広瀬すず主演×カズオ・イシグロ原作『遠い山なみの光』ロンドン映画祭で上映決定！ 国際的評価に期待高まる

石川慶監督による感動のヒューマン・ミステリーが世界に羽ばたく

広瀬すずを主演に迎え、ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロの鮮烈なデビュー作を映画化した『遠い山なみの光』が、5月のカンヌ国際映画祭、6月の上海国際映画祭、そして9月のトロント国際映画祭に続き、10月8日から開催される第69回ロンドン映画祭（BFI London Film Festival 202５）のStrands部門に出品されることが決定した。

・人はなぜ嘘をつくのか——母の語る記憶に潜む“あの夏”の真実とは？ 広瀬すず主演『遠い山なみの光』本予告編

ある女が語り始めたひと夏の記憶――その物語には、心を揺さぶる“嘘”が隠されていた。本作は、1950年代の長崎と1980年代のイギリスを生きる3人の女たちの知られざる真実に涙する、感動のヒューマン・ミステリーだ。

日本人の母とイギリス人の父を持ち、大学を中退して作家を目指すニキは、戦後長崎から渡英してきた母・悦子の半生を綴りたいと考えていた。娘に乞われ、これまで口を閉ざしてきた過去を語り始める悦子。それは30年前、戦後復興期の活気あふれる長崎で出会った佐知子という女性と、その幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。

初めて聞く母の話に心を揺さぶられるニキ。しかし、何かがおかしい。彼女は悦子の語る物語に秘められた“嘘”に気付き始め、やがて思いがけない真実にたどり着く——。

カズオ・イシグロ原作、石川慶監督による本作が、第69回ロンドン映画祭（BFI London Film Festival 2025／10月8日〜19日開催）のStrands部門に正式出品されることが決定した。ロンドン映画祭は、英国映画協会（BFI）が主催するイギリス最大級の映画祭で、1957年に創設。毎年秋にロンドン各地で開催され、世界各国から選ばれた最新の話題作や独立系作品、ドキュメンタリーなど幅広いジャンルを上映し、新進気鋭の才能から巨匠監督まで多彩な作品が集まり、観客・批評家・業界関係者が一堂に会する国際的な映画イベントだ。

本作が選出された部門「Strands」では、映画がテーマごとに編成されており、新たな発見を促すとともに、これまでにない観客層にも映画祭を開かれたものとすることを目指している。「Journey」カテゴリーは、観客を非日常へと連れ出し、物の見方を変えるような旅や目的地に焦点を当てた作品群が選出され、過去には三宅唱監督『ケイコ 目を澄ませて』（22年）なども上映されている。

ロンドン映画祭ディレクターのクリスティ・マセソンは、本作の選出に関し「『遠い山なみの光』は、長崎とイギリスを行き来しながら展開する叙情的なドラマで、私たちプログラマーは深く心を動かされました。本作は、トラウマ、記憶、そして欲望を繊細に描き出し、戦争や歴史の傷が形作った秘められた感情を力強く掘り起こしていきます。この秋、ロンドン映画祭で本作を観客の皆さまと共有できましたら、私たちにとってこの上ない光栄です」とコメントしている。

1950年代長崎と1980年代イギリスを生きる3人の女性たちの姿が描かれる本作において、80年代の悦子（吉田羊）と娘のニキ（カミラ・アイコ）が繰り広げるイギリスパートの家族ドラマは、実際にロンドン郊外で撮影されている。

1980年代の悦子が暮らす家での撮影現場を訪れたイシグロ本人も、「とても美しくて、イギリスに長年住んでいる、その時代の日本人女性が装飾したイギリスの家で、僕にとっては感動的でした。僕が育った家もこんな感じだったから。僕が何者かということを、そしてこの映画を象徴するような庭園だと思います。イギリスの環境に日本のものが混ざった感じ、そんな世界で僕自身も育ってきたのです」と語っている。

撮影の困難さから、欧米作品でもイギリスが舞台の物語を現地で撮影することは少なくなっている昨今において、本作は石川監督が現地撮影にこだわり、イギリスを代表するインディペンデントプロダクション・Number 9 Films（トッド・ヘインズ監督『キャロル』、パオロ・ソレンティーノ監督『グランドフィナーレ』など）によって実現した。

今回の映画祭への選出は、本作にとって第2の故郷とも言えるロンドンでの凱旋上映となる。反響が大いに期待される中、石川監督は「日英合作のこの映画が、ロンドン映画祭で上映されることをとても誇りに思います。カズオ・イシグロさんをはじめ、共に映画を作り上げたイギリスのスタッフに再会できるのを心待ちにしています」と喜びを明かした。

『遠い山なみの光』は現在公開中。