16年、アカデミー協会に向けられた批判
【興行トレンド】2月8日、第94回アカデミー賞のノミネートが発表された。日本映画『ドライブ・マイ・カー』が作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4部門で候補になった。日本映画が作品賞にノミネートされるのは史上初。監督賞の候補となるのは『乱』の黒澤明監督36年ぶりで3人目、脚色賞は初めてだ。国際長編映画賞(旧外国語映画賞)で受賞すれば『おくりびと』以来13年ぶりとなる。
・『ドライブ・マイ・カー』週末興収前週比500%! アカデミー賞ノミネートで注目度急上昇
本作はゴールデン・グローブ賞で日本作品として62年ぶりに非英語映画賞に選ばれるなど、米国内で受賞ラッシュが続いていた。アカデミー賞で4部門候補になったのは作品が高く評価されたことはもちろんだが、近年の多様性重視の流れが後押ししたと読み解くことができる。というのも、ノミネートされた顔ぶれを見ると多様性が重視された結果が随所に見られるからだ。
監督部門では『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオンが候補となり、女性監督として初めて2度目のノミネートを果たした。一昨年まで候補になった女性監督はわずか5人だったが、昨年は史上初めて女性2人が同時に候補になり、クロエ・ジャオが受賞した。2年連続で女性監督が受賞なるかに注目が集まる。
俳優部門20人の候補も多様性に富んでいる。黒人俳優のウィル・スミス、デンゼル・ワシントン、アーンジャニュー・エリス、ラテン系のアリアナ・デボーズ、スペイン出身のハビエル・バルデム、ペネロペ・クルスがノミネートされた。
多様性を生んだのが、アカデミー会員の構成の変化だ。16年、アカデミー賞の俳優部門候補者が2年連続で全員白人だったことをきっかけに、アカデミー協会に批判が向けられた。協会では、女性と非白人のアカデミー会員数を20年までに2倍にする目標を設定。女性会員は15年に1446人から20年に3179人、非白人は15年に554人から20年に1787人に増加した。21年には新会員に395人を選び、うち女性が46%、非白人が39%にのぼる。
ハリウッドが多様性に敏感になっている出来事がゴールデン・グローブ賞で起きた。賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に黒人記者が1人もいないことが明らかになり、俳優の広報たちがボイコットを呼びかけ、授賞式のテレビ中継が中止されたのだ。授賞式自体は催されたが、異例の事態となった。
アカデミー賞授賞式は3月28日(日本時間)に開催される。(文:相良智弘/フリーライター)
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