今だからこそ笑ってほしい!『男はつらいよ』『燃えよデブゴン』注目監督の推薦映画

筧昌也監督が勧める『男はつらいよ』
筧昌也監督が勧める『男はつらいよ』
筧昌也監督が勧める『男はつらいよ』
樋本淳監督が勧める『大災難P.T.A.』

大勢の方々に哀しみと苦しみをもたらした東日本大震災。多くの地域で計画停電が実施されるなど、今は、被災地はもとより日本各地でも、映画どころではないといった状況にあると思います。

ですが映画には、人を元気づけたり、その心を潤してくれたり、明日への希望を抱かせてくれるような力があると思います。そこでムビコレでは、映画を愛して止まない監督やプロデューサーに「こんなときだからこそ見て欲しい映画」を挙げてもらうことにしました。第2弾となる今回は、4人の監督が推挙する映画とコメントを寄せてくれました。

【こんなときだからこそ見て欲しい映画 その2】

■筧昌也
[映画監督、イラストレーター/代表作『Sweet Rain 死神の精度』『美女缶』]

『男はつらいよ』(第1作)
熟考しました。この有事、まず、映画を観る気分になれるのか?
観るとしても、そのジャンル、作風などを選ぶのではないか、と。
結論。
日本のピンチですから、やはり日本映画を推薦したいと思いました。
さらに、アニメではなく実写映画。やはり「人間そのもの」が見たいです。
そして、コメディであること。気軽に見れる、笑いの力は偉大です。

誰もが知っている国民的なキャラクター「寅さん」ですが、
第1作を観たことがない方が意外と多いのではないかと思います。
そして何より、この作品が1本の映画作品として傑作なのです。
兄妹愛、離れた家族同士の絆、恋愛の素晴らしさ、日本人の情の深さを知れ、
いま、僕らに必要な全てが詰まった作品だと思います。
笑って泣けて、元気が出ると思います。

寅さんのような人がフラっと帰って来れる、平和な日本に復興することを
心から願っています。
これからも共にがんばりましょう。

■前田弘二
[映画監督/代表作『婚前特急』]

『燃えよデブゴン』『五福星』『Mr.BOO』
80年代の香港映画は、出てくる人たちがとってもたくましく、同時に笑えて、観てるこっちも強くなった気になります。まさに香港映画黄金期の勢い。僕の映画への入り口は、サモハンやジャッキーやユン・ピョウ、ホイ兄弟、キョンシー・シリーズから全部が始まった。
とくにサモハンやジャッキーは登場しただけで、ワクワクする。何かしてくれるんじゃないかと。そして期待以上にしでかしてくださる!

■樋本淳
[映画監督/代表作『クラシコ』]

『大災難P.T.A.』
この邦題のおかげで、この時期、放送を自粛しているCSチャンネルもあるようです。ただ、この「大災難」は天変地異というよりは、人災と悪運を指しています。原題は『Planes, Trains & Automobiles』。つまり「PTA」で、主人公であるスティーヴ・マーティンが、感謝祭の夕食を家族と過ごすために、度重なるバッドラックの中、飛行機・列車・乗合バス・レンタカーを駆使して、ニューヨークからシカゴへ向かう2日間を描いたコメディです。そして、そのバッドラックの中でも、もっとも強烈な存在として、夭折の天才ジョン・キャンディが演じる「迷惑男」が登場します。
2人は、運命の偶然によって、一緒に旅を続けて、信じられないような事件に遭遇し、極限状況の中ではエゴの衝突を起こします。しかし、この映画に貫かれているのは、「寛容」であり、「家族への愛」であり、「思いやり」です。それがあるために、このドタバタ喜劇は、最後には思いもよらなかった「感動的な後味」を残します。今は、思い切って、他人のための行動を起こす時期だと思います。それが、結局は自分のためであることを、教えてくれる映画です。

■太田隆文
[映画監督/近作・代表作『青い青い空』『ストロベリーフィールズ』]

『青い青い空』
こんなときに見てほしい映画──そう問われて考えてみた。大きな災害に負けず戦う人たちの物語か? 昔でいえばチャールトン・ヘストンの『大地震』、スティーヴ・マックイーンの『タワーリング・インフェルノ』。ただ、それでは被害を思い出すばかりで、心癒すことはできない。
日本映画で考えてみる。最近はテレビドラマと同じように、年齢層を特定した作品作りが主流。20代の女性を主人公にした映画が多い。中身も女性向き。大きな被害を受けた方々、被害はないが心に大きな傷を受けた人たちは、幅広い世代に渡る。特定の世代を狙った映画では届かない。

テレビドラマも同じだ。世代別のものばかり。でも、昔は子どもからお年寄りまで。幅広い世代が一緒に見られるドラマがあった。『肝っ玉かあさん』に『ありがとう』。茶の間に家族が集まり、一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に感動した。そして、いろんなことを語り合った。そこに世代を超えた絆が存在。家族の絆を作っていた。
しかし、先に書いた通り、最近のドラマは世代を特定。家族が茶の間に集まることがなくなる。その頃から日本人は世代間のコミニュケーションを失い、語り合う機会をなくしたのではないか? そしてパソコン全盛の時代。ゲームも1人。DVDやワンセグ。個人個人が1人で楽しむ社会になってしまった。

「本当にそれでいいのか?」。近年、考えていたテーマである。世代間の意思疎通をすること。みんなで一緒にがんばること。大切ではないか? そんなことが必要ない時代になったのか? いや違う。今回の震災を経験して、思った。やはり「みんなでがんばること」が必要だ。

手前味噌になるが、僕の監督作『青い青い空』は「みんなでがんばること」がテーマ。女子高生を主人公にした青春もので、親と子が、生徒と教師が対立、衝突する。
しかし、生徒たちが「書道大会に出場したい!」という思いを伝えたことで、世代を超えて、おじいちゃんも、お母さんも、お姉ちゃんも、先生も、友だちも、クラスメイトも一緒にがんばり、大きな困難を乗り越える話だ。
災害や戦争を扱った物語ではない。でもそこに「みんなでがんばれば、何とかなる」というメッセージを込めた。1人じゃ無理でも、みんながいれば大丈夫。そのテーマ。主題歌でも伝えた。

「誰にだってある くじけそうな時
すべて嫌になって逃げ出したい時が

君にだってある そう私にだって
でもね だから 人は手と手取り合ってゆくの

悩んで迷って うんと遠回りに感じても その一歩を踏み出せば
近道じゃ育たない愛や絆が そっと支えてくれるから

夢を描いてゆこう 優しさで涙を拭ったら
私の笑顔もきっと誰かの 青い青い空になる」

昨年、ロケ地・浜松で公開。大ヒットを記録。3カ月のロングラン。その理由は「みんなで、がんばる!」、そのテーマに共鳴してもらえたからだ。小学生からお年寄りまで、幅広い層が見て感動してくれた。「そうだ。みんなでがんばらないといけない!」と多くの人が思ってくれたのだ。

今回、被害に遭った方。被害はないが、心傷ついた方にこの『青い青い空』を見てほしい。きっと励ましになる。心癒すものがあるはず。できることなら、映写機とフィルムを抱えて被災地へ行きたい。みんなでがんばることで、苦しい時代も超えられる。それが今、一番大切なテーマだと思える。

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