『ヒーローショー』の井筒和幸監督、今回は理由なき暴力を目指した!

井筒和幸監督
井筒和幸監督
井筒和幸監督
インタビュー中の井筒和幸監督
インタビュー中の井筒和幸監督
完成披露試写会舞台挨拶の模様。左から後藤淳平(ジャルジャル)、ちすん、井筒和幸監督、福徳秀介(ジャルジャル)
右から井筒和幸監督、福徳秀介(ジャルジャル)、後藤淳平(ジャルジャル)、ちすん。左端は乱入してきた椿鬼奴。後ろはギガチェンジャー

ピンク映画時代も含めて、映画監督として35年のキャリアを積み重ねてきた井筒和幸監督。紳助・竜介が主演した『ガキ帝国』や、ナイナイの岡村隆史と矢部浩之主演の『岸和田少年愚連隊』など、青春や暴力といった印象が強い井筒監督だが、ここ10年ほどは、『のど自慢』や『ゲロッパ!』といった笑って泣ける映画が増えていた。そんな監督が、久しぶりに本格バイオレンスに挑戦したのが、5月29日より公開となる『ヒーローショー』だ。

主演はジャルジャルの2人で、ヒリヒリするほどの痛みを伴った暴力が繰り広げられる。そんな映画の誕生から、久しぶりに本格バイオレンス映画に挑戦した理由。そして、これまでのバイオレンスと、本作のバイオレンスとの違いなどについて、井筒監督に話を伺った。

[動画]『ヒーローショー』 井筒和幸監督インタビュー
『ヒーローショー』作品紹介

──まずは、この映画が誕生するまでの経緯を教えてください。
井筒監督:3年くらい前ですが、『パッチギ!』シリーズが終わったところで、学園祭だとか、講演会とかで地方に出かけることが多くなった。そこで人権や、戦争と平和などについて喋り歩いていたら、地に足が着かずにさまよわざるを得なくなっている、幼気(いたいけ)な若者たちが一杯いることに気づいた。
 そういう若者たちがケンカになると、殴り殺す寸前までいってしまう。挙げ句、倒した相手を車で病院に連れていき、社会に面倒を見てもらおうとしたり。ちょっとキレると、歯止めが利かなくなってしまうことも多い。では、なぜそういうことが起こるのかと言えば、根底にあるのは社会。社会が彼らを追いやってしまっているんだと。大人が作り出す社会のなかで翻弄され、こぼれ落ちまいと必死に蠢く人間。あるいは、既にこぼれ落ち、居直ってしまった人間。そういった若者の絶望と孤独を、『ガキ帝国』『岸和田少年愚連隊』『パッチギ!』などで描いてきた。今回、この世のリアルな絶望と孤独を、若者のためにもう1回捉えてあげたいと思った。

──完成作は若者たちに見せようと?
井筒監督:若者ならではの話だけど、本当は、大人にこそ見せたいのよ。こういう社会を作っているのは、誰なんですか、と。

──監督から見て、今の若者はどんな風に映っている?
井筒監督:今の若者は結構考えていると思うよ。大人を端(はな)から信用していないし。むしろ、不信感が強いんじゃないかな。

──監督自身の若い頃は?
井筒監督:今と一緒。70年代が明けた頃で、当時は大人が俺たちに対して不寛容で、俺たちも逆に大人社会に対して反発していた。あの頃、マスコミは俺たちのことを「三無主義」と書き立てていた。無気力、無関心、無責任とね。そんな言葉で片付けやがってと頭に来ていたから、毎日のように飲み屋で、「気力が失せているのはお前たちじゃないか、無関心なのも無気力なのも」と話していた。今の若者や子どもたちの大人に対する憤りも、当時と同じ。お前ら大人にわかってたまるかよ、俺らだって結構悩んでいるんだといったようなことを、若者はみんな思っていると思う。

──『のど自慢』『ゲロッパ!』など、このところ、笑って泣ける映画を多く監督するなかで、今回、ここ(暴力)に戻ってきた理由は?
井筒監督:戻るべくして戻っちゃいましたね。ブーメランのように35年かけて、クルクルクルクルと(笑)。ピンク映画時代を入れると35年になりますから、戻るべくして戻ったと思うし、ファミリー用には笑えたり泣けたり、最後に「よかった、よかった」みたいになる映画もいいですよ。僕は半分職人なわけですから、これからも、そうした映画を大いに作ります。
 でも今は、若者がものすごい窮屈な思いをしていて、安い給料で、行き場もなく高円寺のガード下で飲んでる。若いサラリーマンも有楽町の屋台でしょ。だからこそ、僕がこの現実社会に対して思うことを撮ろうと。

──では、この映画に辿り着いたのは、自分から選んだというよりも、自然にそうなった感じで?
井筒監督:そうですね。映画ってやっぱり自然にしか作れないでしょう。意識して取り組んでもダメ。そういうものですから。

──今回は今まで以上に痛くて、ヒリヒリするような暴力シーンが登場します。その理由は何でしょうか?
井筒監督:これまで描いてきたのは、若者が発する1つの言い分としての暴力だったんです。俺はこんなことに憤っているとか、このことだけはわかってくれよ、と。だから今までの暴力は、割と爽快感も伴って迎えられた。見ている人間も同意できて、おまえが殴る気持ちはよくわかるって思えたから。
 だけど、今回に限っては爽快感を感じさせない。ヒリヒリを超えて、ウワッとさせてしまう映画。それは、振るった暴力に理由がないから。今回はそういう暴力を目指した。

──最後に、監督から見たジャルジャルの魅力を教えてください。
井筒監督:僕は今まで吉本のお笑い芸人を使って、一番映画を作ってきた人間。彼らは芸人という下地がちゃんとあって、しかも、畑が違う。だからこそ、非常にピュアな演技をするし、生々しい演技ができる。テレビと映画で育ってきた役者だと、そうはいかない。ちょっと名前が売れてくると格好ばかりつけたがる。芸人には、それとは違う良さがありますね。

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