加賀まりこ、自閉症の息子と歩いて気付いた「通りすがりの人の視線の“冷たさ”」

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加賀まりこ

自閉症を抱える息子と母親が織りなすヒューマン・ドラマ『梅切らぬバカ』が1112日より全国公開中。ムビコレでは、本作の監督である和島香太郎と主演の加賀まりこのインタビューを掲載中だ。

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「この映画を通して、“忠さん”を見守ってもらえたらいいな」

都会の片隅にある古い一軒家で一人息子と静かに暮らす珠子には心配事がある。50歳になったばかりの息子は自閉症だ。将来、息子が1人になったら……

本作は、70代の珠子が1人で育ててきた息子の忠雄(愛称 忠さん/ちゅうさん)との愛情に満ちた日々を中心に、隣家に越してきた3人家族をはじめ、平穏だけではない周囲との関係も描いていく。

加賀演じる珠子は、どちらかといえば地味な女性。加賀は、「何で私?」と思わず和島監督に聞いたと言う。「僕自身がいろんな障害のあるお子さんを持つお母様にお会いしてきて、快活な印象の方が多かったんです。見た目に苦労が表れているわけではないですし、逆にそう見られないように気をつかってるとおっしゃるお母様もいました」と、和島監督はキャスティングの理由について語った。

一方、「何で私?」と思いながらもこの役を引き受けようと思った理由について、「連れ合いの息子が自閉症なんです。そういう子のそばにいることには多少慣れている。そんなしょっちゅう会わないけど、という中で、芝居としてじゃなくて存在できるかな、ということが一番重要だったかな。あんまり芝居をせずに彼のそばにいるっていう状況を出せばいい。もう私は本当に、(場面写真の忠さんを見ながら)この人のそばにいるときは母のつもりになっちゃうし」と加賀は話す。

そんな加賀は、プライベートで自閉症の息子と過ごすうちに、通りすがりの人の冷たい視線に気がついたと言う。「見た目はごく普通なのよ。だけど、急にちょっと大きな声を出したりすることあるじゃない? それをバッと見る人たち。人って、こんなに障害を持つ人に向かっての視線が優しくないんだと思って、嫌だった。ああ、何で?って。もっと微笑んでくれって思うの。この映画を見た後に、皆さんが思ってくれたらいいなって思う」。

それに対し和島監督は、「きっと自閉症の方から見れば、何気なく通りすがる人たちもまた怖い存在だったりすると思うんです。突然視界の中に入ってこられたりとか、例えば大きな音を出して近づいてこられたりとか、それだけでとても怖い思いをする方たちでもある。だから、お互いの事情をもうちょっとつかみ合うことができれば、それこそ街で障害のある人たちを見る目というものが少し変わるだろうなっていうふうに思っています。ただ、やっぱり全然事情が分からないから、怖いものとして見てしまう。だから、さっき加賀さんがおっしゃってくれたんですけど、この映画を通して、“忠さん”を見守ってもらえたらいいなと思って作りました」。

和島監督も加賀も、「“忠さん”を好きになってもらえるように」という同じ願いで作品作りに取り組んだようだ。誠実に言葉を紡ぐ和島監督と、その傍らで明るく盛り立てる加賀の良い関係性が伝わってくるインタビュー全文はこちらから。