音楽に注目!のクリスマス映画、厳選5本(後編)/そういえば『ダイ・ハード』もクリスマス映画だった

#映画を聴く

『ダイ・ハード』
『ダイ・ハード』

古くは『素晴らしき哉、人生!』や『34丁目の奇跡』、ミュージカルの『ホワイト・クリスマス』から、『ホーム・アローン』『ラブ・アクチュアリー』『ポーラー・エクスプレス』『あなたが寝てる間に…』『ノエル』まで。クリスマスをテーマにした映画は数多く作られているが、ここでは映像と音楽が絶妙な相互作用を見せる“「映画を聴く」的クリスマス映画”を5作品ほどリストアップしてみた。いずれも言わずと知れた名作ばかりだが、その音楽に改めて耳を傾けながら、再見してみてはいかがだろうか。

音楽に注目!のクリスマス映画、厳選5本(前編)/都市生活者の孤独をファンタジックに描く名作他

映画:『東京ゴッドファーザーズ』
音楽:「No.9」鈴木慶一
ここで言うゴッドファーザーとは名付親の意。クリスマス映画のクラシック『三人の名付親』にヒントを得て作られた故・今敏監督のアニメーション作品。クリスマスに3人のホームレスが赤ちゃんを拾うところから始まる本作では、エンディングにベートーヴェンの「第九」第四楽章の“歓喜の歌”が、鈴木慶一によるオリジナルの歌詞とヴォーカル入りでカヴァーされている。レゲエ調のアレンジに乗せて歌われる歌詞はとことんペシミスティックだが、同時にやけっぱちな楽観性で覆われた映画の内容を見事に要約してもいる。鈴木慶一は本作と同じ2003年に北野武監督『座頭市』でも音楽を担当。映像と音楽をさりげなく同期させた独特の作風で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞している。

映画:『ダイ・ハード』
音楽:「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」ヴォーン・モンロー
エンディング・テーマに起用される「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」の響きは、聴き方によっては『博士の異常な愛情』の「We’ll Meet Again」や『フルメタル・ジャケット』の「Paint It Black」あたりに通じるアイロニカルな余韻を残すが、そもそも不完全なヒーローであるジョン・マクレーンの人物造形を考えれば、これは素直に大団円と捉えてしまっていいだろう。この曲は続編となる『ダイ・ハード 2』でも引き続き使用されたが、わりと普通にヒーロー化してしまったマクレーンのキャラクターとこの曲が乖離している観が否めなかった。いまだ多くの人にとって“『ダイ・ハード』=1作目”という認識が強いのは、こんなところにも理由があるのかもしれない。

映画:『ユー・ガット・メール』
音楽:「Remember」ハリー・ニルソン
ここまでの4作品はどれも作品(あるいはシーン)とのミスマッチで効果を上げる楽曲が多かったが、ハリー・ニルソンによる「Remember」は、このラブロマンスのクリスマスの一夜を正攻法で盛り上げている。ノーラ・エフロン監督はどの作品でも音楽の使い方が上手だが、ニューヨークを舞台とした本作でも実際にニューヨーカーだったニルソンの楽曲を随所に散りばめるなど、ポップス・ファンのツボを刺激しまくる。ニルソンはかつて『真夜中のカーボーイ』の主題歌「うわさの男」を歌ったことでも知られているが、その際に別候補として用意されていた楽曲「孤独のニューヨーク」も本作の終盤で使うなど、心憎い演出がところどころに見受けられる。
(文:伊藤隆剛/ライター)

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

【関連記事】
発祥はフィンランド!? タンゴのルーツを辿る傑作ドキュメンタリー『白夜のタンゴ』
この女、ただ者ではない──観客をも翻弄し、ひざまずかせるすごい女優に驚嘆!『毛皮のヴィーナス』
音楽で認知症を改善!? 『パーソナル・ソング』に見る、音楽の心と身体への効能
詩人は胡散臭い!? 随一の詩人・谷川俊太郎の言葉から、詩と音楽、映画の結びつきを考えてみる

INTERVIEW