『ビッグ・アイズ』ティム・バートン監督インタビュー

ウソみたいな本当の話！アンディ・ウォーホルをも魅了した画家の半生を鬼才監督が映画化

#Tim Burton 2014.12.22

「ビッグ・アイズ」は、可愛いんだけどなんだか恐ろしい

大きな瞳でこちらを見据える子どもたち。不気味でカワイイ「ビッグ・アイズ」の絵は、60年代に大ブームを巻き起こし、ナタリー・ウッド、ジョン・クロフォードらセレブたちも競って原画を買い求めた。

10年もの間ウォルター・キーンの絵とされてきたが、実際に絵を描いていたのは口べたで内気な妻のマーガレット。本当の作者は誰かをめぐり、70年代のアート界を揺るがしたゴースト・ペインターの実話を、鬼才ティム・バートン監督が映画化した話題作が『ビッグ・アイズ』だ。

バートン監督自身も大ファンというマーガレットが、本当の自分を取り戻す闘いを描いた本作について、監督に話を聞いた。

──マーガレット・キーンの作品のコレクターでもあるそうですね。彼女の絵の魅力について教えて下さい。

監督：彼女の絵はいくつか持っているよ、新しい作品が多く、古い作品は少ないけど、古い作品は実に面白い。最初は多くの人がウォルター・キーンの作品だと思ってて…後になって本当のことに気がつくんだ。
彼女の絵については、幼い頃からずっと記憶に残ってるんだ。彼女の作品はいろんな場所に飾ってあったよ。家や病院、歯科医院、どこに行ってもね。子どもながらにすごい存在感を感じたんだ。可愛いんだけど……なんだか恐ろしい。だから、みんながこの絵に何かを感じ、興味を持つんだ。大好きな人も、大嫌いな人もいる。そういった反応が私には興味深くてね。

──今回は実話をもとにした作品です。映画化した理由を教えてください。

監督：これは奇妙な話で、実話だけど、信じられないというか……ウソみたいな話が事実だったりすることがあるけれど、これもそうだ。私は絵に興味があり、ウォルターとマーガレットのこじれた関係の話を聞いた。マーガレットが描いたけど、名義はウォルターで……そんなところが面白かったんだ。

──実話をもとにした作品は『エド・ウッド』（94年）以来ですね。

監督：これは『エド・ウッド』に少し似てるんだ。エド・ウッドは最低の映画監督と言われても多くの人が彼の作品を覚えてる。そこが似てると思う。この絵を嫌う人も多いが、それでも何か人の記憶に残るような強烈なものを持っている。だからこの2つの映画には共通点がある。どちらも実在の人物で、少し常識外れで……まるで作り話に聞こえる。

マーガレットとウォルターは完全に歪んだカップルだね

──マーガレットを、アカデミー賞に5度もノミネートされたエイミー・アダムスが、夫のウォルターをアカデミー賞を2度受賞したクリストフ・ヴァルツが演じています。キャスティングの理由をお聞かせください。

監督：クリストフは芸達者で、ウォルターにぴったりだ。魅力的だが、いじめたり脅したり、そういう2つの面を同時に表現するのがとてもうまい。エイミーは静かな力を表現した。ある意味、彼女の役の方が難しかったと思う。内向的で内気な人物を演じつつ、見ている人に強烈な印象を抱かせた。そんな2人が合わさってカップルとなるが、完全に歪んだカップルだね。

──マーガレット・キーンに実際に会ったそうですね。どんな人ですか？

監督：とても内向的だった。なんで彼女が映画を気に入ったか不思議だったよ。でも、自分についての映画を見ること自体が、異様な体験だと思ったね。ましてや、その人が内気で内向的な場合は。だから彼女にとっては、法廷に立って苦しい過去を告白することは大変なことだったと思う。

──「ビッグ・アイズ」の絵はアンディ・ウォーホルをも魅了し、アニメ『パワーパフガールズ』をはじめ他の多くの作品・芸術家に大きな影響を与え続けています。あなたも影響を受けた1人ですか？

監督：もちろん。多くのアーティストが今も昔も影響されてる。たとえば私の娘も、 “ビッグ・アイ”な人形をコレクションしてる。20体ほどね。こういう人物描写はディズニー映画でも見られるし、現代の画家もこういう絵を描く。好きか嫌いかは別として、多くの人が影響を受けてるんだ。

──最後に、映画の見どころを教えてください。

監督：これはウォルターとマーガレットの実話を基にしています。私が若い頃に人気だった、この絵の作者です。マーガレットとウォルターが描いたこの絵は、私が子どものころから印象的でした。この物語の中心は彼らがどのように注目され、この絵の本当の作者を巡って、その後どうなったかを描いています。私の若い頃は、皆ウォルターが描いたと考えてましたが、後になって本当はマーガレットだと分かりました。信じられないような話ですが、本当にあった物語です。ぜひこの映画を楽しんでください！

Tim Burton

Tim Burton

ティム・バートン

1958年、アメリカ、カリフォルニア州生まれ。ディズニーの特別奨学金でカリフォルニア芸術大学に入学、1979年にアニメーターとしてディズニーに入社する。短編アニメ『ヴィンセント』（82年）で監督デビューを果たした後に退社し、『ピーウィーの大冒険』（85年）で初めて長編映画の監督をつとめる。1989年、『バットマン』が世界的大ヒットを記録。続く『シザーハンズ』（90年）では広く女性ファンも獲得。その後も、『ビッグ・フィッシュ』（03年）、『チャーリーとチョコレート工場』（05年）、『スウィーニー・トッドフリート街の悪魔の理髪師』（07）、『アリス・イン・ワンダーランド』（10年）などを監督。
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