『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』ジェマイン・クレメント監督インタビュー

世界中が爆笑! 吸血鬼たちのシェアハウス物語を作ったコメディアン監督を直撃!

#Jemaine Clement

ヴァンパイアも、これだけ長く生きていればお金がなくなるだろう

アカデミー賞に至る賞レースで重要な位置を担うトロント国際映画祭。その観客賞を受賞したほか、世界中の名だたる映画祭で爆笑と喝采を巻き起こしたのが、ヴァンパイアの日常をドキュメンタリー風に描いた『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』だ。

8000歳を筆頭に、862歳、379歳、183歳の4人のヴァンパイアがニュージーランドの首都ウェリントンで営む奇妙な共同生活。ローテク特撮をバリバリに“駆使”したユル〜いタッチの映像が笑いを倍増させてくれる。

コメディ界の仲間、ジェマイン・クレメントとタイカ・ワイティティが共同監督をつとめた本作。ニュージーランド屈指の人気コメディアンであるクレメント監督に、本作の見どころなどを語ってもらった。

──ヴァンパイアが共同生活をしているという設置が斬新でした。この構成はどんな風に思いついたのですか?

監督:理由はいろいろあるけど、まずこの映画を作りたいと思ったときに僕らが家をシェアしていたからなんだ。それに、彼らほど長く生き続けていたら孤独にもなるだろうし、シェアしたほうがいいと思ったんだ。ヴァンパイアたちは貴族の出身だから、これだけ長い時間がたてばお金もなくなってくるだろうし、節約の為でもあるんだ。

──本作では俳優も兼務していて、862歳の拷問好きな変態ヴァンパイア、ヴラドを演じていますね。その他、183歳で反抗期の問題児ディーコン、きれい好きで口うるさい379歳のヴィアゴ、8000歳でみんなのお父さん的存在のピーターなど、ユニークなキャラクターが勢揃いしています。本作のキャラクターたちはどのようにして生まれたのですか?

監督:はじめは映画のキャラクターとしての造形からスタートしたけど、そこに人間的な特性をブレンドしていったんだ。例えば(共同監督のタイカが演じた)口うるさいヴィアゴ役には『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のイメージもあったんだけど、タイカのお母さんのキャラクターが相当入っていて彼は自分のお母さんを演じているんだよ(笑)。それからタイカはベルリンに住んでいたことがあるからドイツ語の真似みたいなことも入れたりして、自分たちのルールみたいなものを作ったんだ。
ちなみに、(シェアハウスに招き入れられる人間役の)スチューは日本に2年間住んでいたこともあるんだよ。スチューは、そのままのキャラだよ。なんでも助けてくれるし、すごくスウィートなやつで、人好きのする優しいやつだよ。短編を作ったときは、彼をそんなにフィーチャーするはずじゃなかったんだけど、その頃タイカとスチューはシェアハウスしていて、機材を運んだりするのを手伝ってくれていたんだ。ポテトを食べるシーンを撮影したときに、一緒にいた他の3人とあまりにも違ったのがおもしろかったから、人間の友だちという設定で彼のキャラクターを膨らませたんだ。

お世話好きできれい好きなヴァンパイア、ヴィアゴ。『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』より (C) Shadow Pictures Ltd MMXIV

──撮影ではほとんどがアドリブでの演技だったそうですが、役作りはどのように行ったんですか?

監督:まず、ドキュメンタリースタイルで演技をするのはとても難しいし、それぞれが自分のやりかたで表現したほうが個性が際立つしナチュラルなものになると思ったんだ。あとは、キャストにはコメディアンが多いから、僕らが書いたセリフよりおもしろいことを言ってくれるんじゃないかって期待もあったよ。

ウケてほしい! とにかく笑って!
クレメント監督が演じた古株の変態ヴァンパイア、ヴラド『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』より (C) Shadow Pictures Ltd MMXIV

──あなたが演じたヴラドはドラキュラ伯爵のモデルになった人物と言われていますが、もともとヴァンパイアがお好きだったんですか?

監督:ヴァンパイアは小さい頃から大好きで、5歳のときにたまたま夜中に目が覚めてテレビをつけたらヴァンパイアの映画がやっていたのを見てしまったおかげで、悪夢を見るようになったというのが最初の体験だよ。それから、10歳のときに僕がリーダーの「ギャング」というチームを作って、みんなでキバをつけてトランシルヴァニア訛りをしゃべりながら自分たちより若いキッズを脅すということをやっていたんだ。

──ニュージーランドでもシェアハウスは一般的なんですか? 日本では最近、若者たちの間でシェアハウスをする人たちが増えていまるんですよ。

監督:ニュージーランドではとても一般的だよ。日本ではいまトレンディなものだって聞いて、驚いたよ。

──共同生活で苦労したこと、楽しかったことは何ですか?

監督:シェアハウスでの出来事ではないけど、最近友だちの家に泊まったとき、朝起きたらパーティーみたいな状態になっていたんだ。やっぱりそういうのが一番楽しいよね。みんなで朝ごはんを食べて、歌を歌ったり、仲のいいヤツらと一緒に過ごせるのは楽しいところだけど、やっぱり難しいのは映画のなかにもあるように、それぞれによって清潔感の度合いが違うから、そこから軋轢がうまれたりすることもあるよ。家の掃除とか役割分担はシェアハウスでは問題になりがちなところだね。

──日本ではシェアハウスで恋愛するドラマが流行っていましたが、ヴァンパイアの恋愛を描くとしたらどのようにされますか?
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』より (C) Shadow Pictures Ltd MMXIV

監督:僕ら自身がシェアメイトと恋愛したことがないからわからないな。この映画を作っているときもどちらかというと、ぶつかりあいとか軋轢を重ねていくことでドラマを作っていったしね。ヴィアゴが昔の恋人のことを思い続けていたりするからそれ以外の恋愛の要素を入れる必要もなかったんだ。恋愛に発展することはもちろんあるけど、僕の周りでは起きないだけかな。

──最後に、日本の映画ファンにメッセージをお願いします。

監督:ウケてほしい! とにかく笑って!

Jemaine Clement
Jemaine Clement
じぇいまん・くれめんと

1974年1月10日生まれ、ニュージーランド出身のコメディアン、俳優、ミュージシャン。99年にニュージーランドの名誉あるコメディアンに贈られるビリー・T賞を受賞。共同監督のタイカ・ワイティティも脚本家/監督をつとめたテレビのミュージカルコメディシリーズ『Flight of the Conchords』(07〜09年)でブレット・マッケンジーとデュオグループを組み、グラミー賞を受賞。『イーグル VS シャーク』(07年)、『メン・イン・ブラック3』(12年)などに出演し俳優としても活躍。また『怪盗グルーの月泥棒3D』(10年)、『ブルー 初めての空へ』(11年)などのアニメーション映画では声優をつとめるなど、マルチな活躍を見せている。

Jemaine Clement
シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア
2015年1月24日より公開
[監督]タイカ・ワイティティ、ジェマイン・クレメント
[出演]タイカ・ワイティティ、ジェマイン・クレメント、ジョナサン・ブロー、コリ・ゴンザレス=マクエル、スチュー・ラザフォード
[原題]WHAT WE DO IN THE SHADOWS
[DATA]2014年/ニュージーランド/松竹メディア事業部/85分/PG12

(C) 2015安倍夜郎・小学館/映画「深夜食堂」製作委員会