【週末シネマ】『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』監督が再び描く永遠の命の孤独

『ビザンチウム』
(C) Parallel Films (Byzantium) Limited / Number 9 Films (Byzantium) Limited 2012, All Rights Reserved
『ビザンチウム』
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『ビザンチウム』
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『ビザンチウム』

トム・クルーズとブラッド・ピットの共演が話題を呼んだ『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』から約20年。同作のニール・ジョーダン監督が再びヴァンパイアの物語を手がけた。主人公は美しき青年2人から、妙齢の美女2人に変わったが、永遠の命を与えられたがゆえの孤独と苦悩、愛というテーマが共通項となって、コインの裏表のような趣もうかがえる。

『ビザンチウム』シアーシャ・ローナン インタビュー

舞台はイギリスの寂れた海辺の町。季節外れのリゾートの寒々とした風景が広がる町に、16歳の少女・エレノアと8つ歳上のクララが流れて来る。彼女たちは何者かに追われ、放浪している。各地を転々としているのは、彼女たちが不老不死のヴァンパイアだから。たとえ誰かと心を通わせたとしても、相手が人間である限り、時の流れという障壁が立ちはだかる。16歳の姿のまま、200年分の孤独を抱えるエレノアは、誰にも明かすことのできない自身の物語を書き連ねては破り捨てる日々を送っていた。エレノアを守るためには手段を選ばないことから、歳の離れた姉か、友人か、それとも……と様々な想像をかきたてるクララは、妖艶で生活力に長けた女性。たどり着いたばかりの町で、すぐに天涯孤独の男をつかまえ、彼が所有するホテル「ビザンチウム」を新居にする。

この町でエレノアは1人の青年・フランクと出会う。白血病を患う彼もまた寂しさを抱えて生きていた。彼との禁断の恋、自らを語りたいと渇望する心、他者の庇護から独立したいという欲求に突き動かされる思春期の少女の成長物語という側面も見せつつ、そこに200年という想像を絶する時間が介在することで、一筋縄ではいかない深みが加わる。なぜ彼女たちはヴァンパイアになったのか、そして彼女たちはなぜ追われているのか。そこにファンタジーだけには留まらない問題を織り込んでくるあたり、さすが『クライング・ゲーム』でアカデミー賞脚本賞に輝いたニール・ジョーダン。見事なストーリーテリングだ。引きの画で見せる海辺や野原、血の海ならぬ血の滝など、奇妙な美しさを湛えた映像にも幻惑される。

エレノアを演じるのは、『つぐない』で13歳にしてオスカー助演女優賞候補となり、『ラブリーボーン』『ハンナ』で数奇な運命をたどるヒロインを演じてきた若き演技派、シアーシャ・ローナン。今回も、16歳であって16歳でないエレノアの老成、自らを呪いながらも鮮血の誘惑に負けてしまう瞬間の恍惚とした表情などを美しく表現する。クララ役は『007/慰めの報酬』や『アンコール!!』などのジェマ・アタートン。肉体を武器に、汚れ役を一切引き受けてエレノアと苦境を生き抜く凄まじいまでの母性をたくましく演じている。フランク役は主演作『アンチヴァイラル』で注目株となったケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。『オン・ザ・ロード』のサム・ライリーが、エレノアたちの追っ手の1人で物語の鍵を握る男を演じている。(文:冨永由紀/映画ライター)

『ビザンチウム』はTOHOシネマズ 六本木ヒルズほかにて全国公開中。

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[動画]『ビザンチウム』予告編