吉沢亮「やるしかないという覚悟と意地で挑んだ」 主演作『国宝』釜山国際映画祭に登壇

#吉沢亮#国宝#映画#李相日#黒川想矢

『国宝』
(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会
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歌舞伎役者への挑戦、1年半の稽古を明かし観客から大きな拍手

映画『国宝』が第30回釜山国際映画祭ガラプレゼンテーション部門にて公式上映され、主演の吉沢亮、共演の黒川想矢、李相日監督が登壇した。

・吉沢亮、黒川想矢、李相日監督が登壇した釜山国際映画祭『国宝』公式上映の写真をすべて見る

原作は、2017年から朝日新聞で連載された吉田修一の同名長編小説。任侠の一門に生まれながらも歌舞伎の世界に飛び込み、芸の道に青春を捧げてきた主人公・喜久雄が、命を懸けてなお見果てぬ夢を追い続ける姿を描く。

主人公・喜久雄を吉沢亮が演じ、ライバルとなる名門の御曹司・大垣俊介役を横浜流星が務める。さらに、渡辺謙、高畑充希、寺島しのぶ、田中泯、森七菜、見上愛、永瀬正敏、宮澤エマ、黒川想矢、越山敬達、三浦貴大、嶋田久作ら、まさに“国宝級”の豪華キャストが集結した。

メガホンをとるのは、『フラガール』(06年)で日本中を感動の涙で包み、日本アカデミー賞最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀脚本賞を受賞した李相日監督。脚本は、相米慎二監督の『お引越し』(93年)で脚本家デビューし、『時をかける少女』(06年)『サマーウォーズ』(09年)『おおかみこどもの雨と雪』(12年)など、様々なヒット作品を手掛ける奥寺佐渡子。

5月にはカンヌ国際映画祭「監督週間」部門、6月には上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門「カンヌ・エクスプレス」に出品。先週はトロント国際映画祭Special Presentation部門にて公式上映がおこなわれ、数多くのアカデミー賞ノミネート作を手がけてきた映画配給会社「GKIDS」によって、2026年に北米公開が決定したことが発表された。日本が誇る『国宝』が、続々と世界中を熱狂に包み込んでいる。

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そして今回、第30回釜山国際映画祭ガラプレゼンテーション部門に出品され、現地時間9月21日に公式上映された。日本からは主演の喜久雄を演じた吉沢亮、喜久雄の少年時代を演じた黒川想矢、李相日監督が渡韓。野外メインシアター会場でのトークセッション「オープントーク」に登壇した。

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21日15時、2000人が集まった屋外会場で行われたオープントークでは、はじめに李監督が登壇し、韓国語で自己紹介した。司会者から日本では『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(03年)に続き、実写映画の歴代興行収入ランキングで2位を達成した記録について質問されると、「この映画はテレビドラマや漫画の原作から始まった映画ではなく、伝統文化を扱った映画ということで、今の日本の観客が多く見てくれて驚いています」と話し、続けて「歌舞伎は、どの国の人でもその美しさと伝統、歴史を感じることができる芸術だと思います。国や人種を問わず感動できる映画だと思っています」と語った。

イベントの中盤には主演の吉沢亮、黒川想矢の2人がサプライズで会場に登壇。吉沢と黒川はともに韓国語で自己紹介し、満席の会場から盛大な拍手が起こった。

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吉沢は「1年半という長い期間、1つの役のために時間を費やすというのは貴重な経験でした。実際の歌舞伎役者の方々の足元にも及ばないので、稽古をすればするほど、どれほど素晴らしい方々かを実感しました。あの時は『やるしかない』という意地でやっていました。これまでの作品とは比べものにならないほど、覚悟が必要でした」と述懐。

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さらに「李監督からは、難しくて不可能な注文ばかりされました。しかし、一方でその注文は『役者なら乗り越えられる』という絶対的な信頼だと思いました。監督の言葉の中にある愛をとても感じることができました」と撮影当時を振り返った。

黒川は本編での演技について質問されると「演技が本当に面白くて仕方ないです。本作の中で『寝る時間が無駄だ』というセリフがあるのですが、その気持ちは分かる」としながらも「演技を楽しむためによく眠るように努力しています」と付け加え、会場を笑わせた。

当日は10時より李監督と吉沢が参加した韓国メディアによる記者会見(Busan Cinema Center・BIFF HILL)が行われ、オープントークに続き、CGV Centum CityのIMAX館(18時55分開始)では約300人の観客を前に公式上映が実施された。上映後には李監督、吉沢、黒川の舞台挨拶が行われた。

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「なぜこれほどまでに日本でヒットしたのか?」との質問に、李監督は「歌舞伎は日本の観客にとっても皆さん当然知っているのだけれども、そこまで見ている人は多いわけではないので、新しいものを発見できる映画だったと思います。歌舞伎役者ではない俳優たちがまるで歌舞伎役者のように非常に長い時間をかけてトレーニングをし、歌舞伎役者の感情をキャラクターに溶け込ませたため、役者の方々の真剣さが観客の皆さんにも届いたのではないかと思います」と日本での社会現象を分析した。

また吉沢には「最初に台本をもらった時の気持ち、また役作りはいかがでしたか?」との質問が投げかけられた。吉沢は「李監督の『悪人』(10年)『怒り』(16年)は大好きな作品で、いつか李監督とぜひご一緒したいなと思っており、目標でもありました。今回オファーをいただき非常に嬉しく思いました。その時にはまだ台本もできていない中で原作を読み、歌舞伎役者の役ということでハードルの高い役だと思いました。その時点ではまだ深く歌舞伎というものに関わったことがなかったので、どれだけ大変なものか想像がつかなかったです。李監督への“愛”だけで、よくわからないけど飛び込もうと思いました。1年半くらい歌舞伎のお稽古をしましたが、稽古を重ねれば重ねるほど歌舞伎役者さんの深み、小さい頃から何十年も舞台に立って積み重ねている歌舞伎役者さんたちと並ぶということは到底無理な話だと、稽古を重ねれば重ねるほど実感していく日々でした。その中でどうにかやるしかないという覚悟と意地でどうにか必死になり撮影をしました」と語った。

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黒川へは少年・喜久雄の役や歌舞伎の稽古について質問があった。黒川は「この役はオーディションだったので、オーディションの少し前に台本をいただきました。歌舞伎役者さんの幼少期を演じるのには自信がなく、でもこの役は絶対に僕がやりたいと思いました。歌舞伎の稽古は半年くらいでしたが、今までダンスなどもやったことがなかったので、日本舞踊は難しかったのですが、途中からお稽古が楽しくなり、演技に近い感覚ですごく楽しかったなと今思い出しました」と答えた。

観客から「歌舞伎を通して沢山の美しさを教えてくれた映画だと思うが、人間のどのような部分が美しいと思うか?」と質問されると、吉沢は「今回、女形を演じていて、自分の感情をコントロールできない瞬間や何か必死に求めて、恋焦がれている時の表情は、外から見ると美しく見えたりするのではと、この喜久雄を演じていて感じました。喜久雄が演じた(『曾根崎心中』の)お初もその恋のためだけに命を燃やしていく。こういった演目が多いということは、そういったものが見たいのだろうと思っています。まっすぐ向き合う瞬間というのは人を美しくするのかなと思います」と答えた。

黒川は「今作で長崎弁と関西弁の2つの方言を使いましたが、長崎弁の音の響きがとても美しいなと思いました。例えば外国語でも何を言っているのかわからなくても、気持ちが伝わるような、そういう時はとても嬉しいし、美しいなと思います。今作は日本語ですが、韓国の方々に絶対届くだろうし、届いてほしいなと思っています」と語った。

最後に会場の観客へ、李監督は「11月から韓国で公開されます。どうぞお力を貸してください」と挨拶。黒川は「今日ここでお話できたことはとても嬉しいです。また11月に公開された際には沢山の方々に見ていただければすごく嬉しいです」と述べ、吉沢は「昨日と今日と上映会、Q&Aをさせていただき、皆様がこの作品を前のめりに見てくださったことが伝わり、とても嬉しく思います」と釜山での手ごたえを感じ、感謝を述べた。

また日本では、5都府県(東京・神奈川・愛知・大阪・沖縄)にて10月3日から英語字幕版の上映が決定した。TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ新宿、109シネマズプレミアム新宿、TOHOシネマズ池袋、横須賀HUMAXシネマズ、ミッドランドスクエアシネマ、TOHOシネマズなんば、シネマライカム、ユナイテッド・シネマPARCO CITY浦添の計10館で上映される。

『国宝』は現在公開中。