20代の若さと50代の色香、冨手麻妙と筒井真理子“ハダカの競演”の吸引力

#アンチポルノ#映画を聴く

『ANTIPORNO アンチポルノ』
(C)2016日活
『ANTIPORNO アンチポルノ』

(C)2016日活

【映画を聴く】『ANTIPORNO アンチポルノ』/前編
枠組みをぶっ壊そうという気概に満ちた作品

鮮やかな黄色や赤で塗り固められた、生活感のまったくない部屋。そこに置かれたベッドの上で穿きかけの下着をだらしなく太腿に絡ませてうつ伏せになっている女は、小説家兼アーティストとしてブレイク中の京子。マネージャーの典子の伝える仕事をこの部屋に籠もって分刻みで片づける毎日を送っている。

「脱ぐのは園監督作品の主演で」有言実行を果たした心意気!『アンチポルノ』冨手麻妙インタビュー

『新宿スワンII』も好調な園子温監督の『ANTIPORNO アンチポルノ』は、順次公開中の「日活ロマンポルノ」リブート・プロジェクト5作の中でもインパクトという点で突出した、いかにも園監督らしい作品に仕上がっている。『愛のむきだし』や『地獄でなぜ悪い』、『TOKYO TRIBE』などで展開してきた現実と虚構の交錯する世界観を、極彩色の密閉空間に凝縮。この冒頭のシークエンスだけでも“芸術か? ワイセツか?”という、クラシック・ロマンポルノを語る上で避けて通れない論争を再燃させるに十分な吸引力を持っている。

本作の最大の話題と言えばやはり、元AKB48研修生にして園子温監督作品への出演は5度目となる冨手麻妙(京子役)と、深田晃司監督『淵に立つ』での世界的な高評価も記憶に新しい筒井真理子(典子役)の“ハダカの競演”ということになるだろう。園監督が「個性的な魅力、豊かな肉体、そして並外れた演技力を持つ」と評する冨手は、本作主演のオファーを二つ返事でOKしたそうで、初ヌードにもまったく抵抗がなかったという。いっぽう、50代半ばにさしかかり、ますますその色気に磨きがかかってきたベテランの筒井も、ヌードは今回が初めて。徹底してグラフィカルかつ対照的に映し出される両者の裸体は、若さと加齢、躁と鬱、自由と束縛、勝者と敗者など、さまざまな二項対立が散りばめられた本作のテーマの象徴だ。

そもそも日活ロマンポルノは、レーベルであってジャンルではない。今回のリブート・プロジェクトで言うなら「総尺が80分前後であること」「10分に1回は濡れ場があること」「製作費は全作一律であること」「撮影期間は1週間であること」「完全オリジナル作品であること」「ロマンポルノ初監督であること」という6つの条件をクリアしていれば何をやってもアリなわけだが、中でも本作の自由度は圧倒的。他の5作品がロマンポルノの“ロマン”というワードに多かれ少なかれオマージュを捧げているのに対して、本作はタイトルを見ればわかる通り、“ロマン”はもとより“ポルノ”すらも否定するところから組み立てられている。元来パンクな存在だったはずのロマンポルノという枠組みを再度ぶっ壊そうという気概があちこちに見て取れる。

後編「生理的にムリ、という人がいて不思議ではない〜」に続く…