差別と偏見を助長、吐き気を催す描写と称され映画史から抹殺された問題作が復活!
#クエンティン・タランティーノ#ジャンゴ 繋がれざる者#マンディンゴ#モーリス・ジャール#リチャード・フライシャー#人種差別#蓮實重彦#黒沢清
「人種問題ではなく、退廃の美学の実践なのだ」
映画史から長年抹殺されてきた、リチャード・フライシャー監督による問題作『マンディンゴ』が3月12日より公開される。その公開を前に、新たな場面写真が公開されると共に、黒沢清ら著名人から推薦文が寄せられた。
・米国で物議醸す呪われた名作映画『マンディンゴ』46年ぶりに全国公開!
映画監督の黒沢清は、本作品について、「黒人と白人、親と子、妻と夫、およそあらゆる人間関係が最悪の結末へと至る、震えがくるような歴史暴露映画。と言うか、これは極めて現代的な映画でもあるだろう。フライシャー天才! ゴシック・ホラーのごとき暗黒の映像が最高! そしてスーザン・ジョージ凄まじい!」と大絶賛。
一方、映画評論家の蓮實重彦は、「幼い黒人の子どもたちが扇を緩やかに揺らし、年輩の奴隷たちが穏やかに料理を配膳してゆく薄ぐらい食堂での白人たちの晩餐シーン。そこで驚くべきは、今日の合衆国が抱えている人種問題をいまから40年近くも前に描ききっていたことではない。ここにあるのは、問題による問題の廃棄、頽廃による頽廃の廃棄、あるいは褐色による褐色の廃棄ともいうべき美学の実践なのだ。それが今日までアメリカで評価の対象とならなかったことこそが問題なのである」と問題提起する。
また、ライムスター宇多丸は、「『マンディンゴ』が鋭く暴きたてるのは、人種差別のおぞましさだけではない。その裏側には、女性を都合よく利用し尽くす家父長制〜マチズモの欺瞞と病理が、ぺっとりと張りついているのだ。どちらも人を人として見ようとしない思想であること、そして残念ながら、2021年現在の人類が決して脱却できてはいない問題であるという点で共通している。そしてそこにこそ、本作がいままた観返されるべき理由がある……たとえどれだけ不快な鑑賞体験となろうとも」と、今回46年ぶりに公開される意義を提示して見せた。
あらゆる人間関係が崩壊! ゴシック・ホラーのごとき歴史暗黒映画が46年を経て復活
本作品は、19世紀半ばのルイジアナ州を舞台に、奴隷牧場を経営する父子の栄光と没落を描いた壮大な歴史スペクタクル。原作はカイル・オンストットのベストセラー小説。
監督は『ミクロの決死圏』『銃殺魔』のリチャード・フライシャー。製作は『道』『キングコング』のディノ・デ・ラウレンティス、音楽は『アラビアのロレンス』のモーリス・ジャールで映画化され、公開されるや否や世界中でヒットを記録した。
しかし、あからさまな人種差別的設定、偏見を助長する屈辱的な内容、吐き気を催すようなおぞましい描写などから「最悪の映画」と酷評されてしまう。その後クェンティン・タランティーノ監督が本作にインスピレーションを受けた『ジャンゴ 繋がれざる者』を手掛けるなどして一部で話題になるもの の、長らくアメリカ映画史からほぼ抹消された形になっていた。
『マンディンゴ』は3月12日より全国公開される。
[訂正のお知らせ]
本文 第4段落で以下の通り訂正しました。
訂正前:スチャダラパーのSHINCO
訂正後:ライムスター宇多丸
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