(前編)炎上商法狙ってる? 原作を大きく外した 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

#元ネタ比較

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』
(C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 (C)諫山創/講談社
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』
(C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 (C)諫山創/講談社

●痛めつけられる少年少女たちはバトルものの定番

とうとう実写化が公開される日を迎えた『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』。原作は言わずと知れた諫山創によるコミックだ。

原作コミックは、「週刊少年マガジン」や通常の少年誌よりもダーク路線を狙い、「惡の華」も連載された「別冊少年マガジン」で2009年の創刊号から連載を開始。いまや、全世界累計発行部数5000万部突破という驚異的な数字を叩き出し、アニメ、ラノベ、ゲームなどさまざまなメディアミックス展開され社会現象となり、また同連載誌「別冊少年マガジン」にて公式パロディ漫画「進撃!巨人中学校」や4コマギャグ漫画「寸劇の巨人」が連載されるなど懐の深さもみせている。

この作品の魅力はやはり、まずは巨人そのものだろう。生態も目的も出生も、巨人は謎に包まれており、ただただ人類を捕食する巨大な存在による絶望的なほど圧倒的で残虐的な恐怖。人類を捕食し、しかも人間に似た巨大な生物という敵は確かに最初読んだときはインパクトがあった。ヨーロッパを思わせるムードがあり、北欧神話の巨人を彷彿とさせるが、それが日本のマンガとして出会うと衝撃を受けるのだ。

そして、もうひとつの大きな魅力は、この圧倒的な脅威に、文字通り決死の覚悟で立ち向かっていく10代の少年少女兵たちの、肉体的にも精神的にも痛々しいほどに苦悶する姿だろう。その二本柱に巨人の侵入を防ぐ壁に囲まれた閉塞的な世界観や、立体機動装置などを駆使した戦法、時間軸を前後させながら紐解いてゆく謎が謎を呼ぶストーリー展開が絡んでいく。

個人的には、はっきり言ってそんなに好きになれない。雰囲気はあっても実のところ、深みは感じられないわりに、あまりにも壮絶で悲壮な展開は読んでて単純にしんどい。デッサンがくるっていたり、時には「増田こうすけ原作の『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』か!?」と突っ込みたくなるような雑で適当な描き方にもなる絵柄もしんどくなる要因のひとつではあるが。目をひん剥いて三白眼ならぬ四白眼にして、断末魔の叫びをあげている少年少女を見ると、そこまで子どもたちを痛めつけてまで作り手は読者の人気が欲しいのか?と萎えてきてしまうのだ。

この少年少女たちが心身ともにエグいほど痛めつけられながらも戦いに身を投じていくのはバトルものの定番となっているが、『新世紀エヴァンゲリオン』に端を発するのではないかと思われる。もちろん、もっと以前から『機動戦士ガンダム』があったものの、少年少女たちが作り手から必要以上に痛めつけられている感を持つのは『エヴァンゲリオン』からだろう、罪深い『エヴァ』め。『魔法少女まどか☆マギカ』も、トム・クルーズ主演ハリウッド映画の原作である桜坂洋原作のライトノベル「All You Need Is Kill」も、そして「進撃の巨人」もこの流れに傾倒していると思われる。

痛めつけられる少年少女たちの図は個人的には食傷気味に感じるのだが、世間では人気は衰えるどころか、「進撃の巨人」人気の凄まじさは周知の通りだ。あまりに原作ファンの熱が高いため、今回の実写映画化も実現に向けての一挙手一投足がいちいちニュースとなって巷を駆け巡った。監督が『告白』の中島哲也監督から『ローレライ』の樋口真嗣監督に交代したときもだし、メインキャスト・サブキャストが発表されるたびにファンたちは沸き立った。その後も、リヴァイ兵長は登場しないのかだの、シキシマって誰!?だの、と騒がしかった。

それだけ注目された「進撃の巨人」実写映画化、さてさて、その内容はいかに?と蓋を開けてみると・・・。(中編へ続く…)(文:入江奈々/ライター)

【元ネタ比較】(中編)炎上商法狙ってる? 原作を大きく外した 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』
【元ネタ比較】(後編)炎上商法狙ってる? 原作を大きく外した 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』は8月1日より公開される。

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