船上での愛のドラマが面白い、ケネス・ブラナーが新機軸で描く『ナイル殺人事件』
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ようやく公開の話題作! アガサ・クリスティの傑作を映画化
【週末シネマ】ケネス・ブラナーがアガサ・クリスティ原作の推理小説を映画化、名探偵エルキュール・ポアロも演じるシリーズ第2作『ナイル殺人事件』がようやく公開される。
本来2019年12月に予定されていた公開が製作の都合で翌年10月に延期されると、今度は新型コロナウイルス感染拡大によって延期が繰り返され、当初から2年以上遅れたが、全米では公開1週目の週末(2月11日~13日)興行成績で第1位を記録し、待たされ続けた観客の注目と期待は薄れなかったようだ。
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物語は1930年代、大富豪の女性が新婚旅行先のエジプトでナイル川のクルーズ中に殺害され、休暇で現地に居合わせたポアロが事件の真相と犯人を追っていくというもの。被害者のリネット(ガル・ガドット)は莫大な遺産を相続した美女で、親友だったジャッキー(エマ・マッキー)の婚約者サイモン(アーミー・ハマー)に一目惚れした挙句の略奪婚をしたばかりだった。
ストーカーのように新婚カップルをつけ回し、船にも乗り込んだジャッキーは動機の面では真っ黒だが、彼女には完ぺきなアリバイがあった。ポアロが犯人を捜す中、やがて第二、第三の殺人が起きる。
何度も映像化された原作を、ブラナーは愛に重点を置いて演出
殺人事件のあらましは原作通りだが、ブラナーの演出はミステリーよりも愛を描くことに重点を置いている。世界中で長く親しまれる原作で、何度も映像化されているとなれば、新機軸に挑戦するのも当然だろう。激しい恋もあれば秘めた感情、禁断の愛、親子の愛、あるいは友情という形も含めて様々な形の愛が物語を動かしていく。
愛のドラマが盛り上がりすぎて、密室殺人の謎解きがやや単調な感はなきにしもあらずだが、何より船上の人間模様が面白い。
主要人物を取り巻く人々のキャラクター設定はかなり手を入れてあり、1930年代という設定を守りながら多様性を持たせている。
まるで罪悪感を持たないリネットには不思議な無邪気さがあり、ガドットは『ワンダーウーマン』以上のはまり役だ。他にNetflixの人気シリーズ『セックス・エデュケーション』のエマ・マッキー、『ブラックパンサー』のレティーシャ・ライトのような新鋭からボリウッド俳優のアリ・ファザル、オスカー女優のアネット・ベニングまで幅広い。ブラナー版ポアロの前作『オリエント急行殺人事件』(17年)でポアロの友人ブークを演じたトム・ベイトマンも同じ役で出演している。
ウィットに富み頭脳明晰な探偵としてだけではなく、一男性としてのポアロ像を打ち出してくるのも新鮮だ。トレードマークである口髭の知られざる由来について、かなりの時間を割いて描いているが、これも原作にはない本作のオリジナルの趣向だ。ブラナーはクリスティの小説を大胆に自分の世界へと引き寄せ、熱を帯びたミステリーのエンターテインメントを作り出した。(文:冨永由紀/映画ライター)
『ナイル殺人事件』は、2022年2月25日より全国公開。
(C) 2022 20th Century Studios. All rights reserved
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