前編/父・ジョージ秋山の原作マンガを映画化した秋山命が語る、父への思い

#映画作りの舞台裏

『捨てがたき人々』のプロデューサーをつとめた秋山命氏
(C)2012「捨てがたき人々」製作委員会
『捨てがたき人々』のプロデューサーをつとめた秋山命氏
(C)2012「捨てがたき人々」製作委員会
『捨てがたき人々』のプロデューサーをつとめた秋山命氏
(C)2012「捨てがたき人々」製作委員会
『捨てがたき人々』
(C)2012「捨てがたき人々」製作委員会

人間の業と欲をあぶり出した
『捨てがたき人々』を映画化

「恋子の毎日」や「浮浪雲」といったポジティブで明るい作品に目を向けられることが多かったが、2000年代に入って「銭ゲバ」や「アシュラ」が映像化され、人間の暗部を描いた作品にスポットが当てられることが顕著になった鬼才漫画家・ジョージ秋山。今回、人間の業と欲をあぶり出した「捨てがたき人々」が大森南朋、三輪ひとみ、美保純ら共演で映画化された。

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大森が扮する主人公の狸穴(まみあな)勇介は不細工で自堕落でセックスのことばかり頭をもたげるどうしようもない男。彼が、三輪が演じる、やはり容姿にコンプレックスがあり新興宗教に救いを求める京子と出会い、なし崩しに家庭を持つようになる人生模様が綴られる。

本作の取材場所に、「出がけにオヤジにつかまっちゃってさぁ……」と少し照れながら現れたプロデューサー兼脚本担当の放送作家・秋山命(いのち)氏は、ジョージ秋山の実子でもある。秋山氏は、父親・ジョージ秋山のほとんどの作品の映像化を希望しているという。特に、いままでクローズアップされてこなかった隠れた名作にも力を入れたいと思い、その候補のなかに「捨てがたき人々」があった。そんなとき、ある人物との出会いが本作の映画化を大きく動かすこととなった。その人物というのが映画版『捨てがたき人々』の監督を手がけた榊英雄だ。

秋山氏は、あるパーティ会場で榊監督と出会い、榊監督がジョージ秋山の作品ファンであり、お互い昭和45年生まれの同世代ということもあり、意気投合。そのまま三時間も立ち話で話し込んだ。そのときは具体的には「捨てがたき人々」の映画化の話は出なかったという。その後、また会おうと言っても、社交辞令であったり立ち消えとなることが往々にしてあるこの業界で、ふと思い立った秋山氏が榊監督に電話をすると、なんと榊監督も秋山氏に電話をかけていて話し中だったという出来事が! 運命的なものを感じた秋山氏は打ち合わせを兼ねて榊監督とすぐに飲みに行ったのだとか。

さらに、その後、「捨てがたき人々」を未読だった榊監督から秋山氏に「読んだよ、やろう」と端的な連絡が入り、秋山氏も「おう! いいよ」と応えて映画化が本格的に始動した。ときは『銭ゲバ』のテレビ放映もスタートし、いい追い風が吹き始めた頃だった。

当のジョージ秋山はというと、「捨てがたき人々」が映画化されることを知ったのはクランクイン直前。息子の秋山氏から聞かされた。秋山氏いわく、ジョージ秋山は常に前に向かって突き進むタイプで、昔手がけた作品は彼にとっては過去のものでこだわりはない、というところらしい。その潔さもまたジョージ秋山の人となりを表しているようだ。…中編へ続く(文:入江奈々/ライター)

『捨てがたき人々』は全国順次公開中。

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