『風と共に去りぬ』は人種差別を永続させる作品、批判受け動画配信中止に

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人種差別の描き方に問題があるとされた『風と共に去りぬ』
人種差別の描き方に問題があるとされた『風と共に去りぬ』

アメリカから世界へと広がりを見せる「Black Lives Matter(黒人の命の問題だ)」運動を受けて、動画配信サービスのHBO Maxが映画『風と共に去りぬ』のストリーミング配信を中止、コンテンツから削除した。

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アカデミー賞9部門を受賞し、映画史上屈指の名作として知られる同作は1939年の公開作。南北戦争を舞台に南部の名家の女性、スカーレット・オハラの半生を描く大作だが、黒人の登場人物や奴隷である彼らの所有者である白人の描き方をめぐって批判が高まっている。

第86回アカデミー賞で作品賞など3部門を受賞した『それでも夜は明ける』(13)で脚色賞を受賞した脚本家のジョン・リドリーは8日付のロサンゼルス・タイムズ紙でHBO Maxに宛てた公開書簡を寄稿、「南北戦争前の南部を賛美し、奴隷制の恐ろしさを無視し、有色人種に対する最も痛ましいステレオタイプな偏見を永続させている」と『風と共に去りぬ』を批判、コンテンツからの削除を求めた。

これを受けてHBO Maxは9日に同作を配信コンテンツから削除した。HBO Maxは声明を発表し、「『風と共に去りぬ』は1939年の作品であり、残念ながら現在のアメリカ社会で当然とされている民族・人種偏見を描いています」とコメント。同作における描写は「当時も間違っていたものであり、現代においても間違っています。私たちはこうした描写について説明や非難もしないまま、配信を続けることは無責任だと感じました」と削除の理由を説明した。

そして、歴史的背景についての議論や問題となった描写についての説明を追加したうえで、いずれ配信を再開する予定だとしている。だが、作品はオリジナルのまま配信し、編集は行わない。当該シーンに手を加えるのは「差別は存在しなかった」と主張することになりかねないという理由だ。

Netflixなどで配信されていたイギリスのコメディ・シリーズ『リトル・ブリテン』も各配信サービスからコンテンツが削除された。2003年から2008年にかけてBBCで放映された同シリーズはマット・ルーカスとデヴィッド・ウィリアムズのコンビが脚本・主演を務め、風変わりな人間の生態をブラックジョークで描いたもので、異なる民族的背景を持つ人物を笑いのネタにする場面がある。2人が出演するBBCのコメディ・ドラマ「Come Fly With Me」も削除された。

Netflix側から説明はないが、『リトル・ブリテン』を配信していたBBC iPlayerは「『リトル・ブリテン』が最初に放送された頃とは時代が変わりました」とコメントしている。ルーカス本人も2017年に「もし『リトル・ブリテン』をやり直すことができるなら、異性装者を笑いものにしない。黒人のキャラクターも演じない」と語っていた。

日本ではNHKの番組で放送したアメリカの抗議デモの解説動画が、差別を助長するとして国内外で物議を醸し、番組の公式サイトとツイッターで謝罪し、動画を削除している。