モラルの欠片もないソ・イングクが堪能できる地獄の呉越同舟! 『オオカミ狩り』の魅力とは

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オオカミ狩り
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オオカミ狩り
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『オオカミ狩り』
オオカミ狩り

今回は劇場公開中の作品『オオカミ狩り』を紹介。本作は、ここ数年でインフレしているゴア演出の極地とも言えるような、とんでもないスプラッター映画として話題を呼んでいる作品だ。

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凄さのベクトルは「誰が死ぬのか全くわからない」ことにある

監督はあの傑作『技術者たち』のキム・ホンソン。『技術者たち』は古今東西のコンゲームもののパッチワークの上に、「まだこの手があったか」と思わせる見事な展開を提示してみせたが、今回も凄い。何が凄いって、おそらく、貴方がポップコーンを3分の1も食べ終わらないうちに、超高速で10人以上死ぬ。

『オオカミ狩り』

『オオカミ狩り』は、死にそうな奴は2秒で死ぬし、「こいつは死なないだろ」と思った奴も2分で死ぬ。「いやいや、生き残りはこいつでしょ流石に」と決めつけた奴も5分で死ぬ。とにかく「展開」と片付けて良いのか迷うくらい、笑ってしまうほどあっという間に、あっさりと(とんでもない血糊の量なので、むしろこってりしているのだが)、重要人物が物語から退場していく。

「誰が死ぬのか解らない」状況を作り出すためには、単純に「生き残りそうな人物を殺す」ことでは解決できない。意外性は担保できるかもしれないが、「それやっとけば斬新なんでしょ」と思われる危険性があるからだ。だが、キム・ソンホンは、とてつもない速度で人死を出しながらも、ストーリは一切破綻させず、中だるみも起こさず、「うおお、これ、次誰が死ぬんだ。っていうか全員死ぬんじゃ」と観客を見事に宙吊りにしてみせる。

ネタバレになるといけないので、ストーリーの詳細は省くが、メインのチキチキ殺害フェスティバルを除いたとしても、物語としての強度があるし、しっかりとエンタメとして成立させている。キム・ソンホンは映画巧者だが、まさかホラー映画でもここまでやれるとは思っていなかった。

モラルの欠片もない!? ソ・イングクの危うい魅力

本作の登場人物は漏れなく濃いのだが、最も目立つのは、邦題が少しアレだが大傑作の『元カレは天才詐欺師♡~38師機動隊~』で飄々とした詐欺師を演じたソ・イングクが演じる凶悪犯、パク・ジョンドゥだろう。全身に施された刺青も素晴らしいが、目つきも語り口も、何もかも素晴らしく、画面越しからでも危うさと色気が匂い立つ。

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パク・ジョンドゥを始めとした護送中の犯罪者集団(フィリピンから韓国へ船で護送されている設定)は、素面なのに『哭悲/The Sadness』の感染者よりもモラルがない。というか、モラル皆無である。よって、別に劇中で殺傷されても何の感慨もなく、むしろ爽快なのだが、なぜか「どんどん居なくなっていくので寂しい」という不可思議なアンビバレンスを味わえる。この犯罪者集団の描き方は、とにかく素晴らしいとしか言いようがない。

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ときに「不良がかっこいい(あるいは、不良はモテる)」なる言葉は、最早昭和のクリシェかもしれないが、本作のイ・ソングクは見事に、凶悪で残忍な不良っぷりを演じてみせる。不良なぞ生ぬるいともいえるが、筆者としては、「かっこいい不良」を久しぶりにスクリーンで見れたことに大きな感動を覚えた。日本でも、近年は『ケンとカズ』や『OLD DAYS』など、ハイレベルかつ、美しいとも表現できる不良映画があるが、ホラー作品でこれほど色気と魅力のある不良を登場させられるのは、おそらく現状の日本では無理だろう。韓国の底力と成熟としか言いようがない。

『オオカミ狩り』は「ここ10年で最も派手な血飛沫」とでも表現すべき、ゴアシーンの連続だが、苦手でない方はぜひ劇場まで足を運んで欲しい。ホラー・スプラッター要素を抜きにしても、めっぽう面白いエンターテイメントに仕上がっている。犯罪者集団がジャックした船で起こる地獄の呉越同舟は、できるだけ大きなスクリーンと大音量で体感するべきだ。text加藤広大/ライター)

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