クスノキの番人』にちなんで、「●●の番人」だと思うものを問われると、登山にハマっているという宮世は「山の番人」、大沢は「本当にこのメンバーや作品が大成功するような番人の一人でいたい」と、それぞれ“番人”を発表し、会場からは大きな拍手が贈られた。
齋藤はお風呂をぴかぴかにすることが好きだという理由から「お風呂の番人」、天海は自分を戒めつつ頑張りたいという思いを込めて「天海祐希の番人」と回答。さらに高橋が「蓋の番人」と語ると、「自分の中で心に蓋をする瞬間を使い分けてることがあるなと思ったので、クスノキのような寛大の人に全て受け止めてもらいたいなと思って過ごしています」と、思わぬ胸の内を明かした。すると、すかさず天海が「一緒に(蓋を)開けますか」と応じ、息の合ったやり取りで会場を和ませた。

最後に高橋は、「この作品のお話をいただいた時に、長編アニメーション初主演ということで、どうして今の自分にこんな贅沢なお声をかけて頂けるんだろうと思いながらお話を受けさせて頂きました。玲斗がクスノキの番人に選ばれ、玲斗が千舟さんやそれぞれのキャラクターと出会い、成長して、“クスノキの番人”としての覚悟や責任を感じていく物語を演じる中で、僕自身も天海さんをはじめとするキャストの皆様と、伊藤監督をはじめとするスタッフの皆様に本当にたくさんお力添えをいただいて作り上げることができた、役者・高橋文哉としての本当に大切な一作になっていると思います。『クスノキの番人』をこの世で1番最初に見るのが皆さんなので、最後は僕らスタッフ、キャストが作ったものを皆様の手で完成させて頂ければなと思います」と、一言一言噛みしめるように本作への強い思いを語った。
その言葉に応えるように、観客からは盛大な拍手が送られ、完成披露試写イベントは幕を閉じた。
上映後の会場は、あまりの感動に涙を浮かべる観客であふれ、誰もが自身の人生や大切な人の存在を思い浮かべながら、本作がもたらす感動と温かな空気に包まれていた。そこへ、高橋文哉、天海祐希、伊藤智彦監督が登壇した。
高橋が「皆さんが1番最初に見た方なので、僕が今ほんとに聞きたいのは、どうでしたか?」と問いかけると、割れんばかりの拍手が会場に鳴り響く。続けて高橋は、「このお話いただいた当初から今日まで、皆さんに届く日をずっと待ちわびている自分と、少し怖さを持っている自分と戦いながら今日を迎えましたが、皆さんの温かい拍手に救われました。皆様が今日感じてくださったことを、家に帰って、自分の身の回りの人だったり、近くにいらっしゃる方々と繋がりや、目で見えるものだけじゃなくて心と心で通じ合えるような作品のきっかけとして、この『クスノキの番人』が架け橋になれたらすごく嬉しいです」と語った。
天海は「楽しんでいただけたでしょうか。たくさんの人が心を込めて作った作品です。皆さんの心にもクスノキがあると思います。それをどんどん成長させて、たくさんの人と繋がって、何かを伝えていっていただけたらなと思います。この作品が本当どんどん成長することを心から願っています」と、観客一人ひとりの表情を見つめながら思いを語った。
また伊藤監督は、天海祐希演じる柳澤千舟のキャラクターをかっこよく描きたかったと明かしつつ、彼女のセリフ「『おろかですね』を流行らせたい(笑)。皆様のお力が頼りです」と呼びかけ、会場の笑いを誘った。
ここで、まさかのサプライズゲストが登場。原作者・東野圭吾が舞台に姿を現すと、会場から驚きの声が上がった。東野は「みなさんこんにちは。こういう場に出るのは20年ぶりになります。大事なことは今日みなさんがどう感じてくださったのか、お客さんがどれだけ満足したか、そういうことを気にしながら、宣伝を応援したいと思います」と、強い思いを言葉に込めた。
さらに本作では、東野圭吾原作作品として初となる入場者特典として、書き下ろし小説「クスノキの裏技」の配布が決定している。これについて東野は、「作品を見た人のために書いています。見たらわかるように社長(柳澤将和)の話が少しでてきます。映画を見ないと面白くないですから、そのようにみなさんみてください」と語った。
小説では、玲斗や千舟と深く関わる千舟のはとこ・柳澤将和の過去にまつわるエピソードが描かれ、原作小説や映画では触れられなかった、知られざるクスノキの力の“裏技”も明かされる。感動のラストのあとに、劇中では描かれなかった物語に触れることで、鑑賞後の余韻がより一層胸に広がる1冊となっており、こちらにもぜひ注目してほしい。
『クスノキの番人』は2026年1月30日より公開。
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