幸せのレシピ
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マーサ

女性シェフが主人公の『マーサの幸せレシピ』と、そのハリウッドリメイク版『幸せのレシピ』。この2作品を、インテリアの観点から観直してみませんか?

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ドイツ版は、ドイツ・父系とイタリア・母系を対比

『マーサの幸せのレシピ』は、2001年公開のドイツ映画。監督はアンドラ・ネッテルベルク。

主人公のマーサ(マルティナ・ゲデック)は、腕は一流だが頑固者で心理カウンセラーの元に通っている。姉の事故死をきっかけに姪のリナ(マクシメ・フェルステ)を引き取るが打ち解けられない。しかし、陽気なイタリア人の新シェフ、マリオ(セルジョ・カステリット)にすんなりリナが懐くのを見て、マーサも次第に惹かれていく。舞台はハンブルク。バックに流れるのは粋なフュージョンだ。

ドイツ人マーサは料理を父から教わったといい、イタリア人マリオは母から教わったという。姉の別れた夫もジュゼッペというイタリア人だった。ジュゼッペを待つリナと、マリオを待つマーサ。ドイツ=様式美・厳格、イタリア=奔放・愛という対比が見える。

インテリアはシンプル&ナチュラル。マーサのキッチン

この作品で登場するマーサの自宅のキッチンは、洗練されてはいるけれど一般家庭のオーソドックスなものとはだいぶ異なり、料理人の厨房のようだ。

ただしそのオープンキッチンのコーディネートは、マーサの料理のポリシーと同じく奇をてらわずオーソドックス。壁は白のペイントとタイル貼りで、木製の棚に食器や調理器具が整然と収められている。

ダイニングも、木のテーブルにスチールパイプのチェア。リビングもホワイトの本棚にグレーのソファと、こちらもシンプルだ。

マリオはリナを喜ばせるため、マーサの家に行ってリナとふたりだけで料理を作る約束をする。そのとき、マーサのオープンキッチンを見て喜ぶマリオを見れば、プロ好みであることが分かる。もっとも、調理後グチャグチャのキッチンを見てマーサは卒倒しそうになるが……。

できたイタリアンを、床にギャッベを敷き、調理したそのままのフライパンを囲み、みんなで突っつく。マーサはその味に舌を巻き、ふたりは打ち解ける。愛の籠もった味は国境を越える、というわけだ。

カウンセリングルームのコーディネートは光と白の空間

『マーサの幸せのレシピ』には、インテリアの注目ポイントがもうひとつある。マーサが通う心理カウンセラーの家のインテリアだ。

カウンセリングルームならではの大きな窓と眺望は、相談者の気分を晴れやかにする狙いがあるのだろう。しかしやはり病院らしくて、家具が真っ白なのだ。大きな白いソファベッド。チェアも白の大きな背もたれで、カウンセラーの机もガラス貼り。ハリウッドリメイク版『幸せのレシピ』の重厚感あるインテリアとはだいぶイメージが異なる。

インテリアもウォームなリメイク版。プロ色抑えめ

一方、ハリウッドリメイク版『幸せのレシピ』は2007年公開で、女シェフの主人公(役名はケイト)をキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じている。舞台はマンハッタンだ。

相手はパバロッティが好きなイタリア人のニック(アーロン・エッカート)。最初からイケメンだし、『マーサ〜』ほど衝突せず比較的順調に仲良くなる。永らく疎遠になっている実の父を探すこともないし、学校の先生もみんな優しい。こちらは徹底したハートウォーミング作品に仕上がっている。ドイツとイタリアの対比も回避している。

ケイトの家はかなり立派なアパートで、白を基調とした暖炉がある端正なインテリアだ。キッチンは、コンロや冷蔵庫がステンレスの業務用でフライパンや鍋がたくさん掛かっている以外は、マーサのキッチンと比べるとサイズもレイアウトも随分と一般的。壁はグレーの落ち着いた印象だし、ダイニングも小さな丸テーブルが併設されているだけにすることで、家庭的なあたたかみを演出している。

ニックが娘(本作ではゾーイ)とともに料理をケイトに振る舞うシーンでは、リビングにテントを張ってラジカセを持ち込み、アウトドアでの食事に見せたが、これも『マーサ〜』と比較すると明るい描写だ。

どの部屋もナチュラルであたたかみがあるため、映画好きなインテリアコーディネーターがイベントでコーディネートの引き合いに出される作品でもあるというのも頷ける。

カウンセリングルームのコーディネートもリッチであたたか

続いてカウンセリングルームを見ていこう。

床から天井まである大きな窓のおかげで開放的なのは『マーサ〜』と同様。カウンセラーのテーブルはガラスで、椅子はハーマン・ミラーというのもイメージとしては近いが、テラスはレンガ造りで、こちらも少しあたたかみのあるイメージだ。背もたれのない大きなソファにも、レンガと同色のクッションが置かれたり、所々に配置された小物や、イームズの大きなラウンジチェアもあり、リッチなコーディネートとなっている。

オーディオとアート。趣味全開のシングル男前インテリア

『幸せのレシピ』には、実はあとひとつ、ちらっとだけ見える特徴的な部屋がある。サンフランスコに移り住んだ後のニックの家のインテリアだ。

爆音でパバロッティが鳴り響き、美術館のようにだだっ広い空間には、アート作品が並んでいる。男性シングルで好きなモノにあふれた極端なコーディネートで、ニックの人となりが全階だ。はたしてケイトはこの部屋に一緒に住めるのだろうか? ちょっと心配。

ハートウォーミングに徹したリメイク版

『マーサの幸せのレシピ』『幸せのレシピ』両作品ともテーマは共通しているように思う。

幾ら努力しても、人には自分では変えられないことがあるということ。そして、「手の込んだ料理より思い出の味がいい。母は料理の天才だと思ったが、それは自分にとっての名シェフだったのだ」(ケイト)ということ。

“幸せのレシピ”とは、自分なりに相手を思って作り届けること。裏を返せば、マーサが最後に示唆するように、ハートが籠もっていなければ何をしても伝わらない、ということでもある。(文:fy7d)