「死にたい」という言葉の奥に何があったのか 『マミー』二村真弘監督が京都ALS事件を追う

#ドキュメンタリー#二村真弘#京都ALS患者嘱託殺人事件

(C)『京都 ALS 患者嘱託殺人事件』製作委員会
『京都ALS患者嘱託殺人事件』
『京都ALS患者嘱託殺人事件』
『京都ALS患者嘱託殺人事件』
『京都ALS患者嘱託殺人事件』
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『京都ALS患者嘱託殺人事件』
『京都ALS患者嘱託殺人事件』

未公開DMから浮かび上がる被害者と医師の最期の対話

和歌山毒物カレー事件の深層に迫った『マミー』(24年)の二村真弘監督最新作『京都ALS患者嘱託殺人事件』が、10月31日より全国公開されることが決定。あわせて、特報予告編と2種のポスタービジュアルが解禁された。

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2020年7月23日、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う林優里さん(当時51歳)の依頼を受け、薬物を投与して殺害したとして、2人の医師が逮捕された「京都ALS患者嘱託殺人事件」。一人暮らしだった林さんは当時、眼球しか動かせず、痰の吸引や胃ろうからの食事、排せつなど、24時間の介護を必要としていた。

林さんはSNSで“安楽死”を望む言葉をたびたび投稿し、それを通じて主犯とされる大久保愉一と接触。大久保らは事前に報酬として130万円を受け取り、初対面からわずか15分程度で殺害を実行した。

その後の捜査では、大久保の過去の殺人事件への関与も浮上。メディアは過去のブログなどをもとに「ドクター・キリコ」への憧れや生命軽視の姿勢を報じ、世間からも厳しい批判が向けられた。そして25年、嘱託殺人罪などで懲役18年の刑が確定した。

・二村真弘監督最新作『京都ALS患者嘱託殺人事件』の場面写真を見る

『京都ALS患者嘱託殺人事件』

(C)『京都 ALS 患者嘱託殺人事件』製作委員会

裁判を傍聴し、「何かが抜け落ちている」と感じた二村真弘監督は、事件の取材を開始。和歌山毒物カレー事件を検証した『マミー』に続き、報道だけでは見えてこない事件の背景へと踏み込んでいく。

林さんの父親をはじめ、SNS上で彼女を知る元看護師や難病当事者、医療とケアの専門家らへの取材を重ね、その人生を掘り下げる二村監督。そこから浮かび上がる制度の未熟さや、外界から完全に遮断されるかもしれない恐怖、そして身体が訴え続ける生への渇望を見つめながら、救命を第一義とする医師がなぜ一線を越えたのか、その問いに迫っていく。

一方、二村は大久保の半生をたどるべく、母親やかつての医師仲間を訪ねる。さらに供述分析を独自に実施し、大久保が収監されている大阪拘置所へ——。

「死にたい」、その言葉の奥にあるもの。ひとりの女性の声が受け止められない社会の空白地帯で、死の直前まで続いた2人だけのやり取り。私たちが目を背け続けている何かが、未公開のDMと、それぞれが語る“事実”から浮かび上がってくる。

声の出演には京都出身の俳優・田畑智子が参加。亡くなった女性がインターネット上に綴り続けた切実な言葉を代読する。プロデューサーは『マミー』に続き、石川朋子が務める。

今回の公開決定にあわせて、特報予告編と2種のポスタービジュアルが解禁。さらに、二村監督と石川プロデューサーからのメッセージも到着した。

『京都ALS患者嘱託殺人事件』

■監督:二村真弘

亡くなった林優里さんと逮捕された医師の大久保愉一、二人が事件直前まで交わしたダイレクトメッセージを初めて目にしたとき、私は大きな衝撃を受けた。死へ向かうメッセージの交換には、二人がまるで旅行の計画でも立てているかのような、不思議な軽やかさが漂っていた。この最期の対話は、それまでの「悲惨な被害者」と「冷酷な加害者」という単純な事件像を覆す力を持っていた。二人はなぜこの結末に辿り着いたのか。真相を解き明かしたい一心で、私は取材を重ねてきた。「死にたい」という声を覆い隠す社会は、同時に「生きたい」という訴えも無いものにする可能性を孕んでいるのではないだろうか。

■プロデューサー:石川朋子

私たちは日々、テレビや新聞、雑誌などを通して数多くの事件を知るが、時間の経過とともにそれらを他人事として忘れていってしまう。今回の映画では、事件そのものだけでなく、事件の当事者となってしまった二人が、それまでにたどった時間も丁寧に見つめた。すると事件は普遍性を帯び、自分とつながる要素がいくつもあることに気づいた。自分が林優里さんだったらどうしたか。自分が大切な人から「死にたい」と言われたらどうするか。多くの人にとってそれが自分事になったとき、議論が深まっていくのだろうと思う。

『京都ALS患者嘱託殺人事件』は2026年10月31日より全国公開。