『スウィート・シング』ロックウェル監督の父娘インタビュー公開

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2020年ベルリン国際映画祭にて。左から、監督の妻で母親役のカリン・パーソンズ、ラナ・ロックウェル、アレクサンダー・ロックウェル、マリク役のジャバリ・ワトキンス、ボー役のML・ジョゼファー
2020年ベルリン国際映画祭にて。左から、監督の妻で母親役のカリン・パーソンズ、ラナ・ロックウェル、アレクサンダー・ロックウェル、マリク役のジャバリ・ワトキンス、ボー役のML・ジョゼファー

主演を務めた娘ラナとともに語った製作秘話

米インディーズ界のカリスマとして一世を風靡したアレクサンダー・ロックウェル監督の25年ぶりの日本劇場公開作『スウィート・シング』が全国で公開中だ。

この度、ロックウェル監督と同作の主演で監督の実の娘であるラナ・ロックウェルのインタビューが、監督や出演者らのスペシャルフォトとともに公開された。

同作は、頼る大人がいない15歳の姉ビリーと11歳の弟ニコ、そしてその家族の物語。主人公を監督の実の娘ラナと息子ニコが演じ、スーパー16ミリフィルム撮影のモノクロとパートカラーの映像はじめ、一貫してインディーズにこだわり続けてきたロックウェル監督らしい映画愛あふれる一編となっている。

インディーズ作品好きや映画ファンを中心に同作を絶賛する声が相次ぎ、11月1日発表の「10月第5週公開映画の初日満足度ランキング」(Filmarks) では第1位を獲得した。

普段は優しいが酒を飲むと人が変わる父アダム。家を出て行った母親イヴ。頼る大人がいないビリーとニコの姉弟。ある日出会った少年マリクとともに、彼らは逃走と冒険の旅に出る! 世界はとても悲しい。でも、幸福な1日はある。その1日がずっと長く続きますように。すべての大人に子ども時代のきらめきを思い起こさせ、ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門で最優秀作品賞を受賞した。

ロックウェル監督と、主役のビリーを演じた実の娘でもあるラナ・ロックウェルが、ニューヨークの自宅で取材に応じ、ロックウェル監督の映画作りの秘密と、今は18歳になったラナのみずみずしい演技の秘密に迫った。

◆アレクサンダー・ロックウェル監督&主演ラナ・ロックウェル スペシャル父娘インタビュー

──この映画をつくろうと思った理由は?

監督:この映画の数年前に、娘のラナと息子のニコを主役にして『Little Feet』という映画を撮った。当時、僕たち家族はロスに住んでいたんだけど、ハリウッドでは思うように映画を撮れなくて、純粋な映画づくりに戻ろうと思ったんだ。自分の資金で、今一番撮りたいと思うものを撮ってみようと。それがラナとニコを撮ることだった。その後、僕らはニューヨークに戻ったんだけど、ラナの助言もあって、もう一度2人と映画を作ってみたいと思った。それがきっかけなんだ。

──ラナさんは『Little Feet』の後は、演技を続けていたのですか?

ラナ:『Little Feet』の撮影時は7歳でした。あの頃はまだ、映画撮影と言っても、何か遊びをしているような気持ちでしたけど。その後は、父の学生たち(ロックウェル監督はNY大学大学院で映画を教えている)の短編に出演したことがありますが、撮影は1日か2日だったので、『スウィート・シング』のように演技に打ち込んだのは初めてです。『スウィート・シング』を撮影していたのは15歳になった時で、今は18歳です。

──監督から見てのラナさん、ラナさんから見ての監督について教えてください。

監督:娘の前で言うのは嫌なんだけど、実はラナを魅力的でなく撮る方が難しいんですよ。彼女はカメラに愛されているタイプの人間。例えば、往年の名女優のエヴァ・ガードナーのように。ラナだけでなく、弟のニコはマーロン・ブランドのようだった。2人がこんなにもプロフェッショナルとして映画の現場にいるのを誇らしいと思った。

ラナ:父のことは既に信頼しているので、わざわざ監督との信頼関係をゼロから築かなければいけない、ということはなかったのでそれは良かったです。多少の意見の食い違いや口論はあっても、安心して身を任せることができました。この映画では心の全てをさらけ出さないといけない場面もあったので、監督が父なので安心してできました。

──この映画はほとんどが白黒で、部分的にカラーがありますが、その理由は?

監督:僕の子どもの頃の避難場所は映画館で、そこで僕が見ていたのはたくさんの白黒映画だったんだ。黒澤明の『七人の侍』を見たのは18歳だったかな。僕はサムライになった夢を見た。その夢は白黒だったんだ。それである日思った。素晴らしい写真集の多くは白黒なんだから、映画が白黒だっていいじゃないかって。それで僕は白黒映画を撮ることが多いんだ。部分的にカラーなのは、フィルムで撮影したからだ。今では良質な白黒フィルムがもうないので、カラーフィルムで撮って、後からラボで白黒にするんだけど、ある日、偶然、色を抜く前のカラーのフィルムを見てしまった(笑)! それは、バスルームの中でビリー(ラナ)が夢の中のビリー・ホリデイに出会うシーンなんだけど、その色彩の美しさときたら!まるで命が爆発するような感覚だった。それで、ビリーの想像力が自由になっている時をカラーにしてみようと思ったんだ。

──映画には、ヴァン・モリソン、ビリー・ホリデイ、カレン・ダルトン、ブライアン・イーノ、シガー・ロスなど音楽ファンにはたまらない数々の楽曲が使われていますが、すべて監督が選曲したのでしょうか?

監督:はい。これらの音楽は私自身そのもので、私の魂を作っているものですからね。でも音楽会社は小さい映画に曲を与えたがらないので許可を取るのが大変でした。例えば、ブライアン・イーノのマネージャーが日本に住んでいると知って、彼に懇願し、手紙をたくさん書いたり。とうとうマネージャーから「分かった分かった」と返事が来て、アーティスト自身も使用を認めてくれたんですよ。ヴァン・モリソンも、カレン・ダルトンやビリー・ホリデイの遺産管理団体も、みんなこの映画を気に入って音楽を使わせてくれた。運の良さもあると思いますが、決して諦めないことですね。

──日本では25年ぶりの新作劇場公開となりますが、日本に対してどのようなイメージをもっているでしょうか。

監督:日本映画は、構図や、人間の描き方など、僕の映像作家としてのあり方の多くを形作ってくれたものなんだ。小津監督、溝口監督、黒澤監督の影響は色濃くうけている。現代の監督でいうと是枝監督の作品は「自分の“映画の兄弟”がこれを作っているんじゃないか」と思いながらいつも見ているよ。

ラナ:私も父と一緒に子どもの頃から色々な“古典”を見てきているので、日本映画は潜在意識のどこかに刷り込まれていますね。

監督:おとぎ話を聞かせるように、子どもたちとずっと映画を見てきたよね。

──最後に、日本の観客にメッセージをお願いします。

監督:この映画は、希望と喜びを届けるアメリカからの手紙のようなものだと感じてもらえたら嬉しい。アメリカは今、ネガティブな感情に苛まれていて、怒りや憎悪とかそういうものが蔓延している。そんな世の中を生きなければならない子供たちには過酷だと思う。でも一方でこの映画に登場させたビリー・ホリデイのように、過酷な少女時代を生き延びた“希望の星”がいる。アメリカのみならず、世界にも”希望”はそこかしこにあるはず。そんなメッセージを受け取ってくれたら嬉しいです。

ラナ:この映画を見てくださる日本の観客の皆さんと心は共にあります、とお伝えしたいです。ビリーの喜びや輝きを感じ取ってくれれば嬉しいですね。

『スウィート・シング』は現在、全国で公開中だ。

INTERVIEW