【元ネタ比較!】2013年原作あり映画ベスト10後編/『ゴッドタン〜』が予想外の1位に

『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』
(C) 2013「キス我慢選手権 THE MOVIE」製作委員会
『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』
(C) 2013「キス我慢選手権 THE MOVIE」製作委員会

漫画、小説、テレビシリーズ、アニメにゲームなどなど、2013年もたくさん製作された、原作・元ネタありきの映画。独断と偏見に満ち満ちた2013年元ネタ映画ベスト10を発表するとしよう。

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ポケモン映画の真髄は同時上映の短編にあり!

5位は少女マンガの映画化においてある種の正攻法をあらためて示してくれた『潔く柔く きよくやわく』を入れておこう。『ハチミツとクローバー』しかり、『僕等がいた』しかり、少女漫画の映画化というものはお尻のあたりがむず痒くて仕方のない作品に仕上がることが多い。少女漫画というメディアは独特でその世界だから成立するという聖域なのだ。しかし、雰囲気よりもありそうでなさそうな骨格を一生懸命掴み取って真正面から描くマジメな誠実さで原作ファンを裏切らない方法を編み出したところは評価すべきだろう。

堂々の4位は『ピカチュウとイーブイ☆フレンズ』だ。そんな映画あったっけ?と言ってもらっちゃ困る。『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ「神速(しんそく)のゲノセクト ミュウツー覚醒」』の併映作で、ポケモン映画に付き物の短編のほうだ。常々、メインよりも元ネタのゲームのポケットモンスターの世界を再現していると注目していた。ポケットモンスターたちだけが登場し、ポケモン語を交わしながら戯れている姿がたまらなくキュート! ゲームの電源を切ると、もしかするとポケモンたちはこんなふうに過ごしているのかもしれない、と『トイ・ストーリー』的な夢を馳せてしまう。映画として形を成すために、やたらとアイデンティティや存在理由やなんだと理屈っぽい要素を盛り込んでドラマチックに仕立て上げようとするメイン作のほうより、この短編のほうがポケモンらしく、ずっと見ていたいと思わせるのだ。

興行的にも大成功した『あの花』

さてさて、いよいよベスト3に突入。3位は小学生をトリコにするカリスマ児童書を映画化した『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』だ。ダジャレや下品過ぎない下ネタなどなど、子ども心のツボを押さえた元ネタの良さを余すところなく活かしつつ、かわいこちゃんと豪邸というゾロリの必須アイテムをプラスするという映画版オリジナルの脚色を加えて原作よりゾロリらしく仕上げるとはニクい演出。人情厚いゾロリの大活躍を映画ならではの迫力でギュッと詰まった内容で見せ、とにかくワクワクしてしまう。子どもを楽しませたいという作り手の温かい気持ちに大人も童心に帰って楽しめる1本だ。

2位にはやっぱりどうしても、テレビシリーズのオリジナル・アニメを映画化した『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を入れることに。なんなんだろう、この作品は? ご当地アニメで、ファンタジーで、ネガティブな青春ドラマで、ノスタルジックな幼なじみもので、目新しい要素はないものの、これらの合わせ技としては隙間産業的にありそうでなかったのかもしれない。いつの間にかスッと心に入り込んで切なくほろ苦く胸を締め付ける。“死んでしまった幼なじみ”であるめんまは、もう二度と会うことのない戻ることのない日々の象徴的な存在で、ただのカタルシスで片付けるわけにいかなくなる。そんな溢れんばかりのファンの想いを汲んでくれた作品への愛に満ちた劇場版には大満足! 単なるテレビシリーズの総集編でお茶を濁さず、物語もキャラクターにも厚みを持たせた吟味された編集と新作映像にまた泣かされることとなった。興行的にも大成功となったのはファンとして嬉しい限りだ。

予想外! 映画の醍醐味を味わわせてくれた『ゴッドタン キス我慢選手権』

さあ、そして今年の1位に輝くのは、なんと『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』だ。深夜バラエティのコーナー企画の映画化が1位とは自分で決めながら驚いてしまうが、元ネタを見事に劇場サイズへと昇華させた作品だ。内容は劇団ひとりがただただ美女の誘惑に負けずにキスを我慢できるかというシンプルでバカバカしいもの。しかしながら、主演の劇団ひとりはまったく展開を知らず、共演者とアドリブで物語を紡ぎ出してゆく様が実験映画っぽくスリリングだ。

爆破やアクション、ロケ撮影、カメラ台数など呆れるほどスケールでかく、著名人出演も映画版だからこその大物が顔を出し、それでいて誘惑美女は従来通りセクシー女優を起用して元ネタの良さを大いにいかしている。ハラハラどきどきの緊張感、思わず笑ってしまうほどの大規模設定による迫力、どれをとっても劇場版の名に相応しい。なによりも、見終わったあとの爽快感と達成感がなんとも映画的なのだ。公開から半年が過ぎた今でもエンディングのサンボマスターの「孤独とランデブー」と共によみがえってくる。映画とはほど遠く思えた元ネタが、その良さも損なわずにしっかりと劇場版となるところを目のあたりにするとテンションのあがること! これぞ元ネタ映画の醍醐味と言えよう。2014年もこの醍醐味を味わいたいものだ。(文:入江奈々/ライター)

2013年 原作ありき映画ベスト10

1位 『ゴッドタン キス我慢選手権』
2位 『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
3位 『映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』
4位 『ピカチュウとイーブイ☆フレンズ』
5位 『潔く柔く』
6位 『共喰い』
7位 『だいじょうぶ3組』
8位 『ガラスの仮面ですが THE MOVIE 女スパイの恋! 紫のバラは危険な香り!?』
9位 『陽だまりの彼女』
10位 『SHORT PEACE』

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