「性別を超えて誰もが幸せになる権利がある」——主演・中川未悠が語る『ブルーボーイ事件』の核心

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『ブルーボーイ事件』
(C)2025 『ブルーボーイ事件』 製作委員会
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飯塚花笑監督「歴史に埋もれさせず映画を通して世に届けるべき」

第38回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門に出品された『ブルーボーイ事件』。10月27日に行われたオープニングイベントでは、主演の中川未悠をはじめ、中村中、イズミ・セクシー、真田怜臣、六川裕史、泰平、そして飯塚花笑監督がレッドカーペットに登場。11月4日には、中川未悠、前原滉、イズミ・セクシー、安井順平、飯塚花笑監督が登壇し、上映前舞台挨拶を行った。

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10月27日に行われた第38回東京国際映画祭のオープニングイベントでは、本作で主人公・サチを演じた中川未悠をはじめ、ブルーボーイ役の中村中、イズミ・セクシー、真田怜臣、六川裕史、泰平、そして本作のメガホンを取った飯塚花笑監督がレッドカーペットに登場した。

1960年代を描いた作品の世界観に合わせ、キャストは昭和レトロな装い。役柄のイメージと各々の個性を織り交ぜた衣装は、衣装部によるこだわりのアレンジが施され、イベント全体に独自の色彩と華やかさを添えた。

満員御礼で迎えたこの日。トランスジェンダー男性当事者として幼少期から“ブルーボーイ事件”を知っていたという飯塚監督は、「1960年代当時の裁判にトランスジェンダーの方々が当事者として出廷し、自分の存在をオープンに証言していたことを知って衝撃を受けました。LGBTQ+の歴史は語られて来なかったので、歴史に埋もれさせるのではなく、映画を通して世に届けるべきなのではないかと思った」と映画化の経緯を語った。

主人公サチ役の中川と、サチの元同僚・アー子役のイズミはオーディションで抜擢。中川は「芝居経験がないので“なぜ私なんやろう!?”とビックリして不思議さもあったけれど、“オーディション合格”の文字を見た時に心から嬉しかった。作品に携われて良かったと思っています」と振り返った。

イズミも「オーディションの知らせを受けた時に、なんだか私がやるような気がすると思った。合格した時は嬉しかったけれど、演技経験がないので“私で良いのか?”と手を挙げたことに対する後悔も入り混じる複雑な感情でした」と率直な胸の内を明かした。

当事者キャスティングでオーディションを行った飯塚監督は、「前代未聞のことなのでどれくらいの人数が集まるのか未知の状態だった。結果的に40人程度がエントリーしてくれた」と回想。さらに、イズミについてはSNSに投稿された一人芝居動画に心を動かされたとし、中川については「裁判の証言シーンを演じてもらった際に、中川さん自身の経験がサチのセリフに想いとして乗っている様を見て、そのセンスにビックリ。これは当事者キャスティングでしかできないことだと思った」と語った。

サチの恋人・若村役の前原は、中川とイズミの演技に感嘆。「僕自身キャラクターを作ることはほぼなくて、というのも中川さんがサチとしてその場に存在してくれたから。僕は若村としてサチさんを愛することだけでした。それは中川さんが作ってくれたこと」と感謝を述べた。

一方、サチたちを尋問する検事・時田役の安井は、「ブルーボーイたちの心を駆逐するために罵詈雑言を浴びせかける検事役で、聞くに堪えないようなセリフもあります。ただ撮影前に中村中さん、中川さん、イズミさんらとお食事をしてLGBTQ+当事者としてのお話しを聞くことが出できた。そんなコミュニケーションを通して役者としては敵ではないと理解していただいた。ちなみに時田もただのヒールではなくて、その時の彼の矜持もあるわけです。それが映画でもわかるように描かれています。そこにも注目してほしい」と見どころを語った。

『ブルーボーイ事件』

最後に主演の中川は、「幸せとは何かを問いかけてくれる温かいストーリーです。幸せになる権利は誰もが持っていて、性別問わず一人一人その形・カラーは違います。色々な方が共感していただける、登場人物一人一人の思いが沢山詰まった心温まる映画です」とアピール。

飯塚監督も「今の時代に必要な映画だと思って走り始めて今に至ります。映画をご覧になっていただければ、その意味が皆さんに伝わるのではないかと思います。1960年代の話ですが、今現在はどういった時代なのか? そこに想いを馳せていただければ、より意義深い映画になるのではないかと思います」と語りかけた。

『ブルーボーイ事件』は2025年11月14日より全国公開。