劇場公開を断念してNetflix配信へ、アニメ『泣きたい私は猫をかぶる』の新戦略に注目

#アニメ

Netflixアニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』
2020年6月18日(木)Netflixにて全世界独占配信
(C) 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会
Netflixアニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』
2020年6月18日(木)Netflixにて全世界独占配信
(C) 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会

近年、動画配信サービスは急速な広がりを見せているが、特に今回の自粛期間中はさらなる存在感を発揮することとなった。自宅でさまざまな作品を気軽に堪能できるという意味で重宝されたのはもちろんだが、いまや映画公開の新たな形にも影響を与えている。そのひとつが、最新アニメーション映画『泣きたい私は猫をかぶる』だ。

スタジオコロリド初の長編アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』

当初は6月5日からの劇場公開が決定していた作品だが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて公開が延期。その後、劇場公開ではなく、Netflixが独占で配信するという形を選択することとなった。劇場が閉鎖されたという異例の事態も要因となってはいるが、日本だけでなく、全世界へ同時に公開されることとなり、結果的には新たな広がりを見せている。現在Netflixランキングでも、『愛の不時着』や『梨泰院クラス』といった大ヒットドラマと並んで上位に入る人気を獲得している。

本作は、2018年に『ペンギン・ハイウェイ』で注目と賞賛の声を集めた新進気鋭のアニメーションスタジオ「スタジオコロリド」が手掛けた長編アニメーション映画の第2弾。物語は、中学2年生の笹木美代が、「かぶると猫へと姿を変えることができる」という不思議なお面を手にするところから始まり、想いを寄せるクラスメイトの男子とのやりとりを通して成長していく姿が描かれている。

今回、ダブル主演を務めたのは、『借りぐらしのアリエッティ』や『風立ちぬ』など声優経験も豊富な女優の志田未来と、『東京喰種トーキョーグール』や『鬼滅の刃』で知られる人気声優の花江夏樹。そのほか、小木博明や山寺宏一といった個性豊かなキャストも脇を固め、世界観を作り上げている。

主人公は中学生ではあるものの、思っていることを口に出せない葛藤や人間関係における悩みなど、思春期の子どものみならず、大人にも響くポイントは多い。誰もが共感し、勇気をもらえる作品となっているだけに、幅広い層から支持を得ているのも頷ける。自分にとって大切な人やものは何かを改めて考える時間があったいまだからこそ、メッセージがより観客の心に染みわたることだろう。映像の美しさとともに、ぜひ堪能して欲しい1本だ。(文:志村昌美/ライター)