『スカイライン―奪還―』リアム・オドネル監督インタビュー

科学的な正確さよりも楽しさを優先! 若手監督が語るエンタメ魂

#リアム・オドネル

映画監督は、世界で一番楽しい仕事

地球外生命体による地球征服の3日間を描いた低予算SF『スカイライン―征服―』。予想外のヒットを放った作品の続編となる『スカイライン―奪還―』が、先週末より公開中だ。

室内劇の趣もあり、無力な人類の姿に呆然とするしかなかった前作に比べ、本作はバトル要素も満載! 前作で製作・脚本を担当し、本作で監督デビューしたリアム・オドネル監督に話を聞いた。

──日本は今回が初めてと聞きました。

監督:ええ、そうなんです。前作『スカイライン -征服-』の際に、グレッグ(・ストラウス/製作)と一緒に来る予定だったのですが、2011年の震災の影響もあって来ることができなくて。ずっとそれが心残りでした。グレッグは日本でみなさんと一緒に映画を見て、「理想的な観客だ。ああいう人たちと自分の作品を見られて嬉しい」と言ってて、ずっと来たいと思ってました。

──グレッグ・ストラウスとコリン・ストラウスは、『アバター』や『アベンジャーズ』などでVFX制作を手がけた会社、ハイドラックスを設立し、“ストラウス兄弟”として有名ですね。前作『スカイライン -征服-』の監督でもあります。オドネル監督の初来日の感想と、ストラウス兄弟からの反応を教えてもらえますか?

監督:さっきもスマホで2人とメッセージのやり取りをしてたんだけど「ここに移住したい」って書いたよ(笑)。みなさん礼儀正しく、整理整頓されててトイレもきれいだし、食べ物もおいしい。素晴らしい国だと思います。

──日本で行ってみたい場所は?

『スカイラ イン━奪還━』
(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

監督:魚が大好きなので北海道に行きたいかな。

──前作は脚本担当でしたが、本作では初めて長編映画の監督を務めました。「CEO的な立場で全体を見ていた」とおっしゃっていましたが、監督を経験された感想は?

監督:世界で一番楽しい仕事だと思ってます。映画を作るというのは「旅路」──それぞれの部門の才能ある人々と最終的にひとつの作品を作り上げる長い旅だと思います。クリストファー・クロースプという優れた撮影監督と仕事ができたことも光栄だったし、美術監督にコンセプトデザイナー、現場のスタッフ、俳優陣、スタントマン、スーツアクター、それから撮影後の編集マンや視覚効果を担当したスタッフ、一人ひとりから学ぶことがすごく多く、大きな喜びでした。
 監督として決断を下さないといけない状況もありましたが、あくまでも優秀なスタッフや俳優陣が支えてくれらからこそこの作品が出来上がったのだと感謝しています。やはり、一緒に働きたいと思えるような人間であることが大事なんですね。意識したのは、柱としてみんなが支える存在でありつつ、みんなの意見に耳を傾け、最終的にいい作品を完成させるために、一番いいアイディアを採用するということでした。

──監督ならではの苦労はありましたか?

監督:今回、脚本も手がけましたが、全体を見なくてはならないので、脚本を書いて、それを持って現場に入ると、細かい部分を見落としていることに気づくんです。「あれ? なんでこんなふうにしてしまったんだ?」とフラストレーションがたまりました(苦笑)。
 それを教訓に、いま新たに参加しているプロジェクトでは、共同の脚本家と組んでいます。客観的な視点で見てくれる存在の重要性を今回の経験を通じて痛感しました。

──前作と同じ時間軸で物語は展開しますが、ストーリーのテイストはガラリと変わりました。激しいアクションはもちろんですが、随所に親子や家族の愛情、つながりが描かれています。こうした展開に関してはどのように生み出されたんでしょうか?
『スカイラ イン━奪還━』
(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

監督:前作は高層マンションからの視点で物語が進んだので、今回は別の視点で描きたいと考え、地上レベルでの人々の視点を描くというところからスタートさせようとは当初から考えていました。そして、宇宙人の襲撃から生き残った人々が宇宙船で出会ったら、そのはクレイジーな展開に舵を切ろうとも最初から構想していました。前作と同じ時間軸の中で全く別の視点の物語が展開するという点に関しては、ヒントを得たのは『LOST』のシーズン2の『Other 48 Days』というエピソードからです。シーズン1の全体像を違う視点で描いていて、面白いと感じて、それを採用したんです。

──制作に苦労されたシーン、「ここは目を凝らしてよく見てほしい」と思うシーンは?

監督:最初は1500ショットでしたが、最終的に1700まで増えたんです。特定のシーンを選ぶのは難しいけど、宇宙船が激突するシーンかな。あと、最後のロングショットはいろんな要素が詰め込まれていて、3Dもあるし、宇宙船や小惑星などいろいろな破片が飛んでいるって意味でも難しかったです。
 好きなショットを挙げるなら、そのエンドクレジットに行く最後のシーンですね。宇宙船の中から宇宙の外を見せるシーンで、それは物語が先に続いていくようにも見えて、個人的にすごく気に入ってます。
 あと、アルファタンカーが開いて、シェパードが出てくるシーンですけど、何度作り変えてもなかなかスケール感がうまく伝わらなかったんだけど、ショーン・アルバートソンというスタッフが加わり、彼が「もう少し後ろを延ばせばいいんじゃないか?」と提案してくれて、おかげで求めていた映像が出来上がったので、そこも印象に残っています。

──科学的に正しい映像よりも、「見ていて楽しい」映像を優先する場合もあるとおっしゃっていましたね。実際、宇宙船が墜落したり、グシャッとつぶれたりするシーンはカタルシスがありますね。

監督:そうですね(笑)。激突のシーンは、煙で覆っている部分も多少はあるんですが、見てワクワクする、楽しいシーンになっていると思います。もうひとつ、重視したシーンで、タンカー同士が戦う“カイジュウ(怪獣)”のシーンなんですが、最初はもっと早い動きだったんですが、あえてゆっくりしてもらって、取っ組み合っている姿を見せるようにして、加えて、カイジュウが取っ組み合いを始めた瞬間、20%ほどズームアップし、寺院の陰に怪獣が隠れたときに少しズームアウトし、また姿を見せたときにズームインし、最後にまたワイドで見せるというふうに、インパクトをより大きくするための工夫もしているんです。

──脚本家としてキャリアを始められて、VFXを学び、こうして監督も務めていらっしゃますが、今後のキャリアについて、どんなビジョンをお持ちですか?

『スカイラ イン━奪還━』
(C)2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD

監督:今後も監督を続けたいし、脚本も書き続けるつもりだし、プロデューサーとしても活動していきたいと思います。ストーリーテリングが本当に好きだし、映画を作るのを愛しているので、ずっと続けていきたいです。いままでTVではパイロット版を1本作ったことしかないので、その道も開拓したいし、いままで培ってきたことをさらに成長させて、情熱を忘れずにもっと向上させて行ければと思っています。

──本シリーズを製作したハイドラックスの存在、位置づけを「メジャーとインディペンデントの間にある」とおっしゃっていましたが、その立場でいることを監督も強く望んでいらっしゃるんでしょうか? それともメジャーで大作を手がけたいと思いますか?

監督:チャンスをいただけるなら、僕はいつでもオープンなので、どんどん広げていければと思ってます(笑)。今まで、200万ドルから2500万ドルのバジェットまでいろんな範囲で活動してきているので、活動をインディペンデントに限っているわけでもないし、一緒に仕事をするパートナーの存在次第、ストーリー次第で何でもするし、シュワルツェネッガー、キアヌ・リーヴス、トム・クルーズといった憧れのアクションスターといつか仕事をしたいという夢を抱いていて、それが自分の原動力にもなっているので、そのためにも技術を磨いていって、いつかそこにたどり着ければいいなと思います。

リアム・オドネル
リアム・オドネル
Liam O'Donnell

1982年4月12日生まれ、アメリカのマサチューセッツ州出身。コカコーラのCMやアッシャー、50セントなどのミュージックビデオ制作でストラウス兄弟と仕事をし、『AVP2 エイリアンズvs.プレデター』(07年)では、クリエイティブ・コンサルタントとして参加。『スカイラインー征服―』(10年)には製作・脚本として参加し、本作で監督デビュー。