独裁国家・北朝鮮をリアルに描きすぎ出禁に! 怖い物知らずな映画監督が語る危険な潜入

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THE MOLE
『THE MOLE(ザ・モール)』
(C)2020 Piraya Film I AS & Wingman Media ApS

デンマークの奇才マッツ・ブリュガー監督が、厚いベールに包まれた北朝鮮の実態に切り込んだドキュメンタリー2作品が、今秋相次いで公開される。ムビコレでは、マッツ・ブリュガー監督のインタビューを掲載中だ。

・『THE MOLE』『ザ・レッド・チャペル』マッツ・ブリュガー監督インタビュー

10年にも及んだ潜入撮影、政府機関などの後ろ盾はナシ!

THE MOLE(ザ・モール)』(公開中)はデンマークの一般市民が、CIAさえ容易に情報を掴めなかった北朝鮮の国際的な闇取引(武器密輸)のネットワークに潜り込み、その実態を赤裸々に暴いたドキュメンタリー。元料理人のウルリク・ラーセンと架空の石油王に扮したミスター・ジェームズのコンビが、北朝鮮の関係者たちを巧みに欺きながら盗撮を重ね、闇取引の実態を明らかにしていく。

一方、『ザ・レッド・チャペル』(1127日より公開)はブリュガー監督の長編デビュー作。

異文化交流と称し舞台公演の許可を得ることに成功した監督は、韓国系デンマーク人のヤコブとシモンの2人のコメディアンと共に北朝鮮に入国。熱烈な歓迎を受ける一方、母のように接する案内役の女性によって行動は常に監視され、北朝鮮の意思で2人のコントは幾度となく修正される。そんな中、ヤコブは、金日成広場での軍事パレードに強制的に参加させられることに……

危険を顧みず、ジャーナリストとしての類稀な感性とダークなユーモアで、独裁国家のリアルを描き過ぎ、北朝鮮を出禁にまでなったブリュガー監督。

THE MOLE』では、ウルリク自ら北朝鮮への潜入の申し出があったことからドキュメンタリーの制作がスタートしたという。「実現できるとは思っていなかった。一種の実験だった」と話すブリュガー監督だが、長い目で見て費用対効果の高いプロジェクトだと思ったこと、また、このプロジェクトが私たちをどこに導いてくれるのかに興味を惹かれ映画を撮ることを決めたと話す。

そして、ウルリクと一緒に北朝鮮へ潜入できる、「偽のビジネスマンを演じられる人物」を探し始めたブリュガー監督。

「ある夜、コペンハーゲンのVEGAというナイトクラブを訪れた際、そこのバーで私はミスター・ジェームズと出会いました。彼はコカイン密売の罪で8年間服役し、刑務所を出所したばかりでした。服役中、彼は私の過去作を見てとても気に入ったそうです。だから彼はバーで私に近づき、彼の人生を私に語り始めました。間もなく私は、彼こそ私が求めていた人物だと確信しました。幸運なことに、彼も私たちの仕事に興味を持ってくれました。ウルリクと一緒に北朝鮮へ潜入できるかと私が彼に尋ねたとき、彼の最初の質問は『いつ始めるんだ?』でした」。

潜入は10年にも及び、素人2人が行うにはかなり危険なスパイ行為だったが、政府機関などの後ろ盾はなかったと話すブリュガー監督。スパイ技術を磨いた方法として、「私たちはプロフェッショナルではありませんが、“行動学習”(learning by doing)の原則に従い物事を進めていきました。アイデアを徐々に積み上げ、スパイ技術を学び、諜報活動を画策しました。最終的に、私たちはなかなかの手腕を身に着けたと思います」と教えてくれた。

ブリュガー監督は、『ザ・レッド・チャペル』が原因でスウェーデン・デンマーク・ノルウェー担当の北朝鮮大使から「良心のない犬」と書かれたFAXを送られ、罵倒を受けた。現在は北朝鮮への入国はできず、北朝鮮と友好関係のある国々への渡航は避けるように勧められているという。マッツ・ブリュガー監督のインタビュー全文はこちらから。