【映画を聴く】『ROMA/ローマ』前編
キュアロン監督版『ラジオ・デイズ』的な味わい
第91回アカデミー賞で、作品賞や監督賞のほか計10部門にノミネートされているアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』。Netflixが配給権を獲得したことから、いきなりストリーミングで公開というアカデミー有力候補としては特殊な位置づけにある作品ながら、口コミレベルで評価が日ごとに上昇。外国語映画賞では『万引き家族』の最大のライバルと目されている。
・勢いが止まらない! 岐路に立つ映画界の行方占う試金石『ROMA/ローマ』
『トゥモロー・ワールド』や『ゼロ・グラビティ』、あるいは『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』といった作品を手がけてきた大作&娯楽志向の監督による半自伝的ホームドラマということで、箸休めの小品だと思って見はじめるとその“重さ”に圧倒されること間違いなし。いろいろな意味でしがらみの少ないNetflixという媒体だからこそ実現できた、静かなる野心作である。
コアな映画&劇場ファンほど、Netflix配信作だから『ゼロ・グラビティ』のようなオーディオビジュアル的カタルシスは望めないと思うかもしれないが、本作も仕様そのものはこれまでのキュアロン作品に引けを取らないほど贅沢だ。映像は6K解像度の65mmデジタルシネマカメラのARRI ALEXA 65で撮影され、音響はドルビーアトモスで収録されている。Netflixプレミアムに入会している人なら、再生環境を整えることで本作の映像と音のポテンシャルを十全に引き出して楽しむことができる。
音楽も独特だ。本作には、いわゆる劇伴としての音楽はほとんど使われていないが、しっかりとした内容のオリジナルサウンドトラックがストリーミングやCDでリリースされている。何が収録されているかというと、その多くは劇中のラジオやレコードプレーヤー、テレビから流れてくる当時のラテン系の流行歌だ。メリー・ホプキン「悲しき天使」やアニマルズ「朝日のあたる家」のカヴァーなども含まれ、映画本編と切り離しても秀逸なラテンヒット曲集として楽しめると同時に、キュアロン監督版『ラジオ・デイズ』的な味わいもある。
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