認知症になっても「今日」があり、明日が来る 『one day of life』が伝える希望と支え合いの日々

#one day of life#ドキュメンタリー#認知症#貫地谷しほり

『one day of life』高知編&香川編
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『one day of life』高知編&香川編
『one day of life』高知編&香川編
『one day of life』高知編&香川編
『one day of life』高知編&香川編

山中しのぶ「希望のリレーを繋いで誰かに伝えてほしい」

認知症と診断されながらも、それぞれの環境で精いっぱい「今日」を生きる二人に密着し、新たに始まる一日の希望を描いたショート・ドキュメンタリー『one day of life』高知編&香川編が完成。7日には完成披露上映&トークイベントが開催され、高知編の主人公・山中しのぶ、ナレーションを務めた貫地谷しほり、企画・プロデューサーの山国秀幸が登壇。作品に込めた思いや制作の舞台裏、認知症と共に生きる当事者の日常について語った。

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上映終了後、温かな余韻の中、大きな拍手に迎えられ、山中しのぶ、ナレーターの貫地谷しほり、プロデューサーの山国秀幸の3名が登壇した。

山中は「高知県から来ました。今日は皆さんよろしくお願いいたします」とあいさつ。続いて貫地谷が「お足元の悪い中、これほど大勢の方が来てくださって本当にありがとうございます」と感謝を述べ、山国も「短い時間ですが、よろしくお願いします」と続いた。

MCから本編を初めて見た時の感想を問われた山中は、「私は家族が大好きで。普段は聞けない、子どもたちの声などを動画を通して聞くことができたのが、母として嬉しかったです」と照れくさそうに語った。撮影時、山中は別室で仕事のZoom会議に参加していたため、子どもたちがどのような様子で自分について話しているのか、直接は知らなかったという。「動画で初めて見た時に、ちょっとうるうるっと来ました」と、家族の思いに触れた瞬間の感動を振り返った。

一方、ナレーションを通して客観的に二人の日常を見つめた貫地谷は、作品のエネルギーに感銘を受けた様子。「本当にすごいバイタリティで、このパワーはどこから来るんだろうと元気づけられました。地域の方やご家族もみんな山中さんから元気をもらっているし、同時にその周りの元気もまた山中さんがたくさん吸収して支え合っているのだと、作品を見て強く感じました」と語った。

本作のナレーションにおいて、貫地谷が最も心がけたのは、「寄り添い方」の引き算だった。「普段、役を演じる時はその感情になりきることが多いのですが、ナレーションでは、あまり感情移入しすぎないように意識しました。これは山中さんたちの物語ですし、見た方々がそれぞれの物語として解釈するのを邪魔しないようにしたかったのです」見る者が主体的に映像に入り込める「余白」を残す。その引き算が、作品に深い味わいをもたらした。

MCから「第1声からアプローチは定まっていたのか」と問われると、貫地谷は「映像の世界観というか、空気がこういう風に読ませてくれた」と振り返り、リアルな映像の力があったからこそ、自然に語ることができたと明かした。

高知編では、山中が工夫を凝らし、自分らしく暮らす様子が描かれている。山中自身、日頃から心がけていることについて、「私は認知症になってから特に、苦手なことやできないことも素直に相手に伝えるようにしています。なる前は弱音を吐くのが苦手で、しんどいと言えない性格でした。周りからも頼られる方だったのですが、自分らしく生きていくために、そう伝えることを決めました」と明かす。

続けて「生活の中ではたまにしんどい時もありますが、私の中では“ワンデイ(one day)”、また次の日、明日が来るということを忘れないようにしています。明日になればきっと今日よりは良いことがある、と自分の中で消化するようになりました。人に『お願い』と言えるようになったことが、私の生きる工夫であり、自分が変わっていったところだと思います」と、自分らしく生きるための工夫を語った。

作品のタイトルについて、山国プロデューサーは「厚生労働省さんと『認知症の方の1日を追いかける』というコンセプトのもと『ワンデイ』は決まっていたのですが、ただの1日ではなくかけがえのない大切な1日として『ライフ(life)』を加えました。『ライフ』には、生活、人生、そして『命』の意味も含まれています。日々は命の延長であり、限りなく尊いものだというコンセプトです。しかし実際に撮影に行ってみると、タイトルを超えるような愛おしい人たちがたくさんいて、撮影帰りに寂しくなってしまうほどでした。お二人の姿を見て何か心に残るものがあればいいなと思います」と期待を込めた。

この言葉に、山中も「朝起きたらスタッフの方が家にいて、夜寝る時までずっと一緒でした。3日間ずっと一緒だったので、4日目の朝、起きた時にいなくて寂しさを感じました。それくらい濃い1日を一緒に過ごさせてもらい、本当の親戚や家族のようでした」と、撮影スタッフとの温かな信頼関係を明かした。

「この作品をどのような人に見てほしいか」という問いに対し、山中は「認知症のご本人さんはもちろん、これはすべての人に通じるものです。一人の49歳の人生のストーリーとして、その1日1日を見ていただきたい」と語った。

貫地谷も「1日1日の積み重ねが人生を作っています。私も自分自身の1日1日を大切に生きていきたいと改めて強く思わされました」と続けた。

さらに、山国プロデューサーは「特に子どもたちに見てほしい。山中さんが診断された41歳の時、3人の息子さんは小学生、中学生、高校生でした。息子さんたちはそれぞれの思いを抱えながら、自ら行動を変えていきました。子どもたちの方が大人よりも偏見がなく、自然に受け入れ、コミュニケーションを取ることができます。大人のほうが勝手に偏見を抱いてしまっている。だからこそ、若い人たちや子どもたちにできるだけ多く見てもらい、自然な感覚を持ってほしいのです」と思いを明かした。

これを受け山中が「その時、中学校1年生だった子どもが今では21歳になり、現在は一緒にデイサービスで働いてくれています」と付け加えると、会場からは温かい拍手が送られた。

イベント中盤には、香川編に出演する渡邊康平(84歳)の妻・昌子(まさこ)から寄せられたメッセージをMCが代読した。「渡邊康平の妻の昌子です。主人と私は10年以上共に認知症と向き合ってきましたが、主人は忘れることも多いですが、変わらず前を向いて自分らしく生活をしています。認知症になってもおしまいではないし、怖くもない、そして楽しく暮らすことができるということを皆様へお伝えできたらと思います。そのためには、周囲の人々が本人の想いを大切にすることが一番です。これからも住み慣れた家でお互い支え合える生活を送れることが幸せです。社会の皆様が、認知症になっても幸せが続きますようにと願っております」。

メッセージを聞いた貫地谷は、「本編を見ていても、本当に仲が良いご夫婦で、自分がこの年齢になった時、果たしてこんなに素敵な夫婦になれるだろうかと思いました。奥様が旦那様を本当に尊敬してらっしゃるのが伝わってきて、お互いに良いところを見つめ合いながら、生きていかないとと思いました」と語った。

山中も「羨ましいくらいのご夫婦で、愛が満ち溢れていました。私にとって『家族』というのは血縁関係だけではないのです。近所の人や地域の中で『家族のように付き合える人』がたくさんいればいい。私はそうした方々にとっての『第2、第3の家族』のような存在になりたい」と語った。

山国プロデューサーは香川での密着取材を振り返り、「5日間ほどご夫婦と一緒にいたのですが、このメッセージにある姿は、まったく飾りのないあのままです。隙があればすぐに二人で手を繋ぐ。昌子さんに尋ねたところ、『主人は昔、認知症になる前から私に対して本当に優しくしてくれた。だから、私は今、その優しさをお返ししているだけなのです』とおっしゃっていました。普通の素敵な一組の夫婦だということがそのままメッセージになっていて感動しました」と明かした。

最後に、山中は、一語一語をかみしめるように力強く語りかけた。「私は、この動画を見ていただいた皆さんに向けて、『希望のリレー』という言葉をいつも使っています。認知症のご本人やご家族だけで抱え込んでいては、この希望のリレーは全国の他の誰かには届きません。だから、今日この作品を見てくださった皆さんが、今度は希望のリレーを繋いで誰かに伝えていってほしいのです。私にも、渡邊さんにも今日があり、明日が来ます。皆様の身近にいる認知症の方にも、同じように今日があり、明日があります。どうか『認知症だから何もできない』と思うのではなく、できることもたくさんある。だから『一緒にやろう』と声をかけて、手を繋いで、リレーを繋げていってほしいなと思います。今日は本当にありがとうございました」。

続いて、貫地谷が「このような形で作品に関わらせていただき、本当に光栄でした。私は、山中さんのようにバイタリティに溢れる人間になっていきたいですし、渡邊さんご夫婦のように、年齢を重ねてもお互いを慈しみ合える夫婦を築いていきたいと心から思いました。ぜひ、この温かな物語を、一人でも多くの方に見ていただきたいです。皆様、ぜひお力を貸してください。これからこの作品が、全国の様々な場所で、様々な方の心に届くことを心から願っています。本日は本当にありがとうございました」と締めくくり、大きな拍手に包まれる中、完成披露上映イベントの舞台あいさつは幕を閉じた。

『one day of life』高知編&香川編は、 厚生労働省公式YouTubeチャンネルに配信中。