『あの頃。』松坂桃李×仲野太賀インタビュー

アイドル・ヲタクの青春を熱く演じた2人が“あの頃”語る

#あの頃。#松坂桃李#ヲタク#仲野太賀

松坂桃李

僕にも“あの頃”はあったのかなとも思うし、共感できる/松坂

『あの頃。』
2021年2月19日より全国公開
(C)2020『あの頃。』製作委員会

バイトもバンド活動もうまくいかず、行き詰まっていた青年・劔が、ひょんなきっかけでアイドルの松浦亜弥に夢中になる。そこから「ハロー!プロジェクト」にのめり込み、同好の仲間たちと少し遅めの青春を謳歌する『あの頃。

2000年代初頭、ハロプロのヲタ活に勤しんだ劔樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」を『南瓜とマヨネーズ』の冨永昌敬が脚色、『アイネクライネナハトムジーク』の今泉力哉が監督した本作で、主人公の劔を演じるのは松坂桃李。ヲタ活仲間のコズミンを演じるのは仲野太賀

どんよりした日常から別人生のような陽キャラになり、その先でさらに成長していく劔の心の旅を丁寧に演じた松坂と、理屈っぽく、プライドが高いひねくれ者の微かな可愛げを繊細に見せた仲野に話を聞いた。

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──まず、オファーが来たときの感想をお聞きしたいです。

松坂:僕は最初、マネージャーさんから聞いたのは、劔さんが書いた『あの頃。』の映画化ではなくて。「松浦亜弥さんのファンの役です」という言い方だったんです。それで、「え、松浦亜弥さんファンの役、やります」と答えました。詳細をそんな聞くこともなく。まだ座組みも全く聞いてない状態で「あ、やります!」って言っちゃって(笑)。

仲野:(笑)

松坂:というのも、これはいろんなところで喋っているんですけど、僕が中学1年生のとき、同じ学校の3年生に松浦亜弥さんが実際にいらっしゃったんです。僕の中での青春の一部みたいなところがあったので。「松浦亜弥さんファンの役です」というワードを聞いた瞬間にパーッと思い出して、「これはちょっと、やらなきゃいかんかも」と思って、「やります」と言っちゃったんですよね。

──仲野さんは、いかがですか。

仲野:僕には「藤本美貴ファンのオタクの役です」というふうには来なかったんですけど(笑)。今泉監督で、脚本が冨永さんで、主演が松坂桃李さんと聞いて、その並びで「めちゃめちゃワクワクする!」と思って。台本を読ませてもらって、「やらせてください」と伝えました。

──劔さんやコズミンは、アイドルのファンで憧れる側です。俳優で、やはり誰かの憧れの対象になるお2人にとって、言うなれば逆の立場の劔さんとコズミンは、どういうふうに映っていたのか、興味があります。

松坂:自分も「BUMP OF CHICKEN」のファンなんですよ。なので、ファンになって夢中になる気持ちというか、追っかけたくなるというのはわかります。新曲が出たら買うし、聴くし、ライブがあったら見に行きたいし。元気をもらう原動力みたいなものは共通というか、共感できる部分はあるのかもなと思います。

仲野:僕も、自分がファンで憧れてる人って、「銀杏BOYZ」もそうですし、「くるり」だったり、ミュージシャンだったり、写真家だったり、映画監督もそうですけど。自分も一ファンであるし、そこに遠さは感じなかったですね。でも、ファンであるということ以上に「恋愛研究会。」の、男同士でああやって一緒に過ごしている時間とか、そっちのほうがもっともっと共感できるものがありました。

松坂:うん。

仲野:本当に、何者でもない僕たちが友だちと一緒にいて、何かに一緒になって夢中になって、というあの時間はすごく愛おしく思います。僕も、自分にも“あの頃”はあったのかなとも思うし、共感できます。

──撮影現場について、「恋愛研究会。」のイトウを演じたコカドケンタロウさんが「毎日がすごい楽しかった」とコメントされていました。どんな雰囲気でしたか?

松坂:部活ですよ。

仲野:はい。

松坂:本当に部活の延長線上というか。男しかいないので、もう本当にくっだらないことしゃべったりとか、待ち時間でもね。

仲野:楽しかったですね。

松坂:楽しかったよね。

松坂桃李

仲野:年齢、結構バラバラなんですけど。

松坂:うん。

仲野:でも、協調性のある人たちばかりで。

松坂:もう分け隔てなく、みんな普通に思い思いのことをしゃべったりとか、その日のテーマじゃないけど、ワードによって「ああでもない、こうでもない」とか。

仲野:そうですね。

松坂:コカドさんの振りがちょっと面白かったりするんだよね。芸人さんっぽい振り方というか。

仲野:ちゃんと振ってくれて、こっちがしゃべって、パンと落とすみたいな。やっぱりコカドさんがいるだけで、一気に会話が弾んでいきますね。

松坂:会話が、もう、そうそう。よく回るんですよ、会話が。

──映画に関係のない話も?

松坂:全然関係なかったですね(笑)。

仲野:いろんなことを話した気がしますね。

松坂:あとはもう本当に、劇中で歌った『恋ING』をみんなでよく練習して。

仲野:あの時間、良かったですね。

松坂:良かったね。いわゆる普通の楽屋で、みんなで待ち時間のときに歌ったりとか。ナイター待ちのときに、そのロケバスの中で歌ったりとか(笑)。

仲野:そうそう。あれ、一番思い出深いかも。冬だったので、寒ーいロケバスの中に僕たち「恋愛研究会。」がギュッと集まって。ロケバスも電気がついてなくて真っ暗の中。

松坂:そうだね。

仲野:ふと、誰かが歌い出したら、どんどんみんなが歌い出してるっていう。

松坂:歌い始めるっていう。

松坂:本当に、だから部活のノリなんですよね。

この映画はただのノスタルジーではなく、それでも「今が最高なんだ」っていうことを描いている/仲野

──撮影はちょうど1年前の2月で、新型コロナ感染が始まり出した頃でした。

仲野:あのときは、まだそれほどではなかったですね。

松坂:当時はまだ「海外で新型ウイルスが発生したらい」とニュースになり始めた頃で、まだ実感としては何もなかったんですよね。

──その意味では、何も気にすることのない撮影というのは……

松坂:あれが最後だと思います、本当に。

仲野:確かにそうですね。

松坂桃李

──それも「あの頃」になってしまって。

仲野:「あの頃」になりましたねえ。

松坂:「あの頃」ですよ、本当に。

──今泉監督とのお仕事はいかがでしたか。

松坂:今泉さんは、本当に人の動きというか、人の空気感を見るのが好きなんだなって思いましたね。カットをかけるまでがとっても長いじゃない。

仲野:長いですね。

松坂:ものすごくお芝居を観察されているんですよ。とっても細かいところまで見てるから。ある場面で、あるキャラクターにフォーカスが当たっているときに、違うところで何かやったりすると、すごく細かく指摘したり。

仲野:絵作りをすごい丁寧にやられてましたね。あと、今泉さんが近寄ってきて、ボソボソっとこう演出するのを、言われたままポンってやったら、ドンって受けるんですよ。

松坂:ああ、あったね。

仲野:今泉さんの演出術じゃないけど、たぶん観察している分、“あそこをちょっと変えただけで一気に面白くなる”というひらめきがたくさんある方だなと思いました。

松坂:この今泉さんの、「コソコソ」が、やっぱりドキドキするんですよ。コソコソって言われたほうも、コソコソって言われた人から台詞を受ける側もちょっと緊張するというか。

仲野:何言ったんだろう、何を変えていくんだろうって。

松坂:言われた側の立場になると、“ああ、これか。これを言うのか”みたいな。「おお、OKです、OKです。じゃあ、これで」と受けてから、“ちょっと待って、どういう感じで言おう?”と悩み始めて、“え? これ、もう本番だよ!”(笑)。

仲野:“やるのね? やるんだね? やります、やります!”みたいな(笑)。

──ガラッと変えたりすることもあるんですか?

松坂:空気のニュアンスが、そこでパンって変わるきっかけみたいな感じです。その空気に影響を与える台詞、言葉を使うんで。だから、余計にその瞬間は緊張感が、役者陣の中では走る。

仲野:ありましたね。でも、それもすごい心地いい緊張感でしたけど。

松坂:うんうん。

仲野:また、こっちにボソボソって言って、あっちにもボソボソって言ってるときあるから(笑)。

松坂:ああ、あるね。

仲野:本番どうなるか、誰も予想ついてないみたいな。

松坂:うんうん。

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──面白いですね。絶対に予定調和にならなさそう。

仲野:そうですね。予定調和にならなかったかもしれないですね。

松坂:まあ、そうだね。

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──最後に、この作品は本当にいろいろな感情を呼び起こしますが、コロナ禍ということもあり、エンターテインメントの大切さをすごく感じました。自粛期間中、私は本当にエンターテインメントに救われた思いが強かったのですが、お二人はそれを提供するお立場です。この作品を通して感じられたことを聞かせてください。

松坂:僕は本当に、この作品を作り終わったあとと今とでは、ちょっと変わったかもしれないですね。去年は悲しいことがたくさん起こりました。そんな中、この『あの頃。』は、どうしようもない男たちがばかなことをやってワーワー騒いでる。別に派手なドラマが起きるわけでもないし、派手なアクションがあるわけでもない。それでもこの作品って、いま、ものすごく心がほだされる作品になるんじゃないかなって、ちょっと思い始めているんですよね。

仲野:確かにそうですね。

松坂:本当にいろんな方に見ていただきたいですし。『あの頃。』という作品だからこそ、みんなそれぞれの「あの頃」を思い出すトリガーみたいなものにもなればいいなと思います。

仲野:そう思います。

松坂:それによって、やっぱりまた新たな活力になればいいと思うし。やっぱり本来の映画があるべき姿みたいなところになればいいなと思いますね。

──仲野さんは、いかがですか。

仲野:桃李くんがおっしゃったように、この映画で描いていた時間って、誰も何も背負っていない、のびのびしてた時間だと思うんですよね。大人になると、社会に対していろんなことを背負うじゃないですか。そうやって変化してしまうし、「あの頃」には戻れなくなる。そういう何も背負ってなくて自由だった時間って、それこそコロナ後にいろんな人が悲しみを背負ってしまったように、作っていたときと出来上がったときでは、もう時代は明確に変わってしまったなと思いました。
この映画を見てその当時のことを思い出してほしいし。でも、この映画はただのノスタルジーを描いた映画じゃなくて。それでも「今が最高なんだ」っていうような終わりなんですよね。

──そうですよね。

仲野:それは、過去のいい時間を描きながらも、今生きている生活を豊かにする、そういう作品になってくれればいいなと思います。

──「今が一番楽しい」というせりふは響きました。

仲野:本当、そうですよね。

──そういうふうに言えますか? 挑戦的な聞き方で恐れ入りますが、いつでも“今が一番楽しい”と言えるのは、すごいことだなと思ったので。

仲野:確かに、言うのは難しいですね。高校時代とか、すっごい楽しい記憶でいっぱいだし、今でも思い出すだけで胸がいっぱいになるような時間だったなと思うんですけど。でも、今も楽しい。それはそれで。

松坂:楽しいよね。今、太賀が言ってくれたように、学生時代って別に何も背負ってないし、純粋に楽しい。何も考えなくていい、という楽しさもあるけど。大人になって、いろんな制約や悩みがあるにしても、その中で見いだしていく楽しさみたいなものも確かにある。そこからの出会いによって、より人生が豊かにもなったりはしてるし。比べようのない楽しさみたいなものが、日々積み重なっている感じはしますね。

・『あの頃。』の原作本、犬山紙子のパートナーでもある漫画家/劔樹人の「あの頃。 男子かしまし物語」はRenta!で

(text:冨永由紀/photo:小川拓洋)
(松坂桃李 スタイリスト:小林新 UM/ヘアメイク:高橋幸一 Nestation)
(仲野太賀 スタイリスト:石井大/ヘアメイク:高橋将氣)

松坂桃李
松坂桃李
まつざか・とおり

1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。2009年に特撮ドラマ「侍戦隊シンケンジャー」で俳優デビュー。11年『僕たちは世界を変えることができない。』、『アントキノイノチ』で第85回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第33回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。TVドラマ、舞台でも活躍。主な映画出演作は『日本のいちばん長い日』(15年)、『マエストロ!』(15年)、『湯を沸かすほどの熱い愛』(16年)、『不能犯』(18年)、『娼年』(18年)、『居眠り磐音』(19年)、『蜜蜂と遠雷』(19年)など。『孤狼の血』(18年)で第42回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、『新聞記者』(19年)で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。主なTVドラマ出演作はNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」(12)、「わろてんか」(18)、大河ドラマ『軍師官兵衛』(14年)、『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(19年)、『ゆとりですがなにか』(16年)、『この世界の片隅に』(18年)、『パーフェクトワールド』(19年)など。2021年は『いのちの停車場』、『孤狼の血II』、『空白』が公開予定。今春にはNHK土曜ドラマ『今ここにある危機〜』で主演を務める。

仲野太賀
仲野太賀
なかの・たいが

1993年2月7日生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。TVドラマ、舞台でも活躍。主な出演映画に、『桐島、部活やめるってよ』(12年)、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(16年)、『淵に立つ』(16年)、『アズミ・ハルコは行方不明』(16年)、『南瓜とマヨネーズ』(17年)、『海を駆ける』(18年)、『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(18年)、『静かな雨』(20年)、『今日から俺は!!劇場版』(20年)、『生きちゃった』(20年)、『泣く子はいねぇが』(20年)、『すばらしき世界』(21年)。2014年に『ほとりの朔子』、『男子高校生の日常』、『人狼ゲーム』、『MONSTERZモンスターズ』、『私の男』、『スイートプールサイド』で第6回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞。『淵に立つ』で第38回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。主なTVドラマ出演作は『15歳の志願兵』(10年)、連続テレビ小説『あまちゃん』(13年)、大河ドラマ『江〜姫たちの戦国』(11年)、『八重の桜』(13年)、『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(19年)、『ゆとりですがなにか』(16年)、『レンタルの恋』(17年)、『1942年のプレイボール』(17年)、『今日から俺は!!』(18年)、『あのコの夢を見たんです。』(20年)、『この恋あたためますか』(20年)。